就労継続支援A型・B型・就労移行支援、3つの違い。何が違って、何が同じか。

就労継続支援A型・B型・就労移行支援、3つの違い。何が違って、何が同じか。 ??????A?

就労継続支援A型・B型・就労移行支援は、いずれも就労を軸にした障害福祉サービスです。しかし3つの事業はそれぞれ根本的に違う仕組みで動いています。A型は「障害者を雇用する事業」、B型は「工賃を支払いながら働く機会を提供する事業」、就労移行支援は「一般就労に向けた訓練を行う事業」です。このページでは、3つの違いを制度の仕組みと全国の収支データの両面から整理します。

3サービスの基本比較

まず、3つのサービスを一覧で確認します。

就労継続支援A型 就労継続支援B型 就労移行支援
一言で 障害者を雇用する事業 工賃で働く機会を提供する事業 一般就労に向けて訓練する事業
利用者との関係 雇用契約あり(最低賃金以上) 雇用契約なし(工賃を支払う) 雇用契約なし(訓練・支援)
基本報酬の決まり方 評価点による7区分 前年度の平均工賃月額による14区分 就労定着者の割合による7区分
標準利用期間 定めなし 定めなし 2年(最長3年・例外あり)
対象者の目安 雇用契約のもとで働ける方 すぐに一般就労が難しい方 一般就労を目指して準備する方
全国平均収支差率(令和6年度決算) 約2.3% 約4.7% 約6.0%

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。収支差率は当方の計算。A型 n=334・B型 n=605・就労移行 n=296。

最大の違いは「雇用契約の有無」

3サービスの中でA型だけが異なる点があります。A型は、利用者と雇用契約を結ばなければなりません。

雇用契約を結ぶとは、事業者が「使用者(雇用主)」になることです。労働基準法・最低賃金法の対象になり、利用者1人ひとりに最低賃金以上の賃金を毎月支払う義務が生じます。週20時間以上の場合は社会保険(健康保険・厚生年金)の加入も必要です。

具体的な金額で考えてみます。利用者20人、1人あたり1日6時間・月22日勤務・時給1,050円の場合、利用者への賃金だけで月あたり277万円以上が必要です(1,050円×6時間×22日×20人)。これに社会保険の使用者負担が加わります。介護報酬の入金は2か月遅れが基本なので、開業時は少なくとも数か月分の賃金支払いに相当する運転資金が必要になります。

B型と就労移行支援は雇用契約を結びません。B型では利用者に「工賃」を支払いますが、最低賃金の適用はなく、全国平均の工賃は月額16,507円です(令和5年度・厚生労働省「工賃(賃金)の目標水準の設定等について」)。就労移行支援は工賃の支払いもありません。

この違いが、3サービスの運営コストと収支差率の差を生む最大の要因です。

基本報酬の決まり方、3サービスで異なる

A型は評価点で7段階に分かれる

A型の基本報酬は、令和6年4月の報酬改定から「評価点制」になりました。賃金水準・生産活動・多様な働き方・支援力向上・地域連携活動の5分野で評価を受け、その点数が7区分に分類されます(告示第523号 別表第13)。

  • 区分1:170点以上
  • 区分2:150点以上170点未満
  • 区分3:130点以上150点未満
  • 区分4:105点以上130点未満(新規事業所はここからスタート)
  • 区分5:80点以上105点未満
  • 区分6:60点以上80点未満
  • 区分7:60点未満

新規事業所は、指定日から1年間は区分4とみなして算定します。さらにその1年間は所定単位数が1000分の965に引き下げられます(注3の2・注3)。区分が高いほど報酬が高く、評価点を維持・向上させることが収益に直結します。

定員20人以下・区分4・サービス費Ⅰの場合、基本報酬は666単位。1単位10円(地域区分10.00円)の地域なら1日6,660円、1か月22日稼働で1人あたり約14.7万円が収入の上限水準です。

B型は前年度の平均工賃月額で14段階に分かれる

B型の基本報酬は、前年度の事業所全体の平均工賃月額によって14段階に区分されます(告示第523号 別表第14)。工賃月額が高い事業所ほど、翌年度の基本報酬が高くなる仕組みです。

新規事業所は前年度の実績がないため、最低区分(平均工賃0円)からスタートします。最初の年は報酬が最も低い状態で運営することになります。工賃を上げるには生産活動の収益を増やす必要があり、翌年度に反映されます。

利用者への工賃はA型の賃金より額が小さく、社会保険の使用者負担もありません。そのため固定費はA型より小さくなり、収支差率がA型より高い傾向があります。

就労移行は就労定着者の割合で7段階に分かれる

就労移行支援の基本報酬は、前年度と前々年度に就労継続が6か月に達した人の数を、2年分の利用定員の合計で割った「就労定着者の割合」によって7段階に分かれます(告示第523号 別表第12・注3)。

