短期入所の服薬管理研修。3確認の手順と家族持参薬の受け渡し方法。

短期入所の服薬管理研修。3確認の手順と家族持参薬の受け渡し方法。 短期入所

短期入所の服薬管理では、家族が持参した薬を施設が預かり、正しい利用者に正しいタイミングで投与する手順を全職員が共有します。服薬ミスの主要因は「3確認(氏名・薬種・服用時刻)の省略」と「薬袋の取り違え」です。基準第49条(第145条で準用)の事故防止義務をふまえ、服薬管理研修で確認すべき内容をまとめました。

服薬ミスの主要因は確認手順の省略と薬袋の取り違えにある

短期入所の服薬管理は通所サービスと異なり、宿泊中の夜間・早朝分の薬も施設が管理します。利用者ごとに薬の種類・服用時刻・形状が異なるため、ひとつの手順が省略されると取り違えが発生します。

服薬ミスが起きやすい場面を整理すると次のとおりです。

場面 主なリスク 未然防止のポイント
入所時の薬の受け渡し 薬袋の中身と指示書の不一致 家族と一緒に袋を開けて薬の種類・数を確認し、記録する
夜間の与薬 夜勤者が複数利用者分を一度に準備して取り違え 1人分ずつ準備・確認する。薬を一括してトレーに並べない
食後薬の与薬 食事介助と与薬が連続し確認を飛ばす 与薬前に必ず薬袋の氏名・薬種・時刻を声に出して確認
退所時の返却 飲み残し薬を別の利用者の袋に混入 返却時も入所時と同じく家族と共に数を確認して署名をもらう

表は当方が短期入所の服薬管理リスクを整理したものです。

基準第49条が事故の防止と報告を義務づけている

短期入所の基準第49条(第145条で準用)は、事故の発生防止・再発防止のための措置を講じること、事故が発生した場合は市町村・家族等に速やかに報告し、記録することを義務づけています。(出典:基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索))

解釈通知(障発第1206001号)は、「薬の与薬に関する事項」を運営規程の記載事項の一例として示しており、与薬手順を規程に明記することが望ましいとされています。(出典:解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日))

服薬ミスは事故として扱われるため、発生した場合は「事故報告書」を作成し、指定権者(都道府県・市)へ報告します。ヒヤリハット(与薬前に気づいた取り違え)はヒヤリハット記録として施設内で保管し、再発防止の材料にします。

与薬前の3確認(氏名・薬種・服用時刻)を手順書に明記する

与薬直前に次の3点を必ず声に出して確認します。習慣化するには手順書やチェックリストに明記し、新入職員研修と定期研修で繰り返し実施します。

  • 氏名の確認:薬袋の表面に記載された氏名と、目の前の利用者(または居室・名札)が一致しているかを確認する。同姓者がいる場合は生年月日もあわせて確認する
  • 薬種の確認:薬袋または仕切り袋に記載された薬の名前と、実際に取り出した薬(錠剤・粉薬・液体)が合っているかを確認する
  • 服用時刻の確認:「朝食後」「昼食後」「就寝前」など、薬袋に記載された服用タイミングと現在の時間帯が合っているかを確認する

夜間の少人数体制時は特に注意が必要です。複数の利用者分の薬を一度に並べて準備すると取り違えのリスクが高まります。1人分を準備・確認・投与してから次の利用者に移る「1人ずつの原則」を明文化してください。

与薬後は「誰に・何時に・何を・誰が投与したか」を記録します。電子記録または紙の与薬記録票を使い、記録もれがないようにします。

家族持参薬の受け渡しは入所時に家族立ち会いで確認する

短期入所では、家族が薬を持参する場合がほとんどです。入所時の確認手順を標準化することで、受け渡し時点での不一致を防ぎます。

入所時に家族と確認する事項:

  • 薬の種類と数(薬袋・お薬手帳の内容と実物が一致しているか)
  • 服用スケジュール(朝・昼・夕・就寝前・頓服の区分、与薬時刻の目安)
  • 粉砕・液体化の要否(錠剤を飲み込めない場合の対応)
  • 頓服薬の使用条件(「〇〇のときに使用する」の具体的な基準)
  • 飲み残しが発生した場合の取り扱い(退所時に返却するか、施設で廃棄するか)

確認後は「服薬管理票」に記録し、家族にも署名または押印をもらいます。薬の保管場所(施設の鍵のかかる棚、または冷蔵保管が必要な薬は冷蔵庫)も入所時に決めて記録します。

お薬手帳を預かれる場合は、コピーまたは写真撮影して施設で保管します。薬の情報は指導監査の際にも確認される書類のひとつです。

自己服薬の可否は服薬能力のアセスメントで判断する

一部の利用者は、自分で薬を管理・服用できる場合があります。自己服薬を認める場合は、事前にアセスメントを行い、支援計画に明記します。

自己服薬の可否を判断する視点:

  • 服用時刻を自分で把握・管理できるか(時計の読み取り・時刻の理解)
  • 薬の種類を間違えずに取り出せるか(視力・細かな作業の可否)
  • 一包化された薬を開封して服用できるか(手指の機能)
  • 服用を拒否したり、後で捨てたりするリスクがないか

自己服薬を認める場合も、職員が「服用を確認」する見守り体制を維持します。自己服薬中に残薬が増えた場合や、服用状況に変化があった場合は、看護職または医療機関に報告します。

服薬拒否が起きた場合は無理強いせず記録と医療職への報告を優先する

利用者が薬の服用を拒否した場合、強制的に投与することは身体的拘束にあたる場合があります。基準第37条第1項(第145条準用)は、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行ってはならないと定めています。

服薬拒否時の対応手順例:

  • ① 利用者に声かけし、嫌がっている理由を聞く(副作用・のどの痛み・気分不良など)
  • ② 時間を置いて(30分〜1時間後)再度促す
  • ③ 再度拒否された場合は、看護職または管理者に連絡する
  • ④ 医師の指示のある薬(特に抗てんかん薬・抗精神病薬)の場合は、当日中に主治医または処方医に連絡する
  • ⑤ 服薬拒否の状況と対応経過を記録する
  • ⑥ 家族に当日または翌日に連絡する

服薬拒否が続く場合は、薬の形状変更(錠剤から液体・粉砕への変更)や服用タイミングの見直しを医師に相談します。薬をジュースや食事に混ぜて飲ませる方法は、利用者が薬を飲んでいることを認識できない状態を作るため、倫理的に問題があります。医師・薬剤師の指示がある場合を除き、実施しないことが原則です。

介護職員が行える与薬の範囲と看護職との役割分担を明確にする

与薬に関して、介護職員が行える範囲には一定の制限があります。厚生労働省は、一定の条件下(利用者の状態が安定している・家族または本人が同意している・医師・薬剤師から指導を受けている等)で、介護職員が行える医療行為の一部を明確化しています。

施設として明確にしておくべき役割分担の例:

行為 介護職員 看護職員
内服薬の与薬(一包化・錠剤・液体) 条件付きで可(状態安定・研修受講済み) 可
坐薬の挿入 条件付きで可 可
点眼薬・点鼻薬の使用 条件付きで可 可
注射(インスリン等) 不可(医療行為) 可
経管栄養 喀痰吸引等研修修了者のみ可 可

上表は当方が厚生労働省の通知を参考に整理したものです。詳細は「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(医政局長通知)をご確認ください。

短期入所に看護職員が常勤・非常勤で配置されている場合は、注射・経管栄養・吸引などの医療行為は看護職が担当し、介護職は与薬記録の管理と報告を担当する体制を明確にします。夜間に看護職が不在の場合は、緊急連絡体制(オンコール)を事前に整備します。

服薬管理研修は年1〜2回・新入職員は採用後速やかに実施する

服薬管理は事故防止義務(基準第49条)の観点から、全職員が正確な手順を理解していることが求められます。研修は年1〜2回実施し、事故事例やヒヤリハットをもとに手順を見直す機会にします。

新入職員は採用後速やかに与薬手順の個別研修を実施します。夜間帯に1人で与薬を行う場面が生じる前に、先輩職員との同行実習を経ることが重要です。

研修では、実際の薬袋を模したサンプルを使った演習(「どの利用者の薬か」を読み取る訓練)が有効です。頭で手順を理解していても、実際に薬袋を見ながら3確認を口頭で確認できるかどうかをチェックすることで、手技の定着度を測れます。

服薬事故が発生した場合の報告手順については短期入所の事故報告・苦情対応研修もあわせて確認してください。

研修資料・確認テスト・記録様式は法定研修・訓練キット(短期入所版)でまとめて用意できます。

この記事は、障害者総合支援法に基づく基準(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日)の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。与薬の可否範囲については厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」もあわせて確認してください。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内も確認してください。作成:fufumumu_design

この記事の出典

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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