訪問介護の開業手順。法人設立から指定申請まで、何をどの順番でやるか。

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訪問介護事業所を開業するには、法人の設立・事業所の準備・指定申請の3つのステップを順番に進める必要があります。指定申請を受け付ける自治体によっては、申請の翌々月1日が指定日になる場合が多く、開業したい月から逆算して準備を始めることが重要です。

この記事では、訪問介護の開業に必要な手順を時系列で整理します。

訪問介護の開業は「法人格が必須」なので、最初の一歩は会社設立になる

訪問介護事業者の指定を受けるには、法人格が必要です。個人事業主のままでは指定を受けられません。まず法人を設立してから指定申請に進みます。

法人の種類は株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人などがあります。開業時に最も多く選ばれるのは合同会社か株式会社です。設立費用と手続きの違いは次のとおりです。

項目 株式会社 合同会社
登録免許税 資本金×0.7%(最低15万円) 資本金×0.7%(最低6万円)
定款認証手数料 3〜5万円(公証人) 不要
設立の最低費用の目安 約20〜25万円 約6〜10万円
信用力 一般的に高い やや低く見られる場合がある
意思決定 株主総会が必要 柔軟(社員間で決める)

「特定創業支援等事業」(市区町村の認定を受けた創業支援機関のセミナー等を受講)を活用すると、登録免許税が半額(株式会社7.5万円・合同会社3万円)に軽減されます(産業競争力強化法に基づく特定創業支援等事業の認定制度)。

定款の事業目的には「介護保険法に基づく訪問介護事業」など、指定申請に対応した文言を入れておく必要があります。設立後に目的を追加する場合は変更登記(登録免許税3万円)が必要になるため、事前に確認してください。

法人設立から登記完了まで、合同会社は通常1〜2週間、株式会社は公証人認証を含むため2〜3週間かかる場合があります。

開業の全体スケジュールは逆算で組む

指定申請の受付・指定日は自治体によって異なります。東京都・大阪市など多くの自治体では「毎月1日が指定日・申請の受理から翌々月1日に指定」という運用をしています。例えば4月1日に開業したい場合は、2月中に申請が受理される必要があります。

余裕を持ったスケジュールの目安です。

時期 やること
開業予定日の4〜6か月前 事業計画の策定・収支試算。物件の選定開始
開業予定日の3〜4か月前 法人設立。物件の契約。管理者・サービス提供責任者の確保(採用または自身が兼務)
開業予定日の2〜3か月前 指定申請書類の準備・提出。ヘルパーの採用開始
開業予定日の前月まで 指定権者の審査・補正対応。利用者獲得に向けたケアマネへの挨拶回り
開業日 指定日(通常は月初め)からサービス開始

指定申請の受付スケジュール・締切日は、指定権者(都道府県または市区町村)によって異なります。早めに管轄の窓口に確認してください。

指定を受けるために必要な人員要件

訪問介護の指定申請を通すには、申請時点で人員基準を満たしていることが求められます(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準・平成11年厚生省令第37号)。

職種 基準 資格要件
管理者 常勤専従1人(兼務可の場合あり) 資格の指定なし(実務経験が求められる場合あり)
サービス提供責任者 利用者40人(端数含む)ごとに1人以上・常勤 介護福祉士・実務者研修修了者など(初任者研修は不可)
訪問介護員(ヘルパー) 常勤換算2.5人以上(サ責を含む) 介護福祉士・実務者研修・初任者研修修了者など

指定申請の時点でヘルパーが常勤換算2.5人以上いる必要があるため、申請前に採用・雇用契約を済ませておく必要があります。雇用してからサービス開始まで1〜2か月の準備期間が生じるため、その期間の人件費も開業資金に含めて計画してください。

指定申請に必要な主な書類

提出書類は自治体によって異なります。一般的に必要とされるものとして次のものがあります。

  • 指定申請書
  • 事業所の平面図(面積・各室の用途を示したもの)
  • 法人の登記事項証明書(発行から3か月以内)
  • 定款または寄附行為の写し
  • 職員の勤務体制・勤務形態一覧表
  • 管理者・サービス提供責任者・ヘルパーの資格証・雇用契約書
  • 運営規程(指定基準に沿った内容が必要)
  • 重要事項説明書・契約書の雛形
  • 苦情受付の体制に関する書類

書類の様式や提出部数は指定権者ごとに異なります。管轄窓口のWebサイトで事前にダウンロードして確認してください。

設備基準:事業所に必要なスペース

訪問介護事業所の設備基準(指定基準第20条)では、「事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画」と「必要な設備・備品」が求められます。自宅の一部を事務所として使う場合も、専用区画として区切られていることが必要です。

一般的に最低限必要とされるものは次のとおりです。

  • 事務スペース(職員が業務を行える机・椅子・ファイル等)
  • 相談コーナー(利用者・家族が相談できる場所。個室でなくてもよい場合が多い)
  • 鍵のかかる書庫(個人情報保護のため)

開業資金の目安

法人設立費・物件・備品・採用・準備期間中の人件費・運転資金(入金が翌々月になるため)を合わせると、開業から黒字化まで相当の資金が必要です。詳細な試算は訪問介護の開業資金はいくら必要かで整理しています。

日本政策金融公庫の新規開業融資(スタートアップ支援資金)が利用できる場合があります(返済期間は設備20年以内・運転10年以内・据置最大5年以内)。

開業後の収支を事前に試算しておく

指定申請前に、収支が成り立つかどうかを試算しておくことが重要です。訪問介護 開業向け収支シミュレーター(https://fufumumu-design.com/houmon-kaigo-keikaku/)では、地域区分・利用者数・人員構成・加算の取得状況を入力して、36か月の収支と資金繰りを試算できます。Pro版(9,800円買い切り)では感度分析(利用者数や賃金が変動したときの影響)も確認できます。

申請書類を準備する前に、事業計画として数字を固めておくと、金融機関への融資相談にも使えます。

あわせて読みたい:訪問介護の人員基準。管理者・サービス提供責任者・ヘルパーの要件を整理します。

あわせて読みたい:訪問介護・訪問看護は、個人事業主でも開業できるか。

この記事で確認した根拠

  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
  • 会社法・産業競争力強化法(法人設立・登録免許税軽減)
  • 登録免許税法別表第一24号(登録免許税額)

すでに訪問介護を運営中の事業所向けに、法定研修の資料セットも用意しています。
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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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