認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)の開業にかかる費用は、1ユニット(定員9人)・賃貸物件の改修ベースで、初期費用500万〜2,000万円程度と、介護保険の入金2か月遅れを見込んだ運転資金300万〜500万円が目安です。新築の場合はさらに大きくなります。物件の状態・地域・ユニット数によって幅が広いため、実際の物件が決まった段階で精査することが必要です。
開業資金は「設備資金」と「運転資金」に分けて考える
認知症GHの開業費用は、「設備資金(初期投資)」と「運転資金(日々の資金繰り)」の2種類に分けて整理します。
設備資金は開業前に必要な費用です。物件の取得・改修・設備・備品が該当します。日本政策金融公庫への融資申請でも、設備資金と運転資金は別々に計上するのが一般的な手続きです。
運転資金は、開業後に毎月かかる経費を賄うための資金です。介護保険の入金が2か月遅れる構造上、開業直後に収入がない期間が生じます。この期間を乗り越えるための手元資金として準備します。
物件費用は賃貸改修か新築か、状態によって大きく変わる
認知症GHの物件費用は、取得方法によって大きく異なります。
既存の建物を賃貸して改修する場合、改修費が主なコストです。1ユニット9人規模で100〜150㎡程度の床面積が必要になります。既存建物の用途や間取りによって改修費は変わりますが、一般的に500万〜1,500万円の範囲で動く事例が多くあります。内装のみで済む場合は抑えられますが、防火設備・スプリンクラー(延べ面積275㎡以上で必要)・バリアフリー工事が必要になると費用が膨らみます。
新築の場合は土地取得費・建設費が加わります。1ユニット(100〜150㎡)の新築建設費は、木造で1,500万〜3,000万円程度が目安です(地域・仕様により差があります)。
賃貸の場合は保証金・礼金も初期費用に含まれます。月額家賃の6〜12か月分が目安です。月30万円の物件なら180万〜360万円が保証金として必要になります。
物件を探す際は、消防法上の防火対象物の規制(認知症GHは「特定用途防火対象物」)と、介護保険の設備基準(居室7.43㎡以上・原則個室・共用スペースの要件)の両方を満たしているか確認します。特に古い建物の場合、スプリンクラーの設置が必要になるかどうかを消防署に確認することが重要です。
設備・備品の費用は200万〜400万円が参考値
設備・備品費は、ベッド・マットレス・車いす・入浴設備・厨房機器・事務機器などが含まれます。1ユニット9人規模で200万〜400万円程度を見込む事業者が多いです。
既製品を購入するか、リースを使うかで初期費用の額は変わります。介護ベッドは1台あたり10万〜20万円が購入価格の目安ですが、リース(月額5,000〜8,000円程度)を活用することで初期資金を圧縮できます。
入浴設備は利用者の要介護度・身体状況に合わせたものが必要です。一般的な浴室の改修で対応できる場合は比較的安価ですが、特殊浴槽(機械浴)を導入すると100万〜300万円追加になります。開業当初の利用者の状態に合わせた設備選定が現実的です。
諸費用(許認可・研修・保険)も計上する
物件と設備以外にも、開業前にかかる費用があります。
- 法人設立費用(合同会社なら約6万円、株式会社なら約25万円)
- 指定申請の準備(書類作成・コンサルタント費用を使う場合は10万〜30万円)
- 管理者・代表者が研修未受講の場合は研修受講費用(自治体・年度によって異なる)
- 損害保険(施設賠償責任保険)の保険料(年間10万〜30万円程度)
- 介護保険の電算システム(請求ソフト)の初期費用(10万〜30万円)と月額費用
合計すると50万〜100万円程度が諸費用として積み上がることが多くあります。
介護保険の入金2か月遅れを前提に運転資金を計算する
介護保険サービスの費用は、サービス提供月の翌月に国保連(国民健康保険団体連合会)に請求し、翌々月に入金されます。4月に開業した場合、介護報酬が入金されるのは最初の利用者が入居した月の翌々月になります。
入金が始まるまでの2か月間も、人件費・家賃・光熱費・食材費などの経費は毎月出ていきます。1ユニット(定員9人・稼働率90%)の規模で月の経費を試算すると、人件費150万〜200万円・家賃30万〜50万円・食費・光熱費・消耗品等50万〜70万円の合計で、月230万〜320万円程度が最低限かかることが多くあります。
この2か月分に加えて、開業後しばらくは稼働率が定員に届かないことも考慮して、3〜4か月分の経費相当の運転資金を確保しておくことが一般的な考え方です。月の経費が250万円なら750万〜1,000万円の運転資金を目安にする計算です。
実際の金額はユニット数・定員・職員数・物件家賃によって大きく変わります。当サイトの収支シミュレーターで実際の数字を入れてみることで、自分の計画に合った運転資金の試算ができます。
日本政策金融公庫の介護・福祉向け融資制度
認知症GHを含む介護・福祉施設の開業向けに、日本政策金融公庫(日本公庫)が長期・低利の融資制度を提供しています。
主に使われるのは「社会環境対応施設整備資金」と「福祉医療機構(WAM)の融資」です。日本公庫の場合、設備資金は最長20年、運転資金は最長7年程度の返済期間で申請できます(年度・制度によって条件が変わることがあります)。
融資申請には、事業計画書・収支計画・資金計画などの提出が求められます。介護保険の指定を受ける見込みであること(指定申請中の段階でも対応してもらえることがあります)が前提になります。
自己資金は総費用の2〜3割が一般的な目安とされています。1,500万円の開業費用であれば、自己資金300万〜500万円程度を用意しておくことが融資審査の通過に有利です。
開業資金の概算まとめ
1ユニット・賃貸物件改修・定員9人のケースで、開業資金の概算を整理すると次のようになります。ただし、これはあくまで参考値です。物件の状態・地域・仕様によって大きく変わります。
| 費用項目 | 目安(参考値) |
|---|---|
| 物件改修費 | 500万〜1,500万円 |
| 設備・備品費 | 200万〜400万円 |
| 諸費用(法人設立・指定申請準備・保険等) | 50万〜100万円 |
| 敷金・保証金(賃貸の場合) | 100万〜400万円 |
| 小計(設備資金) | 850万〜2,400万円 |
| 運転資金(3〜4か月分) | 700万〜1,300万円 |
| 合計 | 1,550万〜3,700万円 |
物件を新築する場合や2ユニット以上で開業する場合は、これより大きな開業資金が必要です。実際の物件と職員体制が決まった段階で、月次の収支と資金繰りを計算し直すことが重要です。
出典
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第89条〜第108条(設備・人員基準)
- 介護保険法第41条(居宅介護サービス費の支給・入金サイクル)
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