新規事業所は、最初の2年間は「30%以上40%未満」とみなして算定します(定員20人以下で879単位)。3年目からは実際の定着率で判定が始まります。

2年目は、1年目の実績での割合が40%以上の場合はそちらを使うこともできます(留意事項 令和7年3月31日改正版 p265の特例の式)。3年目以降は通常の式か特例の式の有利なほうを選べます。

ここに就労移行支援特有のリスクがあります。就職した利用者が6か月間継続して働けるかどうかは、ある程度時間が経たないとわかりません。3年目に定着率が想定を下回ると、報酬区分が一段下がり、収支が急激に悪化することがあります。

全国の収支差率、違いを生む構造

比較表の収支差率(A型 約2.3%・B型 約4.7%・就労移行 約6.0%)の差には、それぞれ構造的な理由があります。

A型の収支差率が最も低い理由

A型は最低賃金以上の賃金支払い義務が固定費を押し上げます。厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」によれば、A型の全国平均(n=334事業所・令和6年度決算)は1年間の収入が約4,325万円で、収支差は約994万円です。このうち給与費が占める割合(当方計算)はかなりの水準に達します。

なお、A型の給与費には利用者への賃金が含まれており、これを「特定費用」として収支差率の計算から除く考え方もあります。どちらの見方をするかで数字は変わりますが、雇用主としての責任がコストになることは変わりません。

厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」では、社会福祉法人の就労継続支援A型の収支差率は全体平均をさらに下回ります。規模が小さく設備費や賃金負担が重いと、黒字化そのものが難しい事業所もあります。

B型の収支差率とその背景

B型の全国平均(n=605事業所・令和6年度決算)は、1年間の収入が約3,163万円、収支差が約149万円、収支差率が約4.7%です(当方の計算)。

B型はA型と違い利用者との雇用契約がなく、工賃は利用者への支払いですが最低賃金の適用はありません。そのため固定の人件費はA型より小さくなります。一方で工賃を上げることが翌年度の基本報酬に直結するため、生産活動の収益向上が経営の中心課題になります。

B型の収入は「障害福祉サービスの報酬(介護給付費)+生産活動の収益」の2本立てです。農業・製造・清掃・データ入力・パンやお菓子の製造販売など業種によって生産活動の収益は大きく異なります。工賃水準が低いと翌年度の報酬も低いまま続くため、生産活動をどう設計するかが長期的な収益を左右します。

就労移行の収支差率と3年目のリスク

就労移行支援の全国平均(n=296事業所・令和6年度決算)は、1年間の収入が約2,878万円、収支差が約174万円、収支差率が約6.0%です(当方の計算)。

この6.0%という数字は、定着実績を積んで区分が上がった事業所も多く含まれています。新規事業所が新規みなしの区分から3年目に定着率の実績評価を受けると、区分が下がって収支差率が急落するケースがあります。

定員20人の事業所が3年目に就労定着者の割合20%以上30%未満(719単位)に落ちた場合、年間の収入がみなし期間と比べて相当程度減少します。開業前にこの「3年目の変動」を試算に組み込んでおくことが大切です。

対象者と利用期間の違い

A型の対象者と運営上の考え方

就労継続支援A型は、雇用契約のもとで継続的に就労することが可能だが、一般就労に移行するのが難しい障害者が主な対象です(障害者総合支援法 第5条第14項)。

雇用契約を結ぶ以上、利用者は「従業員」です。就労能力を高め、生産活動に貢献しながら、必要に応じて支援を受けるという形になります。利用期間に制限はなく、長期にわたって継続して利用する方も多くいます。

B型の対象者と生産活動

就労継続支援B型は、就労経験がある方や、年齢・体力面で雇用契約に基づく就労が難しいと判断された方など、B型が適切と判断された方が対象です(同条第15項)。

工賃の最低保障はないため、生産活動の内容と工賃水準は事業所によって大きく異なります。利用期間に制限はなく、自分のペースで長く通えることがB型の特徴の一つです。

就労移行支援の対象者と標準利用期間

就労移行支援は、一般就労を希望し、就労に向けた訓練が適切と判断された障害者が対象です(同条第13項)。

標準利用期間は2年です(施行規則 第6条の8)。やむを得ない事情がある場合は1年の延長ができます。訓練を終えて就職後は通常このサービスの利用を終了します。利用者が就職・定着することが事業の目標であり、それが翌年度の報酬に直結します。

開業資金の目安の違い

3サービスの開業にかかる費用は、制度の仕組みと人件費構造の違いを反映して差が生じます。

A型の開業資金が最も大きくなる理由

A型は、雇用契約を結んだ利用者への賃金を毎月支払わなければなりません。介護報酬の入金は原則2か月後であるため、少なくとも2〜3か月分の利用者賃金と職員人件費を事前に用意しておく必要があります。

開業時に利用者が少ない最初の数か月は、収入が少ないまま賃金・人件費・家賃などの固定費が発生します。加えて設備費用(就労に適した作業場・機材)も業種によって差が大きく、製造や農業など設備投資が必要な業種では初期費用が膨らみます。

運転資金の目安として、A型では開業前に6か月以上の固定費相当を確保することが一般的です。事業所の規模・業種・地域によっては、自己資金と融資を合わせて2,000万円以上になることもあります。

B型の開業資金の目安

B型はA型より固定の人件費が小さいため、開業資金の規模もA型より小さくなる傾向があります。ただし、生産活動の設備(農地・加工設備・清掃機材など)が必要な場合は相応の設備費がかかります。

工賃を支払うための費用は、生産活動の収益から出す設計が一般的です。生産活動の立ち上がりには時間がかかるため、最初の数か月は工賃が少ない状態が続くことを想定した資金計画が必要です。

就労移行支援の開業資金の目安

就労移行支援は工賃の支払いがなく、生産活動に必要な設備も原則として不要です。そのため3サービスの中では開業費用が最もシンプルになりやすい部分があります。

ただし、就職支援・訓練・定着支援の体制を整えるためには、就労支援員など専門スタッフの確保が必要です。また、3年目以降の定着率次第で収支が大きく変わるリスクを見込んだ運転資金の準備も欠かせません。

どの事業が自分に向いているか

雇用主になれる体制があるか

A型を開業するには、事業者が雇用主として労務管理・賃金支払い・社会保険手続きを担える体制が必要です。利用者が実際に従事できる事業内容(製造・農業・清掃・データ入力・飲食など)を自分で確保する必要もあります。

「支援の仕事がしたいが、雇用主になるイメージが湧かない」「生産活動の事業モデルが具体的に描けない」という場合、B型または就労移行支援のほうが始めやすい場合があります。

支援の得意な段階はどこか

B型は、一般就労に向けた段階の手前にいる方、長期的な支援が必要な方への継続した支援が中心です。就労移行支援は、就職活動の準備・伴走・定着支援という期間を区切った支援が中心です。

「就職後の定着まで関わる支援がしたい」なら就労移行支援、「就労ペースを自分で決めながら長く通ってもらえる場を作りたい」ならB型、「雇用主として障害者と一緒に事業を作りたい」ならA型というのが大まかな方向性です。

収支差率と経営継続性の観点から

全国平均の収支差率はA型 約2.3%・B型 約4.7%・就労移行 約6.0%です。3サービスとも薄い水準であり、どれが「儲かる事業」ということはありません。

A型は利用者賃金の支払い義務があるため、利用者数が少ない開業初期は経営が厳しくなりやすい構造です。B型は工賃水準が低い期間は報酬も低く、生産活動を育てることが先決です。就労移行は3年目以降の定着率次第で収支が大きく変わります。

いずれのサービスも、収益構造のリスクを事前に把握した上で資金計画を立てることが開業の出発点になります。

よくある誤解

「A型は一般就労の前段階」ではない

就労継続支援A型は「一般就労の一歩手前」のイメージを持たれることがありますが、制度上の位置づけは「雇用契約に基づく継続した就労の場の提供」です。利用者の中には長期にわたってA型で働き続ける方も多くいます。就労移行支援の「2年以内に一般就労を目指す」という方向性とは異なります。

「B型は働けない人向け」ではない

B型の対象者についての条件を読むと「雇用契約に基づく就労が困難」とありますが、これはB型が就労移行や一般就労より劣るという意味ではありません。その方の状態や意向に合ったサービスとして位置づけられており、長く安定して働ける場としての機能を持っています。

「就労移行は就職率だけ見ればいい」ではない

就職した後6か月の継続定着が報酬に反映されます。就職率を上げるために無理な就職支援を行うと、定着率が下がって翌年度の報酬区分が落ちるリスクがあります。就職した後の定着支援まで含めた質の高い支援が、経営の安定にもつながります。

3つのシミュレーターで試算できます

このページで紹介した3サービスのそれぞれについて、定員・地域・加算の組み合わせによる年間収入・収支・必要な資金を試算するツールを無料で提供しています。

無料版では年間の概算収支、Pro版(買い切り9,800円)では月次36か月の収支グラフ・感度分析・CSV・印刷用事業計画書が利用できます。開業前の資金計画や、金融機関への事業説明資料の作成にお役立てください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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