危険物取扱者 乙種第1類(乙1)の合格率は、乙種全体の傾向と同様に概ね35〜45%の範囲とされています(消防試験研究センター公表の乙種合計数値を参照)。乙1単独の合格率は公式には分離公表されていませんが、受験者からの声や試験内容の難易度から見ると、乙4と同程度かやや低い難易度と考えられます。試験35問の各科目で60%以上、かつ全体でも60%以上(35問中21問以上)を取ることが合格の条件です。
このページでは、乙1の難易度の構造と、科目別に落ちやすいポイントを整理します。試験で出やすい「引っかけ」パターンと、よくある受験者の誤解も合わせて解説します。
乙1の合格基準は3科目すべてで60%以上
乙1の合格ラインは次のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 合格ライン | 正解が必要な最低問数 |
|---|---|---|---|
| 法令 | 15問 | 60%以上 | 9問以上 |
| 物理化学 | 10問 | 60%以上 | 6問以上 |
| 性質消火(第1類) | 10問 | 60%以上 | 6問以上 |
| 全体 | 35問 | 60%以上 | 21問以上 |
出典:消防試験研究センター「危険物取扱者試験の合格基準」(shobo.or.jp)
3科目すべてで60%を上回ることが必要です。法令で9問以上・物化で6問以上・性消で6問以上取りながら、合計でも21問以上正解することが求められます。1科目でも基準を下回ると、全体の得点が高くても不合格になります。
法令は暗記量が多く、落ちやすい科目
法令15問は、消防法・政令・規則の3つの法令から出題されます。指定数量の数値・製造所等の基準・申請手続きの区分など、細かい数字と手続きの条件を覚える必要があります。
法令で落ちやすいポイントは次のとおりです。
- 指定数量の数値の混同:乙1の第1類は50kg・300kg・1,000kgの3段階ある。第4類や第6類と混同しやすい
- 保安距離・保有空地の対象施設の混同:「保安距離が必要な施設」と「保有空地が必要な施設」は一部異なる。移動タンク貯蔵所はどちらも不要
- 許可・認可・届出の区分:施設の設置は「許可」、変更は「許可または届出」、廃止は「届出」など区分が細かい
- 保安監督者の要件:選任できる者の免状の種類・実務経験の条件を覚える必要がある
- 運搬と移送の区別:「運搬」は容器に収納して車で運ぶ、「移送」は移動タンク貯蔵所で運ぶ。ルールが異なる
法令は暗記が中心ですが、条文の「なぜそうなっているか」という理由とセットで覚えると記憶に定着します。
法令で出る「引っかけ」パターン3例
法令の問題は「誤っているものはどれか」という形式が多く、細かい表現の違いが正誤を分けます。よく出る引っかけパターンを整理します。
-
「保安監督者は危険物取扱者であれば誰でも選任できる」→ 誤り
保安監督者になれるのは、甲種または乙種の取扱者で、取り扱う危険物の種類に対応した免状を持ち、かつ6か月以上の実務経験がある者に限られます(消防法第13条・政令第31条)。資格を持っているだけでは選任できません。 -
「第1類危険物の運搬は、乙種第1類の免状を持っていなくても危険物取扱者の立会いがあればよい」→ 誤り(運搬には免状・立会いとも不要)
危険物の「運搬」は容器に収納して一般車両で運ぶ行為で、危険物取扱者の免状は不要です(危険物取扱者の関与なしに誰でも運搬できます)。ただし容器・表示・積載方法に関する規定は守る必要があります。「移送(移動タンク貯蔵所)」と混同させる引っかけです。 -
「屋内貯蔵所には必ず保安距離を確保しなければならない」→ 誤り
保安距離が必要な施設は製造所・屋外タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所・屋外貯蔵所・一般取扱所の5種類です(政令第9条等)。屋内貯蔵所は保安距離不要です。保安距離が必要な施設と不要な施設の区分を「必要な5種類を覚える」方針で整理すると間違えにくくなります。
物理化学は基礎概念を押さえれば得点しやすい
物理化学10問は、化学の基礎知識と燃焼・消火の理論が中心です。高校化学の基礎をカバーしている受験者には得点しやすい科目です。
物化で落ちやすいポイントは次のとおりです。
- 酸化と還元の向き:「酸化剤は自分が還元される(酸素を放出する)」という向きを混同しやすい。第1類は酸化剤なので、自らが還元されて可燃物の燃焼を促進する
- 燃焼の三要素と消火の対応:除去消火・冷却消火・窒息消火のどれがどの要素に対応するか
- 化学式の計算:分子量の計算や化学反応式のバランスで計算ミスが起きやすい
物理化学は、乙4・乙6など他の乙種と共通の範囲なので、乙4の参考書の物化パートをそのまま使って学習できます。
物化で出る「引っかけ」パターン3例
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「第1類危険物はそれ自体が可燃性なので燃焼する」→ 誤り
第1類は酸化性固体であり、それ自体は不燃性です。可燃物の燃焼を促進する(促進燃焼)性質を持ちますが、自分自身は燃えません。「可燃性」は第4類(引火性液体)・第2類(可燃性固体)などの特徴です。 -
「窒息消火は可燃物の三要素のうち点火源を除去する方法だ」→ 誤り
窒息消火は酸素(支燃物)を遮断する消火方法です。可燃物を除去するのは除去消火、熱を下げるのは冷却消火です。第1類危険物の火災で窒息消火が難しい理由は、危険物自体が酸素を放出するからです。 -
「硝酸アンモニウムの分子量は80である」→ 誤り
硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)の分子量はN(14)+H₄(4)+N(14)+O₃(48)=80です。これは正しい数値です。ただし試験では「80である」「79である」「96である」などの選択肢が出ることがあり、素早く計算できるよう練習しておくことが必要です。化学式と原子量(H=1・N=14・O=16・Na=23・K=39・Cl=35.5)を確認しておきましょう。
性質消火は9品目の性状と消火方法の暗記が鍵
性質消火10問が乙1の最大の山場です。第1類危険物の9品目それぞれについて、次の項目を覚えます。
- 品目名と代表的な物質名(化学式も含む)
- 指定数量と危険等級
- 主な性状(色・形・水との反応・加熱時の変化)
- 危険な組み合わせ(可燃物・有機物・酸との反応)
- 消火方法(特に無機過酸化物の「水厳禁・乾燥砂」は必須)
性消で落ちやすいポイントを整理します。
- 無機過酸化物の消火方法:過酸化ナトリウム(Na₂O₂)・過酸化カリウム(K₂O₂)・過酸化バリウム(BaO₂)は水厳禁。乾燥砂で消火する。これを「大量の水でよい」と誤解すると致命的
- 指定数量の数値の混同:塩素酸塩類・無機過酸化物など5品目が50kg、硝酸塩類など4品目が300kg、その他が1,000kgという3段階を覚える
- 塩素酸塩類の鋭感性:塩素酸カリウムは硫黄・木炭・有機物と混合した状態で加熱・衝撃を受けると爆発する。過塩素酸塩類より鋭感性が高い
- 過マンガン酸カリウムの色:暗紫色(赤紫色)。重クロム酸カリウムの橙赤色と区別する
- 亜塩素酸ナトリウムと酸の反応:酸と反応して二酸化塩素(ClO₂)を発生する。毒性・爆発性があり危険
性消で出る「引っかけ」パターン3例
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「過酸化ナトリウムの火災には大量の水をかけて冷却する」→ 誤り
無機過酸化物(Na₂O₂・K₂O₂・BaO₂)の火災に水を使うと、水と反応して酸素を発生し強く発熱します。正しい消火方法は乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩です。CO₂消火器も使えません(Na₂O₂+2CO₂→2Na₂CO₃+O₂の反応で酸素が発生するため)。 -
「塩素酸カリウムと過塩素酸カリウムは同じ危険等級で危険性も同じ」→ 誤り
どちらも指定数量50kg・危険等級Iですが、塩素酸カリウム(KClO₃)の方が過塩素酸カリウム(KClO₄)より鋭感性が高く、有機物や硫黄との混合物は衝撃だけで爆発します。過塩素酸塩類は比較的安定しています。 -
「硝酸塩類の指定数量は50kgである」→ 誤り
硝酸塩類(KNO₃・NH₄NO₃など)の指定数量は300kgです。50kgは塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類の5品目です。硝酸の字から塩素酸塩類(50kg)と混同しやすい点が引っかけになっています。
乙4取得済みなら性消10問だけで合格できる
乙種の資格を1種類以上持っている場合、乙1を受験するときに法令と物理化学の科目が免除されます(消防法第13条の23)。乙4を持っていれば性質消火の10問だけの受験になります。
科目免除の場合、受験する問題が10問(性消のみ)になるため、1問あたりの重みが大きくなります。6問(60%)を下回ると不合格になるので、全10問を丁寧に押さえる必要があります。
乙1の勉強時間の目安
乙1の勉強時間の目安は、乙4取得済みかどうかで大きく変わります。
- 初めて危険物試験を受ける場合:法令・物化・性消の3科目すべてが対象。目安は80〜120時間程度。法令の暗記に最も時間がかかる
- 乙4取得済みで科目免除を使う場合:性消10問のみ。目安は15〜30時間程度。9品目の性状・指定数量・消火方法を集中的に覚える
- 化学系の知識がある場合(大学・専門学校で化学を学んだ):物化は大幅に短縮可能。法令は共通のため同様に時間がかかる
乙4取得済みで性消だけ受験する場合は、2〜3週間の集中学習で合格できることが多いです。ただし9品目の性状を正確に覚えることが必須で、「なんとなく覚えた」状態では引っかけ問題に対応できません。
乙1の難易度は「暗記量は少ない・ひっかけに注意」
乙1全体の難易度として、次のような特徴があります。
- 第4類(乙4)より取り扱う品目数が少ない(9品目)ため、性消の暗記量は乙4より少ない面もある
- ただし「無機過酸化物は水厳禁」という第1類固有のポイントを押さえないと性消で落ちる
- 法令は乙4と共通範囲が多いため、乙4合格者には有利
- 試験は4択形式で、「誤っているものはどれか」という問い形式が多く、全選択肢を正確に判断する力が問われる
乙1の問題集で合格ラインを確認する
危険物乙1 AI問題集では、法令70問・物化50問・性消100問の計220問を科目別に練習できます。答えのあとに根拠の法令が表示されるので、法令の条文とセットで理解できます。
科目ごとに「法令だけ」「性消だけ」と絞って練習することで、苦手な科目を集中的に対策できます。科目免除で性消のみ受験する方は、性消100問を中心に回してください。
問題集・試験種別の一覧は危険物取扱者の問題集まとめから確認できます。
出典:消防試験研究センター試験案内・消防法第13条の23・危険物の規制に関する政令

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