就労継続支援B型の工賃月額、全国平均と地域差を厚労省データで確認する。
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就労継続支援B型の収支計画を立てるとき、「自事業所の工賃月額目標は現実的か」を判断する基準のひとつが全国平均です。厚生労働省は毎年度、都道府県別の工賃月額の実績を公表しており、全国平均と地域ごとの傾向を把握することができます。
この記事では、工賃月額の全国平均と推移の見方、基本報酬区分との関係、地域差が生まれる理由、開業計画での工賃目標の立て方を整理します。工賃月額の仕組みと収入計算の詳細は「就労継続支援B型の収入は、工賃月額の区分で決まる。」で解説していますので、そちらもあわせてご参照ください。
厚労省が毎年公表する工賃月額実績を確認する方法
厚生労働省は、就労継続支援B型事業所の工賃月額について、毎年度「工賃月額等実績一覧」を公表しています。この資料は厚生労働省の障害福祉サービス関連ページから入手でき、都道府県別・事業所別の平均工賃月額の実績が掲載されています。
公表される主な数値は次のとおりです。
- 全国平均工賃月額:全国の就労継続支援B型事業所における利用者1人あたりの平均工賃月額
- 都道府県別平均工賃月額:各都道府県内の事業所の平均値
- 最高・最低の都道府県:地域差の幅を把握できる
全国平均工賃月額は、厚生労働省が公表する直近年度のデータを確認してください。過去の推移として、長期的には緩やかな上昇傾向が続いてきましたが、年度によって増減があります。具体的な最新数値は、厚生労働省「工賃月額等実績一覧」(厚生労働省ウェブサイト「就労継続支援B型の工賃向上に向けた取組支援について」のページに掲載)で確認することをお勧めします。
全国平均を「自事業所の工賃目標の参考値」として使うことが、開業計画における工賃設定の基本です。全国平均を下回る水準からスタートすることが多い新規事業所の場合、全国平均に追いつくまでの期間を見通して計画に織り込むことが重要です。
工賃月額の区分は14段階。どの水準を超えれば報酬が上がるか。
就労継続支援B型の基本報酬は、前年度の利用者1人あたりの平均工賃月額によって区分が決まります(厚生労働省告示第523号 別表第14)。区分は14段階に設定されており、工賃月額が高いほど翌年度の報酬単価が高くなります。
14の区分の境界ラインは次のとおりです(第1区分が最高単価・第14区分が最低単価)。
| 区分 | 前年度の平均工賃月額 |
|---|---|
| 第1区分(最高) | 4万8千円以上 |
| 第2区分 | 4万5千円以上4万8千円未満 |
| 第3区分 | 3万8千円以上4万5千円未満 |
| 第4区分 | 3万5千円以上3万8千円未満 |
| 第5区分 | 3万3千円以上3万5千円未満 |
| 第6区分 | 3万円以上3万3千円未満 |
| 第7区分 | 2万8千円以上3万円未満 |
| 第8区分 | 2万5千円以上2万8千円未満 |
| 第9区分 | 2万3千円以上2万5千円未満 |
| 第10区分 | 2万円以上2万3千円未満 |
| 第11区分 | 1万8千円以上2万円未満 |
| 第12区分 | 1万5千円以上1万8千円未満 |
| 第13区分 | 1万円以上1万5千円未満 |
| 第14区分(最低) | 1万円未満 |
区分の境界値は告示第523号 別表第14に規定されています。改定があった場合は最新版を確認してください。
全国平均が概ね1万円台後半にあるとすれば、正確な区分では第11区分(1万8千円以上2万円未満)付近に相当します。新規事業所は第14区分(最低単価・1万円未満)からスタートし、全国平均水準に到達するまでに複数年かかることを計画に織り込む必要があります。区分が1つ上がるごとに収入がどれだけ変わるかは、定員・稼働率の組み合わせによって変わります。
工賃月額に地域差が生まれる主な理由
都道府県別の工賃月額には、厚労省の公表データで確認できるとおり、地域によって差があります。この差が生まれる主な要因は次のとおりです。
受注できる仕事の種類と単価の違い
工賃の原資は生産活動収入です。都市部の事業所は、オフィス系の軽作業・印刷物の加工・データ入力・クリーニングなど、単価が比較的高い業務を受注できる機会が多い傾向があります。一方、地方の事業所では農作業・食品加工・清掃など、単価の低い作業が中心になりやすいことがあります。
ただし、これは一般的な傾向であり、地方でも農福連携・特産品のEC販売・企業との連携受注など、高単価の仕事を確保している事業所もあります。受注先の開拓次第で地域差を埋めることは可能です。
最低賃金との関係
就労継続支援B型の工賃は最低賃金法の適用対象外ですが(雇用契約ではないため)、地域の最低賃金の水準が労働市場全体の賃金水準に影響するため、高最低賃金地域では生産活動のコスト(原材料費・外注費)も高くなる傾向があります。生産活動収入から費用を差し引いた残りが工賃の原資になるため、コスト水準の違いが工賃月額に影響します。
事業所の規模・歴史の違い
工賃月額は開業からの年数と相関する傾向があります。長年にわたって受注先を開拓し、工賃向上の取り組みを積み上げてきた事業所は工賃水準が高くなっています。都市部ほど事業所の開設が早かった地域では、全体的な平均が高くなっているケースもあります。
全国平均と自事業所の目標を比較する意味
