ラーメン・カフェ・居酒屋、業態を選ぶ前に見る3つの数字。公庫のデータで原価率・回転数・人件費を比べる。

ラーメン・カフェ・居酒屋、業態を選ぶ前に見る3つの数字。公庫のデータで原価率・回転数・人件費を比べる。 飲食店の開業

ラーメン・カフェ・居酒屋では、同じ売上でも残るお金の額が変わります。業態ごとに原価率・客の回転数・必要な人員の比率が異なり、それが損益分岐点と利益の水準を左右します。

公庫の「小企業の経営指標調査(2025年度)」では、業種別の売上高原価率・人件費率・収支差率が公表されています。以下では、開業前に業態を選ぶ際に確認しておくべき3つの数字を、公庫のデータで整理します。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター

業態を選ぶ前に見る3つの数字

飲食店の収益構造を業態ごとに比較するときに見るべき数字は、①原価率、②客回転数の水準、③人件費率の3つです。この3つが組み合わさって、損益分岐点と営業利益の水準が決まります。

①原価率:食材費の割合です。原価率が低いほど、売上から多くの粗利益が残ります。原価率が高い業態は、それだけ売上が増えないと利益が出にくい構造です。

②客回転数の水準:1日に何回転するかの目安です。回転数が高い業態は少ない席数でも売上を積み上げられますが、その分オペレーションの速度と人員が必要になります。

③人件費率:売上に占める人件費の割合です。回転数が高くサービスが複雑な業態は人手が要り、人件費率が高くなりやすいです。

業態別の原価率と人件費率(公庫の調査より)

公庫の「小企業の経営指標調査(2025年度)」では、飲食業の中分類ごとに売上高原価率・人件費率が公表されています。以下は代表的な業態の数字です。

業態別の売上高原価率・人件費率(公庫「小企業の経営指標調査」2025年度・中分類より)
業態 原価率 人件費率 FL合計(原価+人件費) 残り(家賃・その他固定費+利益に使える割合)
食堂・レストラン(洋食系含む) 31.3% 27.2% 58.5% 41.5%
そば・うどん店 29.4% 26.3% 55.7% 44.3%
中華料理店 32.8% 24.5% 57.3% 42.7%
日本料理店 29.5% 27.8% 57.3% 42.7%
酒場・ビアホール(居酒屋系) 31.8% 25.5% 57.3% 42.7%
喫茶店(カフェ系) 26.4% 30.1% 56.5% 43.5%
ハンバーガー・ファーストフード系 33.2% 28.9% 62.1% 37.9%

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度小企業の経営指標調査」業種別統計(飲食業・中分類)。FL合計は当方が原価率+人件費率を合算。

FL合計(原価率+人件費率)が低い業態ほど、家賃・水道光熱費・その他固定費を払ったあとに残る割合が大きくなります。公庫の記入例(洋風居酒屋)の想定では、原価率35.1%・人件費率27.3%でFL合計62.4%でした。これは実際の酒場・ビアホールの平均(57.3%)より高い設定になっています。開業後の実際の数字が公庫の記入例よりも良い水準に落ち着くことも多く、先に「業界平均はこの程度」を把握したうえで計画を立てるのが現実的です。

原価率が低い業態が必ずしも有利とはいえない理由

喫茶店(カフェ系)は原価率が26.4%と飲食業の中で最も低い水準です。しかし、人件費率が30.1%と高く、FL合計では56.5%になります。食堂・レストランのFL合計58.5%と比べて差は小さいです。

カフェ系の特徴として、客単価が低い(500〜1,500円程度)ため、利益を出すには高い回転数か広い席数が必要です。また、テイクアウト専門でない場合、長居する客が多く回転数が上がりにくい傾向があります。

原価率の低さだけを見て「カフェは儲かる」と判断するのは早計です。客単価・回転数・家賃のバランスが取れているかを合わせて確認することが大切です。

ラーメン店が選ばれやすい収益構造上の理由

ラーメン店はそば・うどん店に近い構造で、原価率が低め(29〜32%台)で、回転数が高い(昼・夜合計で100〜200人/日以上を狙える立地もある)という特徴があります。1食の単価が900〜1,200円程度でも、回転が速いため少ない席数で売上を積み上げやすいです。

また、一人で切り盛りできる業態として設計しやすい点も特徴です。厨房を1名・ホール不要(カウンターのみ)という構成にすれば、人件費を抑えられます。

ただし、「ラーメン激戦区」と呼ばれる地域では競合が多く、差別化が難しいという面もあります。業態の収益構造が良くても、立地と競合状況が合わなければ客数が集まらないため、構造の良さと市場の状況を分けて考えることが大切です。

