消防設備士 乙6の筆記試験には、基礎的知識(機械)という科目が5問あります。各科目40%以上の正解が合格条件なので、5問のうち2問以上を正解すると、この科目を通過できます(消防法施行規則第33条の11の2)。
この科目は、法令・規格の科目とは出題の性質が違います。消防法・施行令・施行規則・規格省令に条文として定められた内容ではなく、機械工学の基礎として広く使われる定義・公式・法則が出題されます。条文を覚えるのではなく、公式の意味を理解して数字をあてはめる解き方が中心です。
出題されるテーマは9つあります。この記事では、9テーマそれぞれのポイントと計算のしかたをまとめます。
作成:fufumumu_design(ふふ)/作成日:2026年10月3日/基礎的知識(機械)の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。試験の出題数・合格基準の根拠は消防法施行規則第33条の10・第33条の11の2に記載しています。
- 基礎的知識(機械)は5問。2問以上の正解でこの科目を通過できる
- 出題されるのは9つのテーマ
- 力のモーメントは「力×支点からの距離」で求める
- 応力は荷重を断面積で割り、安全率は基準強さを許容応力で割る
- ボイルの法則とシャルルの法則は、圧力・体積・温度の3通りの関係
- 金属の熱処理は4種類あり、目的がそれぞれ違う
- 応力-ひずみ線図は、比例限度から破断まで5段階で変化する
- イオン化傾向が大きい金属から先に腐食する
- 仕事は「力×距離」で、動力は「仕事÷時間」で求める
- 動滑車1個を使うと、引く力は荷重の半分になる
- 流体は管が細くなるほど速く流れる。密度は質量を体積で割る
- 計算問題は「どの法則・公式を使うか」を先に決める
- 問題集で9テーマを確認する
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基礎的知識(機械)は5問。2問以上の正解でこの科目を通過できる
乙6の筆記試験は全30問で、科目ごとに分かれています。基礎的知識(機械)は5問です。
| 科目 | 問題数 | 科目通過の最低正解数 |
|---|---|---|
| 法令(共通) | 6問 | 3問以上(6×40%=2.4 → 切り上げ3問) |
| 法令(類別) | 4問 | 2問以上(4×40%=1.6 → 切り上げ2問) |
| 基礎的知識(機械) | 5問 | 2問以上(5×40%=2.0 → ちょうど2問) |
| 構造・機能・整備(機械) | 9問 | 4問以上(9×40%=3.6 → 切り上げ4問) |
| 規格 | 6問 | 3問以上(6×40%=2.4 → 切り上げ3問) |
| 筆記全体 | 30問 | 18問以上(60%以上) |
根拠:消防法施行規則第33条の10(試験科目)・第33条の11の2(合格基準)
基礎的知識(機械)は5問中2問の正解で通過できます。一方、3問以上落とすと、他の科目の正解数や筆記全体の得点にかかわらず、この科目で不合格になります。構造・機能・整備(機械)(9問・4問以上必要)と一緒に、機械系の科目として対策しておくと効率がよくなります。
なお、実技(鑑別)は5問で60%以上(3問以上)が別途必要です。筆記と実技はそれぞれ独立した合格条件です(消防法施行規則第33条の11の2)。
出題されるのは9つのテーマ
基礎的知識(機械)では、以下の9テーマが対象です。
| テーマ | 出題の中心 |
|---|---|
| 力のつり合いと力のモーメント | モーメントの計算・てこのつり合い |
| 荷重・応力・ひずみ・安全率 | 応力の計算・フックの法則・安全率の意味 |
| 圧力と気体の性質 | ボイルの法則・シャルルの法則・ゲージ圧力 |
| 金属材料と熱処理 | 炭素鋼の特性・合金の種類・熱処理4種 |
| 仕事・動力・摩擦 | 仕事の原理・摩擦力の計算 |
| 応力とひずみの関係(応力-ひずみ線図) | 比例限度・降伏点・引張強さの順番 |
