就労移行支援の定員規模と法人形態別収支差率、社会法人11.7%・営利法人2.6%の逆転

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業所の経営診断ツール(無料で試せます)

厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)では、就労移行支援の収支差率が社会法人11.7%・営利法人2.6%と逆転しています。放デイや短期入所では営利法人の方が高い収支差率を示しますが、就労移行支援では社会法人が最高水準という特殊な構図です。

法人形態別の収支差率と定員規模

法人形態 事業所数 平均定員 平均年収入 収支差額(千円) 収支差率
社会法人(他含む) 76件 9人 1,235万円 1,444千円 11.7%
NPO法人 32件 14人 2,065万円 1,824千円 8.8%
その他 52件 14人 2,510万円 3,891千円 15.5%
営利法人 136件 17人 4,129万円 1,066千円 2.6%

「その他」はn=52でサンプルが少なめですが、収支差率15.5%と最高水準です。一方、最多の136件(全体の46%)を占める営利法人の収支差率は2.6%と最低水準です。

「定員が大きいのに収支差率が低い」の理由

営利法人の平均定員17人は社会法人(9人)より大きいにもかかわらず、収支差率は2.6%と社会法人(11.7%)の約4分の1です。この逆転はなぜ起きているのでしょうか。

稼働率の差:就労移行支援の稼働率(WAM参考値)は全体で69.2%です。定員17人の営利法人が稼働率60〜65%で運営されている場合、利用者数は10〜11人程度です。これに対し、社会法人の定員9人で稼働率75〜80%なら7〜8人の利用者がいる状態です。絶対数は多くても、定員充足率の差が収支差率に影響します。

人件費率の差:営利法人は職員数を多く配置しているケースがあります。年収4,129万円の事業所で人件費率が68〜70%なら、人件費は2,808〜2,890万円です。一方、収支差率2.6%(差額1,066千円)は年収の2.6%に過ぎず、人件費率が70%を超えると収支差率がほぼゼロになります。

競争環境と価格・サービス競争:就労移行支援の営利法人は複数事業所を展開しているケースが多く、各事業所が競争的な環境で運営されています。新規利用者の確保コスト(広告・営業費用等)が高い事業者では、これが収支を圧迫します。

社会法人の就労移行支援が11.7%を維持できる理由

小規模・特化型の運営:社会法人の平均定員9人は7サービス就労移行支援の中で最小規模です。少人数での特化型支援(重度障害者・難病者等の専門支援)で、高い就職率・定着率を維持している事業所では、就職実績に連動した加算を確実に取得できます。

既存施設との一体的運営によるコスト按分:生活介護・GH等を運営している社会法人が、既存施設の職員・施設を活用して就労移行支援を提供するケースがあります。管理費・家賃等のコストを他サービスと按分することで、就労移行支援単体の費用負担を下げています。

就職実績に連動した加算の取得:就労移行支援は就職者数・定着率に応じた加算が整備されています。小規模でも就職実績が高い事業所では、これらの加算を確実に取得することで収入を増やしています。社会法人は福祉施設との連携・地域企業との関係から、利用者の就職先を確保しやすい環境があることも一因です。

「その他」15.5%が高い理由

就労移行支援の「その他」(n=52・収支差率15.5%)は定員14人・年収2,510万円という規模で最高水準の収支差率を示しています。「その他」は医療法人・学校法人・農業法人・株式会社(NPOでも社会法人でもない)等が含まれる区分です。

この中で特に高い収支差率を実現しているのは、福祉施設とは別の本業を持ちながら就労移行支援を副次的に運営している法人(医療法人・学校法人等)ではないかと推測されます。管理費・施設費を本業側で大部分を計上することで、就労移行支援単体の費用が低く見え、収支差率が高くなるケースが考えられます。

「その他」の15.5%は自事業所の目標水準としては参考になりますが、会計処理の違いが数字に反映されている可能性があるため、そのまま比較するには注意が必要です。

自事業所の収支差率を法人形態と比較する

就労移行支援を運営している場合、自事業所の収支差率を法人形態別の全国平均と比較することで、どのレベルにいるかを把握できます。

法人形態 全国平均(参考) 自事業所の収支差率
社会法人 11.7% (入力してください)
NPO法人 8.8% (入力してください)
営利法人 2.6% (入力してください)

営利法人で就労移行支援を運営している場合、全国平均2.6%を目安にします。全国平均を下回っている場合は稼働率・就職実績・加算取得の順に確認します。社会法人で運営している場合は11.7%が目安ですが、定員規模(社会法人は平均9人)の違いを考慮した上で比較することが重要です。

就労移行支援の収支差率を改善するための法人形態別の視点

営利法人の場合(平均2.6%):定員規模が大きい分、稼働率の改善余地が大きい。定員17人に対して利用者が10人以下であれば、まず利用者確保が最優先です。稼働率を75%以上(13人以上)に引き上げることで、収支差率は5〜8%台に改善できる可能性があります。

社会法人の場合(平均11.7%):定員9人という小規模が強みであり、専門特化型のサービス内容を強化し、就職実績を維持することが収支差率11%台を保つ条件です。定員を増やす場合は、稼働率の確保が伴わないと収支差率が低下するリスクがあります。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業所の経営診断ツール(無料で試せます)

出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。法人形態別の詳細は同調査の事業所別集計にもとづきます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
サービス共通福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました