一般貨物自動車運送事業者と、令和7年4月以降の軽貨物運送事業者が行うドライバー教育には、「定期的な指導・監督(12テーマ)」と「初任運転者への特別教育」の2種類があります。雇い入れた時に行う初任運転者教育は、定期指導とは義務の発生タイミング・内容・時間の要件がすべて異なります。この記事では、2つの違いを一覧で整理し、初任教育で対応が必要な具体的な手順を説明します。
定期指導と初任運転者教育の違い、一覧で比べる
まず、2つの教育の違いを並べます。一般貨物の場合、輸送安全規則第10条が定期指導を、第10条の2が初任運転者教育を定めています(軽貨物は令和6年告示第1193号が準用)。
| 定期的な指導・監督(12テーマ) | 初任運転者への特別教育 | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 輸送安全規則 第10条 告示第1366号 別表第2 |
輸送安全規則 第10条の2 告示第1366号 別表第1 |
| 実施のタイミング | 3ヶ月ごと(全テーマを年1回以上やれば緩和あり) | 新たに雇い入れた時、または乗務させる前 |
| 対象 | 在籍するすべてのドライバー | 新たに採用したドライバー・新たに貨物運送に乗務させるドライバー |
| 内容 | 12テーマ(心構え・積載・過積載・危険物・疾病・安全装置 など) | 安全な運転方法・貨物の積載方法・運行規則 など(別表第1に詳細あり) |
| 時間要件 | 告示に時間要件なし | 実技(実際の乗務を通じた指導)あり。時間の規定ではなく内容の規定 |
| 記録の保存 | 実施日から1年間 | 実施日から1年間(輸送安全規則第10条の2の規定による) |
「定期指導を年1回以上やっているから初任教育は不要」とはなりません。2つは別の義務です。雇い入れ時には初任教育を、在籍中のドライバーには定期指導を、それぞれ行う必要があります。
初任運転者に当たるのは、具体的にどんなケース
「初任運転者」とは、新たに事業用自動車の運転者として雇い入れた者を指します(輸送安全規則第10条の2第1項)。ただし、実務上は以下のケースで判断に迷うことがあります。
初任教育が必要なケース
- 同業他社からの転職者(他社でドライバー経験があっても、自社では初任)
- 長期間ドライバー業務から離れていた者(期間の基準は法令に定めなし・運輸局またはトラック協会に確認)
- 普通自動車のドライバーとして採用したが、新たに大型車に乗務させる場合
- 内部異動で他部署から移った社員が事業用自動車に乗務する場合
初任教育が不要なケース
- すでに初任教育を受けており、引き続き同社で同種の車両に乗務している場合
- 定期指導の12テーマの対象として在籍中のドライバー(初任教育は済んでいる前提)
判断に迷う場合、運輸局・運輸支局の窓口や都道府県トラック協会(適正化実施機関)に確認することをお勧めします。過去の雇用歴や経歴に関係なく、「自社での業務開始時に行う教育」と位置づけると整理しやすくなります。
初任運転者教育で実施する内容(告示第1366号 別表第1)
告示第1366号の別表第1が、初任運転者への指導・監督の内容を定めています。定期指導の別表第2(12テーマ)より詳細な規定で、大きく2つの柱があります。
座学(知識の指導)で扱う項目
- 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
- 事業用自動車の構造上の特性、特に大型自動車特有の特性
- 貨物の正しい積載方法
- 過積載の危険性
- 危険物を運搬する場合に注意すべき事項
- 適切な経路の選択および道路・交通の状況に応じた安全な運転方法
- 危険の予知および回避
- 運転者の運転適性に応じた安全運転
- 交通事故が運転者に与える心理的影響
- 疾病が交通事故の要因となることの知識
- 安全性向上のための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
これを見ると、定期指導の12テーマ(別表第2)の内容と重なる部分が多いことがわかります。ただし、初任教育では、これらを「新たに乗務する前の段階で」まとめて実施するという位置づけです。
実地(実際の乗務を通じた指導)