| 金属の腐食と合金の性質 | イオン化傾向・ガルバニック腐食 |
| てこと滑車 | 定滑車・動滑車の力の大きさ |
| 流体の流れと密度 | 連続の式・密度・液体中の圧力 |
5問の試験でテーマは9つあるので、すべてのテーマから1問ずつ出るわけではありません。どのテーマが出るかは試験ごとに異なるので、全体をひと通り把握しておく必要があります。
力のモーメントは「力×支点からの距離」で求める
力のモーメントは、ある点(支点)を中心に物体を回転させる働きを数値で表したものです。
モーメント(N・m)= 力(N) × 腕の長さ(m)
腕の長さとは、支点から力の作用線まで引いた垂直距離です。単位はN・mです。
物体がつり合う(動かない)条件は2つあります。
- すべての力の合計がゼロ(上向きの力の合計=下向きの力の合計)
- ある点のまわりのモーメントの合計がゼロ(右回りのモーメントの合計=左回りのモーメントの合計)
てこの計算は、このつり合いの条件で考えます。
例:支点から0.3mの位置に100Nの力がかかっているとき、モーメントは100N × 0.3m = 30N・mです。支点の反対側0.2mの位置でつり合わせるには、30N・m ÷ 0.2m = 150Nの力が必要です。
輪軸(半径の違う2つの円が同じ軸に固定されたもの)も、同じくモーメントのつり合いで考えます。大きい半径側に小さな力をかけると、小さい半径側の大きな荷重を動かせます。
上記の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。
応力は荷重を断面積で割り、安全率は基準強さを許容応力で割る
材料に外から力がかかると、材料の内部に応力が生じます。
応力(N/mm² または MPa)= 荷重(N) ÷ 断面積(mm²)
ひずみは、力を受けて変形した量を元の長さで割った値です。単位はありません。
ひずみ = 変形量 ÷ 元の長さ
フックの法則は、応力とひずみが比例する範囲で成り立ちます。この比例が成り立つ限界を比例限度と呼びます。比例限度の範囲では、縦弾性係数(ヤング率)= 応力 ÷ ひずみ の関係が成り立ちます。
安全率は、材料の基準強さ(引張強さなど)を、設計で使ってよい応力(許容応力)で割った値です。
安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力
安全率は1より大きい値をとります。安全率が2であれば、引張強さの半分以下の応力でしか使わない設計になります。
荷重の種類と静荷重・動荷重の違い
荷重の種類は次のとおりです。
| 荷重の種類 | 内容 |
|---|---|
| 引張荷重 | 材料を引き伸ばす向きにかかる力 |
| 圧縮荷重 | 材料を押し縮める向きにかかる力 |
| せん断荷重 | 材料をずらす(切り断つ)向きにかかる力 |
| 曲げ荷重 | 材料を曲げる向きにかかる力 |
| ねじり荷重 | 材料をねじる向きにかかる力 |
静荷重は一定の大きさで静的に加わる力、動荷重は時間とともに変化する力です。動荷重には、繰返し荷重(同じ大きさの荷重が繰り返しかかる)と衝撃荷重(短時間に急激にかかる)が含まれます。静荷重より動荷重のほうが、材料への影響が大きくなります。
ボイルの法則とシャルルの法則は、圧力・体積・温度の3通りの関係
気体の性質を問う問題では、次の3つの法則が基本になります。
| 法則 | 条件 | 関係 |
|---|---|---|
| ボイルの法則 | 温度が一定 | 圧力 × 体積=一定(P×V=一定) |
| シャルルの法則 | 圧力が一定 | 体積 ÷ 絶対温度=一定(V÷T=一定) |
| ボイル・シャルルの法則 | (変化する) | 圧力×体積÷絶対温度=一定(PV÷T=一定) |
絶対温度(K)は、セ氏温度(℃)に273を足した値です。27℃ = 300K です。
計算の例:1MPa・体積1Lの気体を、温度を変えずに2MPaに圧縮したときの体積は?
