危険物取扱者 乙種第1類(乙1)は、酸化性固体を取り扱うための国家資格です。試験は法令15問・物理化学10問・性質消火10問の計35問、試験時間2時間で、各科目60%以上かつ全体60%以上(35問中21問以上)の得点で合格になります(出典:消防試験研究センター)。受験資格はなく、誰でも受験できます。第1類の対象品目は9グループあり、塩素酸塩類や無機過酸化物など、工業・農業・消毒剤の原料として広く使われる物質が含まれます。
このページでは、乙1の試験の全体像を整理します。科目別の出題構成から9品目の一覧、乙4・乙6との違い、問題集の使い方まで、試験勉強の出発点となる情報をまとめています。
乙1の試験構成は35問・2時間・3科目
乙種第1類の試験構成は次のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 合格ライン | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 法令(消防法・政令・規則) | 15問 | 9問以上(60%) | 製造所等の基準・指定数量・申請・保安監督者・運搬・移送 |
| 物理化学 | 10問 | 6問以上(60%) | 燃焼の三要素・消火の種類・酸化還元・化学式・熱 |
| 性質消火(第1類) | 10問 | 6問以上(60%) | 9品目の性状・指定数量・危険等級・消火方法 |
| 合計 | 35問 | 21問以上(60%)かつ各科目も60%以上 |
出典:消防試験研究センター「危険物取扱者試験」案内(shobo.or.jp)
法令と物理化学は、乙4・乙6・甲種など他の乙種と問題の傾向が共通しています。乙4をすでに取得している場合は科目免除を申請でき、性質消火の10問だけ受験することが可能です。
法令15問の範囲と試験に出やすいテーマ
法令は、消防法・危険物の規制に関する政令・危険物の規制に関する規則の3本が出題の根拠となります。試験でよく問われるテーマは次のとおりです。
- 指定数量と倍数の計算(第1類は50kg・300kg・1,000kgの3種類)
- 危険物施設(製造所・貯蔵所・取扱所)の種類と基準
- 保安距離・保有空地が必要な施設の種類
- 危険物取扱者の種類(甲種・乙種・丙種)と業務範囲
- 保安監督者の選任条件と役割
- 運搬の基準(容器・表示・積載方法・混載禁止)
- 移送の基準と移動タンク貯蔵所
- 許可・認可・届出の区分と手続き
- 定期点検の対象と頻度
- 危険物の廃棄基準
乙1の法令問題は第1類に限らず、危険物取扱者制度全般から出題されます。第4類や第6類を受験する場合と同じ範囲なので、乙4の法令テキストを使って学習できます。
物理化学10問の範囲
物理化学は、化学の基礎知識と燃焼・消火の理論が中心です。第1類は酸化性固体なので、酸化還元の概念(酸素を放出する側・奪う側)を理解しておくことが大切です。
- 燃焼の三要素(可燃物・酸素・点火源)と消火の原理
- 酸化と還元の定義(電子の授受・酸素の受け渡し)
- 熱化学(比熱・熱容量・発熱反応・吸熱反応)
- 混合物と純物質・単体と化合物
- 化学式と分子量
- 気体の法則(ボイル・シャルル)
- 静電気の発生と危険性
- 金属の性質(イオン化傾向)
乙4・乙6などと同じ科目のため、共通テキストで学習可能です。
性質消火10問の範囲:第1類9品目と消火方法
性質消火は乙1の核心です。第1類危険物(酸化性固体)の9グループすべての性状・指定数量・危険等級・消火方法が出題範囲になります。
| 品名 | 指定数量 | 危険等級 | 代表物質 | 消火方法 |
|---|---|---|---|---|
| 塩素酸塩類 | 50kg | I | 塩素酸カリウム(KClO₃) | 大量の水 |
| 過塩素酸塩類 | 50kg | I | 過塩素酸カリウム(KClO₄) | 大量の水 |