開業計画で工賃目標を設定するとき、全国平均を参照する意義は次の2点にあります。
1. 達成可能な水準の目安にする
全国の事業所が概ね達成している水準が「現実的な目標」の基準になります。全国平均を大きく超える工賃目標は、受注先の確保・生産効率の改善に相当の投資が必要であることを意味します。一方、全国平均を下回る水準では報酬区分が低いままになり、収支が厳しくなります。
開業後の数年間は全国平均を下回ることを前提に、何年目に全国平均に到達し、何年目に全国平均を超えるかという中期目標を立てることが、現実的な計画作成につながります。
2. 報酬区分の改善幅を試算する材料にする
工賃月額の区分は14段階あります。開業初年度は第1区分(最低単価)からスタートし、生産活動収入を増やして工賃月額を引き上げていくことで、翌年度の区分が上がります。全国平均に相当する区分と自事業所の目標区分を比べることで、「全国平均並みの収入になるには工賃をあといくら上げれば良いか」を把握できます。
工賃月額を上げやすい生産活動の種類
工賃月額を効率的に高めるためには、生産活動収入を増やす必要があります。B型事業所で工賃向上につながりやすい生産活動の種類を整理します。
| 生産活動の種類 | 工賃向上への寄与 | 主な課題 |
|---|---|---|
| 農業(農福連携) | 安定した受注・単価の向上(直販・加工品)が期待できる | 農地の確保・農業委員会への届出・天候リスク |
| 清掃・ビルメンテナンス | 継続受注が見込める・複数の施設と契約しやすい | 移動コスト・職員の引率体制 |
| 食品加工・菓子製造 | 高付加価値商品を作れれば単価が上がる | 食品衛生法の許可・衛生管理体制の整備 |
| EC販売(手工芸・製造品) | 地域外に販路を広げられる・単価設定の自由度がある | 在庫リスク・発送業務・写真撮影・商品開発 |
| データ入力・印刷物加工 | 都市部では受注しやすく単価も安定 | 利用者のスキルに応じた業務の選定 |
| 企業・行政からの受注作業 | 継続的な受注先として安定性が高い | 受注先の開拓・品質管理・納期管理 |
生産活動の選択は、利用者の特性(作業能力・障害の種別)・地域の産業環境・事業所の設備の3つを照らし合わせて決めることが基本です。全国平均の工賃水準を達成している事業所の多くは、複数の受注先を持ち、特定の仕事への依存度を分散させています。
工賃月額を上げても収入に反映されるまでに1年かかる
就労継続支援B型の基本報酬区分は、「前年度の平均工賃月額の実績」に基づいて翌年度に設定されます。つまり、当年度に工賃月額を引き上げても、その改善が収入(報酬単価の上昇)に反映されるのは翌年度です。
このタイムラグを理解することは、収支計画において重要です。
- 工賃を上げるための投資は当年度に発生する:生産活動の受注拡大・設備投資・人員補強にかかるコストは当年度の支出に計上されます
- 工賃向上の成果が収入に出るのは翌年度:当年度に工賃月額を引き上げても、当年度の基本報酬単価は変わりません
- 2年先を見越した計画が必要:3年目に収入を安定させるためには、1年目から工賃向上に取り組み、2年目の報酬区分を上げる戦略が必要です
開業計画では「何年目に工賃月額を何円にし、何年目から報酬区分が上がるか」を時系列で試算することで、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
シミュレーターで工賃区分の変化が収支に与える影響を確認する
工賃月額の変化が収支全体にどう影響するかは、定員・稼働率・人件費との組み合わせで変わります。開業収支シミュレーターでは、工賃月額区分を変えたときの月次収入と収支差の変化を試算できます。
具体的には次のシナリオを確認できます。
| シナリオ | 確認できること |
|---|---|
| 工賃月額が全国平均水準に達した場合 | 報酬区分が上がった年度の収入増加額・収支差率の変化 |
| 工賃月額が最低区分(0円)のまま続いた場合 | 最悪ケースでの累積赤字額・資金の底打ち時期 |
| 段階的に区分を上げていった場合 | 黒字転換の時期・収支改善のペース |
Pro版では月次36か月の収支推移グラフと感度分析が利用できます。「3年間で工賃月額を全国平均まで引き上げる計画」が実際に収支を改善するかどうかを、数字で確認できます。
まとめ
就労継続支援B型の工賃月額の全国平均は、厚生労働省が毎年公表する「工賃月額等実績一覧」で確認できます。全国平均は開業計画における工賃目標の基準として活用できます。工賃月額は14段階の区分で基本報酬単価が変わる仕組みになっており(告示第523号 別表第14)、区分が上がるほど収入が増えます。ただし、工賃向上の成果が報酬に反映されるのは翌年度であるため、1〜2年先を見越した工賃向上の計画が必要です。地域差がある背景には受注できる仕事の種類・単価の違いがあり、農業・清掃・食品加工・EC販売など生産活動の多様化が工賃向上につながります。
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▶ 就労継続支援B型 開業収支シミュレーター
出典:厚生労働省「工賃月額等実績一覧(都道府県別)」(各年度)。厚生労働省告示第523号(令和6年度版)別表第14。作成日:2026年10月。


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