ボイルの法則:1MPa × 1L = 2MPa × V → V = 0.5L
圧力の単位については、次の関係を押さえておきます。
- ゲージ圧力 = 絶対圧力 − 大気圧(標準大気圧は約0.101MPa)
- 1MPa = 1,000kPa = 1,000,000Pa(1Pa=1N/m²)
パスカルの原理は、密閉した液体の一部に加えた圧力が、液体のすべての部分に同じ大きさで伝わる原理です。消火器の加圧用ガス容器や蓄圧式の構造を理解する上でも関連します。
上記の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。
金属の熱処理は4種類あり、目的がそれぞれ違う
金属を加熱・冷却して性質を変える処理を熱処理といいます。名前と目的の対応が問われます。
| 熱処理 | 目的 |
|---|---|
| 焼入れ | 硬さを増す |
| 焼戻し | 焼入れでもろくなった金属にねばり強さを与える |
| 焼なまし | 軟らかくし、内部のひずみを取る |
| 焼ならし | 組織を均一にする |
焼入れをすると硬くなりますが、同時にもろくなります。そのあとに焼戻しをして、硬さを保ちつつねばり強さを与えます。焼入れと焼戻しはこの順序で組み合わせて用いられます。
金属材料の種類と炭素鋼の特性
炭素鋼は、炭素の量が多いほど硬く強くなりますが、伸び(延性)は小さくなり、もろくなります。主な合金の組み合わせは次のとおりです。
| 合金の名前 | 主な成分 |
|---|---|
| 黄銅(真鍮) | 銅と亜鉛 |
| 青銅 | 銅とすず |
| ステンレス鋼 | 鉄にクロム(またはクロムとニッケル)を加えた合金 |
合金は一般に、成分の金属と比べて硬く強くなります。融点は成分の金属より低くなる傾向があります。
応力-ひずみ線図は、比例限度から破断まで5段階で変化する
軟鋼を引っ張ったときの応力とひずみの関係をグラフにしたものが、応力-ひずみ線図です。
変化の順番:比例限度 → 弾性限度 → 降伏点 → 引張強さ(最大応力)→ 破断
| 段階 | 意味 |
|---|---|
| 比例限度 | 応力とひずみが比例する限界(フックの法則が成り立つ上限) |
| 弾性限度 | 力を取り去ると元の長さに戻る限界 |
| 降伏点 | 応力がほとんど増えないのに急激に伸びる点(軟鋼に特徴的) |
| 引張強さ(極限強さ) | 材料が耐えられる最大の応力 |
| 破断 | くびれが生じて破断する点 |
弾性限度を超えると、力を取り去っても元に戻らない永久ひずみが残ります。降伏点を過ぎると変形が急激に進みます。
縦弾性係数(ヤング率)は、応力をひずみで割った値で、材料の変形しにくさ(剛性)を表します。比例限度の範囲でのみ、この値は一定です。
イオン化傾向が大きい金属から先に腐食する
異なる種類の金属が水分のある状態で接触すると、イオン化傾向の大きい(電気的に卑な)金属のほうが腐食します。これをガルバニック腐食(異種金属接触腐食)といいます。
イオン化傾向の大きい順(おおむね):
カリウム > カルシウム > ナトリウム > マグネシウム > アルミニウム > 亜鉛 > 鉄 > ニッケル > すず > 鉛 >(水素)> 銅 > 水銀 > 銀 > 白金 > 金
消火器に使われる金属(鉄・アルミニウム・銅・真鍮)が接触する場面では、上の順番でどちらが先に腐食するかを判断します。アルミニウムは鉄よりイオン化傾向が大きいので、鉄と接触した場合はアルミニウムのほうが腐食します。アルミニウムは表面に酸化皮膜ができるため単体では腐食しにくい性質がありますが、異種金属との接触では上の順番が優先します。
上記の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。