| 無機過酸化物 | 50kg | I | 過酸化ナトリウム(Na₂O₂)・過酸化カリウム(K₂O₂)・過酸化バリウム(BaO₂) | 乾燥砂(水厳禁) |
| 亜塩素酸塩類 | 50kg | I | 亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂) | 大量の水 |
| 臭素酸塩類 | 50kg | I | 臭素酸カリウム(KBrO₃) | 大量の水 |
| 硝酸塩類 | 300kg | II | 硝酸カリウム(KNO₃)・硝酸アンモニウム(NH₄NO₃) | 大量の水 |
| ヨウ素酸塩類 | 300kg | II | ヨウ素酸カリウム(KIO₃) | 大量の水 |
| 過マンガン酸塩類 | 300kg | II | 過マンガン酸カリウム(KMnO₄)・暗紫色 | 大量の水 |
| 重クロム酸塩類 | 300kg | II | 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)・橙赤色 | 大量の水 |
| その他のもの | 1,000kg | III | DCCA(ジクロロイソシアヌル酸) | 大量の水 |
出典:消防法別表第一・危険物の規制に関する政令別表第一・危険物の規制に関する規則別表第4
消火方法で特に注意が必要なのが無機過酸化物です。過酸化ナトリウム(Na₂O₂)・過酸化カリウム(K₂O₂)・過酸化バリウム(BaO₂)・過酸化マグネシウム(MgO₂)は、水と反応して酸素を発生し強く発熱するため、水での消火は禁止です。乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩を使います。それ以外の第1類は大量の水による冷却消火が基本です。
第1類危険物の共通性状
第1類危険物に共通する性状は次のとおりです。
- すべて固体(酸化性固体)
- それ自体は不燃性(燃えない)
- 加熱・衝撃・摩擦などにより分解して酸素を放出する
- 放出された酸素が可燃物の燃焼を著しく促進させる(促進燃焼)
- 可燃物・有機物との接触が危険
- 運搬容器の表示:「火気・衝撃注意」「可燃物接触注意」(危険物の規制に関する規則第44条)
乙4を取得済みの場合は性消10問だけ受験できる
危険物乙種の資格を1つ以上持っている場合、追加の乙種を受験するときに法令と物理化学の科目が免除されます(消防法第13条の23)。乙4を取得済みであれば、乙1の受験時に性質消火10問だけ受験すれば合格できます。10問中6問(60%)以上の正解が合格ラインです。
科目免除を受ける場合は、申込時に免除申請を行い、取得済みの免状のコピーを提出します。
試験の申込方法とCBT試験
乙1の試験申込は、消防試験研究センター(shobo.or.jp)のWebサイトから行います。試験方式はCBT試験(テストセンターのパソコンで受験)と書面試験の2種類があります。
- CBT試験:全国のテストセンターで随時受験可能。日程の柔軟性が高い
- 書面試験:都道府県ごとの試験日(年1〜3回程度)
受験手数料は4,600円(令和5年度時点・変更の場合があります。最新は shobo.or.jp で確認してください)。合格後は都道府県の消防本部または消防試験研究センターに免状交付申請をします。
乙4・乙6・甲種との違い
危険物取扱者の乙種は第1類から第6類まであり、各類で取り扱える危険物が異なります。乙1と関連の深い資格との比較を整理します。
| 資格 | 対象危険物 | 性消の出題範囲 | 問題集 |
|---|---|---|---|
| 乙1(第1類) | 酸化性固体(9品目) | 塩素酸塩類・無機過酸化物など9グループ | 乙1問題集 |
| 乙4(第4類) | 引火性液体(13品目) | ガソリン・灯油・重油・アルコール類など | 乙4問題集 |
| 乙6(第6類) | 酸化性液体(6品目) | 過塩素酸・過酸化水素・硝酸など液体の酸化剤 | 乙6問題集 |
