就労移行支援は儲かるか|収支差率と黒字化のための3つの条件

就労移行支援は「儲かる事業か」という問いへの答えは「3年目以降・定着率50%以上を維持できれば黒字化しやすい」です。開業から2年間は低い報酬(新規みなし)が続き、3年目以降に定着率に応じて報酬が大幅に上がる構造です。全国平均の収支差率は約5〜7%で、条件次第で安定した収益が見込めますが、成果連動型の報酬ゆえに就職率・定着率の管理が経営の鍵です。

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就労移行支援が儲かりやすい条件

就労移行支援の収益性は、次の3つの条件が揃って初めて安定します。

  1. 定着率50%以上を維持する:最高単価(1,210単位/日)が適用され、収入が大幅に増える
  2. 稼働率75〜85%を維持する:利用者の離脱・体調不良による稼働率低下を最小化する
  3. 定員20〜40人規模:人件費等の固定費を複数の利用者で分担することで収益性が上がる

逆に、定着率が低い(20〜30%未満:719単位/日)と、定員20人・稼働率80%でも月収入は約253万円にとどまり、固定費200万〜230万円を差し引くと収支はほぼトントンです。

収支差率の目安:全国平均は5〜7%前後

就労移行支援の全国平均収支差率(厚生労働省・令和3年度介護事業経営実態調査相当)は5〜7%前後と推計されます(障害福祉サービス経営実態調査)。ただし調査時点と2024年度改定後では単価が変化しているため、現在はやや改善している可能性があります。

比較のために他の障害福祉サービスの収支差率目安:

サービス種類 収支差率目安 特徴
就労移行支援 5〜7% 定着率連動型。高定着率で高収益
就労継続支援A型 4〜6% 最低賃金支払いが必要
就労継続支援B型 6〜9% 工賃が安い分コスト低め
生活介護 5〜8% 重度者対応で安定した利用者確保
放課後等デイサービス 7〜10% 子ども向け・需要旺盛

就労移行支援は他の障害福祉サービスと比べて収支差率は中程度ですが、定着率を高めれば報酬が連動して上がる仕組みが特徴です。

儲かりにくいケース

開業から2年間:新規みなしで報酬が低い

新規事業所は2年間、定着率「30〜40%未満(879単位/日)」が自動的に適用されます。最高単価(1,210単位/日)より単価が約27%低いため、開業から2年間は収支が厳しい時期が続きます。稼働率80%・定員20人で月収入は約310万円(3年目以降の最高単価なら約428万円)です。

就職率が低い

就職者がほぼいない場合(定着率5%未満:479単位/日)、定員20人・稼働率80%でも月収入は約169万円にとどまります。人件費が155〜200万円かかる中では赤字になりやすい状況です。就職率・定着率の向上なしに収支改善は難しく、事業所の質的改善が最優先課題です。

儲けを最大化するためのポイント

定着率向上に直結する3つの取り組み

  1. 企業との連携強化:ハローワーク・障害者就業・生活支援センターや企業の障害者雇用担当者との関係構築により、安定した雇用先を確保する
  2. 就職後フォローアップの徹底:就職後6か月以上の定着が報酬に影響するため、就職後も継続したサポートを行い、早期離職を防ぐ
  3. 利用者の特性に合った訓練内容:PC操作・ビジネスマナー・コミュニケーションスキルなど、実際の職場で活かせるスキルを訓練内容に取り入れる

定員と規模の経済

定員40〜60人(2〜3ユニット相当)の規模になると、管理者・サービス管理責任者の固定費を多くの利用者で分担できるため、一人あたりのコストが下がります。定員20人以下の小規模での収益化は可能ですが、中長期的には定員拡大による規模化が収益改善の有効手段です。

移行準備支援体制加算の取得

就職後6か月間のフォローアップを実施することで算定できる加算(1日あたり22単位)です。フォローアップは定着率向上にも直結するため、加算収入と定着率向上の両方を同時に追求できます。

就労移行支援の「儲かる/儲からない」まとめ

条件 収益性
開業から2年間 低い(新規みなし・低稼働率が重なる)
定着率50%以上・稼働率80%以上を達成 高い(月収入が開業時比で約38%増)
定着率20%未満が続く 低い(収支トントン〜赤字)
定員40人以上の規模 固定費比率が下がり収益性が改善

就労移行支援は「就職率・定着率という成果が報酬に直結する」事業であり、支援の質と経営成績が連動する珍しい構造です。支援の質を高めながら事業を続けることが、長期的な収益安定につながります。

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就労移行支援以外の福祉事業の収支情報は、福祉事業者向けツール一覧にまとめています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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