別表第1は、座学に加えて「乗務員が事業用自動車の運転に習熟するための実際の乗務を通じた指導」を定めています。具体的な時間数の規定は、告示第1366号には明示されていませんが、乗務に習熟するために必要な期間・内容を事業者が判断して実施することが求められます。
トラック協会や各運輸局が作成する実務的な指針には、目安として定められている場合がありますので、初任教育を初めて実施する際は都道府県トラック協会に確認することをお勧めします。
初任教育の記録に残すべき項目
定期指導の記録と同様、初任運転者教育の記録も実施日から1年間の保存が求められます(輸送安全規則第10条第2項の準用)。記録に残す項目は、定期指導の記録と共通する部分が多くあります(輸送安全規則第10条の2の規定・詳細は運輸局またはトラック協会に確認することをお勧めします)。
- 実施日
- 実施者(指導を行った者の氏名)
- 対象の運転者の氏名
- 指導した内容(別表第1の項目を確認できる形で)
- 実地指導を行った場合は、その乗務の記録(乗務日・内容)
- 指導を受けた運転者の確認サイン(または確認印)
「初任」の記録は、当然ながら採用時に1回だけ作成するものです。年が変わっても古い記録が参照対象になることがある(雇い入れ後1年以内に巡回指導がある場合など)ため、採用後少なくとも1年間は手元に残しておく必要があります。
定期指導の記録と、初任教育の記録は分けて管理する
実務上、記録ファイルや台帳で管理する場合、「定期指導の記録」と「初任運転者教育の記録」を混在させると、巡回指導の際に確認が複雑になることがあります。
管理の方法として一般的なのは次の2つです。
- ドライバー別のファイルで一括管理:1人の運転者につき1冊のファイル(または1フォルダ)を作り、初任教育の記録を先頭に、定期指導の記録を順に綴じていく。
- 教育の種類別に分けて管理:「初任教育記録」「定期指導記録」の2フォルダ(または2冊の台帳)を別々に作り、どちらにも氏名・日付で索引できるようにする。
いずれの方法でも、巡回指導が来た際に「この人の初任教育はいつやったか」「12テーマは今年分全部揃っているか」を即座に取り出せる状態になっていることが重要です。
雇い入れのタイミングで指導が抜けないようにする
初任教育が漏れやすいのは、採用が急いでいるときや、繁忙期の人員補充のタイミングです。「乗務させてから初任教育をやる」という状態が、最も記録上の不備につながります。
新たにドライバーを採用した場合、乗務開始前に初任教育を済ませて記録を作成する、というルールを社内で明確にしておくことが、記録漏れを防ぐ最も確実な対策です。
採用人数が多い場合(新人を数名同時に採用する場合など)は、グループで座学を実施し、実地は個別に記録を作成するという進め方が現実的です。その場合でも、「誰が」「いつ」「何の指導を受けたか」が記録に残るようにする必要があります。
初任教育と適性診断を同時に進める
初任運転者には、指導・監督(初任教育)と並んで、適性診断を受けさせることも義務となっています(輸送安全規則第9条の3)。一般的な運行管理の流れでは、採用後の早い段階で適性診断の予約を取り、初任教育と並行して進める方法をとる事業者が多くあります。
適性診断の詳細(受けさせる診断の種類・タイミング・実施機関)については、別記事「運転者の適性診断、いつ・誰に・どの診断を受けさせるか。」で整理しています。
運送業 法定研修キット(12テーマ)について
定期指導の12テーマについては、研修資料・確認テスト・受講記録をブラウザで使える研修キットとして公開しています。初任教育の座学で扱う項目(別表第1)は、定期指導の12テーマと内容が重なる部分が多く、初任教育の資料としても参照いただけます。
運送業 法定研修キット(12テーマ)はこちら テーマ1(心構え)は無料でお使いいただけます。
定期指導の義務の概要・頻度・記録については「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。
出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第10条・第10条の2(e-Gov法令検索)、国土交通省告示第1366号 別表第1・別表第2


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