| 甲種 | 全類(第1〜6類すべて) | 全類の性状・消火(20問) | 甲種問題集 |
乙1は性消問題10問という科目の軽さが特徴です。ただし9品目の性状を覚えることと、無機過酸化物の「水厳禁」という特殊な消火方法が試験の山場になります。
甲種取得を目指す場合の乙1の位置づけ
甲種危険物取扱者は、第1〜6類すべての危険物を取り扱える最上位の資格です。甲種の受験資格の一つに「乙種の免状を4種類以上取得していること(うち第1・2・3・5類のいずれかと第4類または第6類を含む)」があります(消防法施行令第33条)。
乙1(第1類)はこの要件に含まれる類です。甲種を目指す場合、乙1→乙2または乙3→乙4または乙6→乙5という順序で4種類取得し、甲種に進むルートが一般的です。乙4を起点にすると、乙4取得後は法令・物化が科目免除になるため、乙1・乙2・乙3・乙5・乙6はいずれも性消10問だけの受験で済みます。
甲種の試験構成は法令15問・物化10問・性消20問(全類)の45問で、性消は乙1で学んだ第1類の内容がそのまま出題されます。乙1で第1類を深く理解しておくと甲種での性消問題の得点基盤になります。
よくある受験者の誤解
乙1の受験で多い誤解を整理します。
- 「科目免除は自動的に適用される」:誤りです。科目免除は申込時に申請し、取得済み免状の写しを提出しないと適用されません。申請を忘れると3科目全部受験になります
- 「乙1は9品目だけ覚えれば受かる」:性消は9品目で10問ですが、法令15問・物化10問の計35問すべてで60%以上必要です。性消だけ覚えて法令・物化を捨てると不合格になります(科目免除なしの場合)
- 「合格後すぐに危険物を取り扱える」:誤りです。合格後は免状交付申請が必要です。免状が交付されて初めて危険物取扱者として業務ができます。申請費用と免状証明書の取得には数日〜数週間かかります
- 「第1類は水での消火が禁止」:誤りです。水厳禁は無機過酸化物だけです。塩素酸塩類・硝酸塩類など他の8品目は大量の水での冷却消火が基本です
- 「乙1と乙6は同じ酸化剤なので性消の範囲が重なる」:誤りです。乙1は「酸化性固体」、乙6は「酸化性液体」で別の類です。過塩素酸(液体)は乙6、過塩素酸塩類(固体)は乙1という区分です
乙1の取得が役立つ実務場面
乙1取得後の実務での活用場面を整理します。第1類危険物は工業・農業・消防の現場で広く使われています。
- 化学工場・工業施設:硝酸アンモニウム(硝酸塩類)・過マンガン酸カリウムを扱う工程の責任者になれる
- 農業・農薬業:塩素酸ナトリウム系除草剤の保管・管理
- プール・水処理施設:次亜塩素酸塩類(漂白剤)の取扱い。DCCAなど「その他のもの」に分類される消毒剤の管理
- 消防・防災の知識として:第1類危険物火災での消火方法の判断(無機過酸化物には水を使わないなど)
- 甲種受験資格の取得:乙1・乙2・乙5・乙4の4種類で甲種受験資格になる
乙1の問題集で3科目を効率よく練習する
危険物乙1 AI問題集では、法令70問・物理化学50問・性質消火100問の計220問を無料で練習できます。科目ごとに絞って練習でき、答えのあとに根拠となる法令の条文が表示されます。
- 確認済み220問:繰り返し無制限・無料
- AIが毎回新しく作る問題:980円で無制限
- 法令・物化・性消を科目別に選んで練習できる
- インストール不要・スマホで使える
乙4を取得済みで科目免除申請をする方は、性消100問に集中して練習してください。
危険物取扱者の各試験種別とアプリの一覧は、危険物取扱者の問題集まとめページから確認できます。
出典:消防法・危険物の規制に関する政令・危険物の規制に関する規則・消防試験研究センター試験案内

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