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運送事業者は労働安全衛生法に基づき、運転者に定期健康診断(年1回)を受けさせる義務がある。深夜業(22時〜翌5時の時間帯に業務がある場合)は年2回に増える。疾病を見落としたまま乗務させると事故リスクが高まるため、健康診断の結果に基づく就業判断も求められる。
定期健康診断は年1回、深夜業がある場合は年2回
労働安全衛生法第66条第1項は、事業者が労働者に対して医師による健康診断を実施することを義務づけている。頻度は次のとおり(労働安全衛生規則第44条・第45条)。
| 対象 | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般の運転者(日勤中心) | 1年に1回 | 安衛則第44条(定期健康診断) |
| 深夜業に従事する運転者 | 6か月に1回(年2回) | 安衛則第45条(特定業務従事者の健康診断) |
| 新たに雇い入れる場合 | 雇入れ時に1回 | 安衛則第43条(雇入れ時の健康診断) |
深夜業の定義は「午後10時から翌午前5時までの間に業務が1時間以上ある者」だ(労働安全衛生規則第13条第1項第2号ロ)。深夜配送・早朝便がある場合は深夜業の扱いになる可能性がある。
健康診断の検査項目は11項目
定期健康診断(安衛則第44条)で実施する検査項目は次のとおりだ。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量・赤血球数)
- 肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
- 心電図検査
医師が不要と判断した項目は省略できる規定がある(40歳未満で問題がない場合等)。ただし運転者の場合、脳・心臓疾患のリスクを把握するためにも可能な限り全項目を実施することが望ましいとされている。
健康診断の結果に基づいて就業判断を行う
労働安全衛生法第66条の5は、健康診断の結果を受けて、必要に応じて就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮等の措置を取ることを事業者に義務づけている。医師の意見聴取も必要だ。
脳疾患・心臓疾患・てんかん・睡眠時無呼吸症候群など、運転に支障をきたす可能性がある疾患が見つかった場合、適切な判断なく乗務させると事故が発生したときに事業者責任を問われる可能性がある。
疾病による事故は、近年増加傾向にある
国土交通省の事業用自動車事故統計(令和3〜4年度版)によると、疾病を起因とする重大事故(死者・重傷者が発生した事故)は年間50件前後で推移している。心臓疾患・脳疾患・てんかんが主な原因だ。正確な最新値は国土交通省の統計公表ページで確認されたい。
健康診断で数値の異常が見つかった場合、「問題ない」と思っても専門医への受診を促すことが必要だ。一般的な健康診断だけでは睡眠時無呼吸症候群(SAS)は発見されないため、いびき・日中の眠気・起床時の頭痛がある運転者には、SASのスクリーニング検査を別途受けるよう促す事業者も増えている。
国土交通省の健康管理指針で求められていること
国土交通省が策定した「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」では、法令上の最低義務に加え、次のような取組みを推奨している。
- 脳・心臓疾患のリスクが高い運転者(年齢・既往症・数値の異常)への重点的な確認
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニング
- 定期的な体重・血圧の自己測定を促す取組み
- 服薬している運転者への投薬内容の確認(眠気を誘発する薬剤等)
義務ではないが、事故を防ぐ観点から実践する事業者は多い。健康管理の義務(年1〜2回の健康診断)はあくまで最低限の基準と考えることが大切だ。
健康診断の費用は事業者が負担する
健康診断に要する費用は事業者が負担する(労働安全衛生法の義務であるため)。ただし、法律上明文化されているわけではなく、「必要な費用は事業者が負担することが適当」とする行政の解釈・通達に基づく。受診時間中の賃金(給与)の支払いは、会社のルールによるが、有給扱いにする会社が多い。
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出典:労働安全衛生法第66条・第66条の5(e-Gov法令検索)、労働安全衛生規則第43〜45条(e-Gov法令検索)、国土交通省「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」。作成:2026年10月。


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