居酒屋の収益構造の特徴

居酒屋(酒場・ビアホール)は、原価率は31.8%で食堂・レストランと大きく変わりませんが、ドリンクの原価率が食材に比べて低い(ビールなどは原価率10〜25%程度)という特徴があります。料理とドリンクの売上比率をコントロールできれば、平均原価率を下げることができます。

一方、居酒屋は夜営業が中心のため、ランチを営業しない場合は昼の売上がゼロになります。家賃や人件費は昼も発生するため、夜の売上だけで固定費を回収する必要があります。昼・夜ともに営業できる業態と比べると、売上の時間帯集中というリスクがあります。

3つの数字を使って業態の収益性を比較する手順

業態を選ぶ前に、以下の手順で3つの数字を試算することをおすすめします。

ステップ1:FL比率を確認する
業態の平均的な原価率と人件費率(公庫の業種別統計)を参照します。FL比率は業態によって55〜65%の幅があります。

ステップ2:損益分岐点を計算する
固定費(家賃+人件費のうち固定部分+諸経費)を、限界利益率(1−変動費率)で割ると損益分岐点の売上が出ます。変動費は主に食材費(原価)です。

ステップ3:損益分岐点を席数と回転数に変換する
損益分岐点の月商 ÷ 営業日数 ÷ 客単価 ÷ 席数 = 1日に必要な回転数、という計算になります。この回転数が、業態・立地・席数の組み合わせで実現できるかを確認します。

業態別の損益分岐点達成に必要な回転数の目安(家賃20万円・諸経費47万円・固定人件費88万円の場合)
業態 客単価の目安 原価率(変動費率) 損益分岐点の月商 20席・月25日営業の場合に必要な回転数
食堂・レストラン 1,200円 31.3% 約227万円 約1.9回転/日
そば・うどん 900円 29.4% 約219万円 約2.4回転/日
居酒屋 2,500円 31.8% 約228万円 約0.9回転/日(≒夜1回転)
喫茶店・カフェ 800円 26.4% 約211万円 約2.1回転/日

試算は当方が計算。固定費の前提は公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」の人件費88万円・家賃20万円・諸経費47万円(合計155万円)を流用。損益分岐点は固定費155万円 ÷ 限界利益率(1−原価率)で計算。回転数は損益分岐点月商 ÷ 25日 ÷ 客単価 ÷ 20席で計算。同じ固定費の前提を比較に使用しているため、業態が変わると固定費も変わることに注意(居酒屋は深夜人件費が増える可能性など)。

上の試算で注目するのは、居酒屋の「夜1回転」という数字です。居酒屋が20席で損益分岐点を超えるには、夜の平均客数が18人/日以上あればよいことになります。一方、カフェが損益分岐点を超えるには、20席で1日2.1回転(42人/日以上)が必要です。

業態を選ぶときに収益構造以外に確認すること

業態の収益構造(FL比率・損益分岐点)を確認した後に、以下も合わせて見ておくことが大切です。

立地との相性:同じ業態でも、オフィス街・住宅街・観光地では客単価や回転数の目標が変わります。駅周辺の高家賃立地でカフェを開くと、回転数の要求が上がります。

自分が長期間続けられるか:飲食業は体力的にも精神的にも負荷が高い仕事です。「収益構造が良い」からという理由だけで選んだ業態を10年続けられるかどうかは別の話です。公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業者が業態・業種を選んだ理由として「仕事の経験・知識が活かせる」「趣味・特技を活かせる」が上位に挙がっています。

競合状況:収益構造が良い業態ほど参入者が多く、競合が激しい傾向があります。ラーメン店やカフェは飽和しているエリアも多く、計画の月商を達成するために何が必要かを事前に確認することが大切です。

試算してから業態を選ぶ

業態ごとの原価率・人件費率・回転数の目安を把握したうえで、「自分が想定する立地・席数・営業時間で損益分岐点を超えられるか」を試算してから業態を選ぶことをおすすめします。

当方の「飲食店の開業 収支シミュレーター」では、客単価・席数・回転数・原価率・人件費率などを入力して損益分岐点と3年分の収支を確認できます。業態ごとに数字を変えて比較することも可能です。基本機能は無料です。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター

あわせて読みたい

出典

作成:fufumumu_design(ふふ)。確認日:2026年10月19日。試算は当方が行いました。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
飲食店の開業
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました