計画相談支援(指定特定相談支援)を開業するとき、採用しなければならない職種が「相談支援専門員」です。相談支援専門員は計画相談支援の中心的な担い手で、何人必要か、専従なのか兼務できるのか、1人あたり何件まで担当できるのかは、開業計画の人件費と収支を大きく左右します。この記事では、計画相談支援の相談支援専門員の配置要件と、担当件数・人件費の試算の考え方を整理します。
相談支援専門員の配置は「利用者35人ごとに1人」が基準です
計画相談支援の人員基準は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第28号、以下「基準省令」)に定められています。
基準省令第3条(相談支援専門員の員数)には次のように規定されています。
- 相談支援専門員を1人以上配置する
- 員数の標準:前6か月の平均利用者数÷35(1未満の端数は切り上げ)
- 計画相談支援の指定申請の流れ。必要書類・審査期間・開業までのスケジュール。
- 計画相談支援の人件費。相談支援専門員の給与相場と収益性の関係。
出典:平成24年厚生労働省令第28号 第3条(e-Gov 法令データ提供システム 424M60000100028)
この「35人ごとに1人」という基準は員数の「標準」であり、上限の意味ではありません。1事業所に相談支援専門員が1人しかいなくても、担当件数が35件を超えても直ちに違法にはなりませんが、運営指導の際に「標準に照らして適切か」が確認されます。実務上は、1人あたり35件前後を目安に採用計画を立てる事業所が多いです。
相談支援専門員は専従が原則ですが、兼務も認められています
基準省令第3条は、相談支援専門員を「専ら指定計画相談支援の提供に当たる者」と定めています。つまり専従が原則です。
ただし同条には「当該指定計画相談支援事業所の管理者が兼務する場合その他これに準ずる場合として利用者に対するサービスの提供に支障がない場合は、この限りでない」という例外規定があります。管理者との兼務や、同法人の他事業所の職員が兼務することは、「支障がない」と判断できる範囲で認められます。
実際には、訪問介護・グループホーム・放課後等デイサービス等を運営している法人が計画相談支援を新たに立ち上げ、既存の職員(サービス管理責任者など)が兼務するケースがあります。ただし、兼務する場合は両方の業務に支障が出ないよう担当件数の管理が必要です。
報酬は「通常型」と「機能強化型」の2段階になっています
計画相談支援の基本報酬は、令和8年6月の報酬改定から「通常型」と「機能強化型(Ⅰ〜Ⅳ)」に区分されました。同じ計画作成・モニタリングをしても、事業所の体制によって受け取れる報酬が変わります。
| 区分 | サービス利用支援費(新規) | 継続サービス利用支援費(モニタリング) |
|---|---|---|
| 通常型(Ⅰ) | 1,572単位/件 | 1,308単位/件 |
| 機能強化型Ⅰ | 2,014単位/件 | 1,761単位/件 |
| 機能強化型Ⅱ | 1,914単位/件 | 1,661単位/件 |
| 機能強化型Ⅲ | 1,822単位/件 | 1,558単位/件 |
| 機能強化型Ⅳ | 1,672単位/件 | 1,408単位/件 |
出典:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援に要する費用の額の算定に関する基準」(告示第125号)・令和8年6月1日適用分
機能強化型の区分は、主に「緊急時の受け入れ体制」「強度行動障害などへの支援実績」「24時間対応体制」「他機関との連携」などの要件で決まります。開業直後は通常型(Ⅰ)から始まり、体制が整ったら機能強化型への移行を目指す流れが一般的です。
1人あたりの担当件数と月収入の試算
相談支援専門員1人が担当する件数(35件を基準として)で、事業所の月収入がどう変わるかを試算します。地域区分単価は11.20円/単位(1級地)を使っています。
通常型(Ⅰ)・新規3件・モニタリング毎月実施の場合:
| 担当件数(継続) | 月の継続モニタリング収入(通常型) | 月の継続モニタリング収入(機能強化Ⅰ) |
|---|---|---|
| 20件(毎月モニタリング) | 約29.3万円 | 約39.5万円 |
| 30件(毎月モニタリング) | 約43.9万円 | 約59.2万円 |
| 35件(毎月モニタリング) | 約51.2万円 | 約69.0万円 |
| 35件(3か月に1回) | 約17.1万円 | 約23.0万円 |
計算式:継続モニタリング件数 × 継続サービス利用支援費(単位) × 地域区分単価(円/単位)
例:20件 × 1,308単位 × 11.20円 ≒ 293,990円(約29.3万円)
毎月モニタリングかどうかは、利用者ごとの支援の頻度・状況によって変わります。障害支援区分が高い・医療的ケアが必要・環境が変化しやすい場合は毎月、安定している場合は3か月・6か月に1回になることが多いです。モニタリング頻度が低いほど月の収入は少なくなりますが、1人の担い手がより多くの件数を担当できるという側面もあります。
相談支援専門員の人件費の目安
相談支援専門員を常勤で採用する場合の人件費の目安(正規職員・社会保険含む)は、地域や事業所の体制によって異なりますが、月25〜35万円程度(給与20〜27万円+法定福利費)が一般的な試算の出発点になります。
1人あたりの担当件数が少ない開業初期は、モニタリング収入だけでは人件費を回収しきれない期間が続くことが多いです。国民健康保険団体連合会(国保連)の令和7年1〜3月のデータでは、指定特定相談支援事業所の1事業所あたりの費用額は月約42.6万円です(注:全国平均・専門員1人規模の試算とは異なる)。新規計画作成の件数・初回加算(300単位/件)・毎月どのくらい新規を受け付けられるかが、開業初期の収支の鍵になります。
出典:国民健康保険団体連合会「障害福祉サービス等給付費の推移(令和7年1〜3月)」
相談支援専門員の資格要件と研修
相談支援専門員になるには、一定の実務経験と都道府県が実施する「相談支援従事者初任者研修」の修了が必要です。実務経験の要件は、障害者・障害児・高齢者の支援業務(介護・医療・就労支援など)3〜5年(業種による)のいずれかが基本です。
資格の有効期間は5年で、更新するには「相談支援従事者現任研修」の修了が必要です。採用時に資格を持っているかどうか、資格の更新状況を確認することは、開業後の人員配置を維持するために重要です。
収支シミュレーターで担当件数・モニタリング頻度ごとに試算できます
このサイトでは、担当件数・モニタリング頻度(毎月/3か月/6か月)・新規受け付け件数・地域区分・処遇改善加算を入力して、計画相談支援事業所の月次収入と3年間の収支の目安を試算できるツールを提供しています(基本試算は無料)。36か月の収支グラフと事業計画書の印刷はPro版(¥9,800買い切り)です。
まとめ:相談支援専門員の配置の要点
- 配置基準:利用者35人ごとに相談支援専門員1人が「標準」(基準省令第3条)
- 専従が原則だが、支障がなければ他職種・他事業所との兼務が認められる
- 基本報酬は通常型(新規1,572単位・継続1,308単位)と機能強化型Ⅰ〜Ⅳ(新規2,014〜1,672単位・継続1,761〜1,408単位)の2段階(告示第125号・令和8年6月適用)
- モニタリング頻度(毎月/3か月/6か月)によって月次収入が大きく変わる。担当35件・毎月モニタリングなら月約51万円、3か月に1回なら月約17万円(通常型・1級地)
- 処遇改善加算は5.1%の1区分のみ(令和8年6月新設)
関連記事:計画相談支援の運営指導で確認されること。


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