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就労移行支援の稼働率(WAM参考値)は69.2%と、障害福祉7サービスの中で最も低い水準です。定員14人(全国平均)の就労移行支援事業所では、稼働率69.2%は「定員の約7割(9.7人)しか利用していない」状態を意味します。
では、稼働率を69.2%から80%に改善した場合、収支差率はどう変化するでしょうか。本記事では、全国平均データ(年収2,878万円・収支差率6.0%)をベースに試算します。また、稼働率を実際に引き上げるための手順も整理します。
就労移行支援の基本データ(令和6年度全国平均)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 事業所数 | 296件 |
| 平均定員 | 14人 |
| 稼働率(WAM参考値) | 69.2% |
| 年間収入(平均) | 28,784千円(約2,878万円) |
| 年間人件費(平均) | 18,476千円(約1,848万円) |
| 人件費率 | 64.2% |
| 減価償却費 | 628千円(2.2%) |
| 外注費・委託費 | 912千円(3.2%) |
| その他費用 | 7,026千円(24.4%) |
| 収支差額 | 1,741千円(約174万円) |
| 収支差率 | 6.0% |
年収2,878万円のうち人件費1,848万円・その他費用702万円・外注費91万円・減価償却費63万円を差し引くと、収支差額174万円(6.0%)になります。
稼働率改善による収支差率の変化試算
稼働率を上げると収入が増えますが、費用(人件費・外注費・減価償却費)の多くは固定的です。ここでは「人件費・その他固定費は変わらず、稼働率に応じて収入だけが変化する」という前提で試算します。
定員14人・年収28,784千円(稼働率69.2%)の場合、1稼働率1%の収入インパクトは次のとおりです。
稼働率1%の収入変化 = 28,784千円 ÷ 69.2% × 1% ≒ 416千円(約42万円)
| 稼働率 | 推計年収入 | 収支差額(試算) | 収支差率(試算) |
|---|---|---|---|
| 69.2%(全国平均) | 28,784千円 | 1,741千円 | 6.0% |
| 72%(+2.8pt) | 約29,950千円 | 約2,907千円 | 約9.7% |
| 75%(+5.8pt) | 約31,200千円 | 約4,157千円 | 約13.3% |
| 80%(+10.8pt) | 約33,310千円 | 約6,267千円 | 約18.8% |
稼働率69.2%→80%(10.8ポイント改善)で、年収は約4,526千円(約453万円)増加し、収支差率は6.0%→18.8%に大幅改善する試算です。人件費・固定費が変わらないため、収入の増加がほぼそのまま収支差額の改善につながります。
試算の前提と注意点
上記試算は「費用が固定」という単純化された前提です。実際には稼働率が上がると、次の費用変動も起きる可能性があります。
- 支援員・指導員の増員:利用者数が増えると、人員配置基準の維持のために非常勤職員を追加採用する必要が出るケースがあります。この場合、人件費が増加します
- 外注費の増加:利用者数増加に伴い、外部講師・プログラムの委託費が増える可能性があります
- 交通費・消耗品の増加:利用者が増えると、通勤交通費補助・訓練消耗品費等の変動費が増えます
これらの費用増加を考慮すると、実際の収支差率改善幅は試算より小さくなります。ただし費用が10〜15%程度増加しても、収支差率は12〜16%程度に改善できると推計されます。
稼働率69.2%から80%に改善するための手順
ステップ1:現状の稼働率の把握(月別)
月別の利用実績を集計し、稼働率の推移を確認します。稼働率が低い月(春・夏休み明け等)のパターンを把握します。就労移行支援は2年の利用期限があるため、利用者の卒業時期が重なると稼働率が急落することがあります。
ステップ2:新規利用者の確保ルートを特定する
就労移行支援の利用者獲得は、主に次のルートがあります。
- 相談支援事業所からの紹介
- 病院・クリニックからの紹介(精神科・心療内科)
- ハローワーク・福祉事務所からの紹介
- インターネット(ウェブサイト・口コミサービス)からの問い合わせ
- 既存利用者・卒業生からの口コミ紹介
現在どのルートからの利用者が多いか把握し、比率が低いルートを強化することが稼働率向上につながります。
ステップ3:体験利用・見学の機会を増やす
就労移行支援は「実際に見てみないと分からない」サービスです。体験利用(1〜数日間)を無料で受け入れ、利用者・家族が「ここで支援を受けたい」と思える環境を作ることが利用開始率を上げます。体験から本利用への転換率を月次で確認し、改善策を打ちます。
ステップ4:就職実績を「見える化」して信頼を高める
就労移行支援の利用者・家族が最も重視するのは「ここで就職できるか」という就職実績です。就職者数・職場定着率・就職先企業の業種等を事業所のウェブサイトや説明資料に明記することで、選ばれる事業所になれます。
就職実績は加算算定にも直結します。就職者数・定着率の向上は、加算収入の増加→収支差率の改善というサイクルを生みます。
ステップ5:利用者が2年で卒業するペースを管理する
就労移行支援は原則2年の利用期限があります。1年間に新規利用者が10人入っても、同時に10人が卒業すると稼働率は変わりません。稼働率を上げるには「新規入所数>退所数」を維持できる入所計画が必要です。四半期ごとに入退所のバランスを確認し、空き枠が増え始めたら早期に新規利用者の確保に動きます。
稼働率80%達成後にやること
稼働率80%を達成した後の収支差率改善余地はさらに大きくなります。稼働率80%(試算で収支差率18.8%)を維持した状態で、次のアプローチが可能になります。
- 就職者数の増加に伴う加算収入の最大化:就職実績が増えると就労定着支援との連携が強まり、就労定着支援加算の算定が可能になります。就労移行支援と就労定着支援の一体的提供で収入の複数化が実現します
- 定員増設の検討:稼働率80%が安定したら、定員を14人→20人に増設することで年収規模を拡大できます。ただし、支援の質の維持(就職実績)と同時に進めることが重要です
- スタッフの採用・処遇改善:収支差率が改善した分を職員の給与改善・研修費用に還元することで、スタッフの定着率・支援の質の向上→就職実績のさらなる向上という好循環を作ります
就労移行支援の収支差率は、稼働率を全国平均(69.2%)から80%に引き上げるだけで10ポイント以上の改善が見込める構造です。最初の一歩は「現在の稼働率を月別に把握すること」です。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標2023年度決算。収支差率の試算は全国平均データをもとにした概算であり、個別事業所の実績を保証するものではありません。

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