仕事は「力×距離」で、動力は「仕事÷時間」で求める
仕事・動力・摩擦は、力の大きさと動きの関係を数値で表すテーマです。
仕事(J)= 力(N)× 距離(m)
物体が動かなければ仕事はゼロです。壁を力いっぱい押し続けても、壁が動かなければ仕事はゼロになります。仕事の単位はジュール(J)です。
動力(W)= 仕事(J)÷ 時間(s)
動力(仕事率)は、単位時間あたりにする仕事の量を表します。単位はワット(W)で、1W=1J/sです。同じ量の仕事を短い時間でするほど、動力は大きくなります。
摩擦力は、物体が接触面に沿って動こうとするとき、または動くとき、運動に抵抗する向きに生じる力です。
摩擦力(N)= 摩擦係数 × 垂直抗力(N)
静止摩擦係数(止まっている物体を動かし始めるときの係数)は、動摩擦係数(動いている物体に対する係数)より大きくなります。荷物を動かし始めるときのほうが、動かし続けるときより大きな力が必要なのは、この違いによるものです。
上記の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。
動滑車1個を使うと、引く力は荷重の半分になる
滑車は力の大きさや向きを変えるために使います。定滑車と動滑車の違いを押さえておきます。
| 滑車の種類 | 力の大きさ | 引くひもの長さ |
|---|---|---|
| 定滑車(天井などに固定) | 荷重と同じ(変わらない) | 荷物が上がる距離と同じ |
| 動滑車1個(荷物と一緒に動く) | 荷重の1/2 | 荷物が上がる距離の2倍 |
動滑車を1個使うと必要な力は半分になりますが、引くひもの長さは2倍になります。仕事の量(力×距離)は変わりません。これを仕事の原理といいます。
滑車を組み合わせた場合も同様です。動滑車2個では力は荷重の1/4になりますが、引く距離は4倍になります。
てこも同じく、仕事の量は道具を使っても変わりません。力点を長くして小さい力で重いものを持ち上げても、力点が動く距離が長くなるため、仕事の量(力×距離)は一定です。
流体は管が細くなるほど速く流れる。密度は質量を体積で割る
液体や気体(流体)が管の中を流れるとき、管の断面積が小さい部分ほど流速が速くなります。これは連続の式(流量保存の法則)によるものです。
連続の式:A₁ × v₁ = A₂ × v₂(A は断面積、v は流速)
例:断面積が4cm²の管の流速が2m/sのとき、断面積が2cm²の細い部分の流速は?
4 × 2 = 2 × v₂ → v₂ = 4m/s
断面積が半分になると、流速は2倍になります。単位時間に流れる体積(流量)は変わりません。
密度と比重の定義は次のとおりです。
密度(kg/m³)= 質量(kg) ÷ 体積(m³)
比重は、ある物質の密度を4℃の水の密度(約1,000kg/m³)で割った値で、単位はありません。
液体の中では、深くなるほど圧力が大きくなります。
液体中の圧力(Pa)= 密度(kg/m³)× 重力加速度(m/s²)× 深さ(m)
上記の内容は一般的な機械工学の基礎知識に基づくものです。
計算問題は「どの法則・公式を使うか」を先に決める
基礎的知識(機械)の計算問題は、法則の名前と公式の対応を先に整理しておくと解きやすくなります。選択肢の数字を見て「どの公式を使えばその数字が出るか」を逆算する解き方も有効です。
計算でよく使う公式をまとめます。
| 公式 | 計算式 |
|---|---|
| モーメント | モーメント(N・m)= 力(N)× 腕の長さ(m) |
| 応力 | 応力(N/mm²)= 荷重(N)÷ 断面積(mm²) |
| 安全率 | 安全率 = 基準強さ ÷ 許容応力 |
| ボイルの法則 | P₁ × V₁ = P₂ × V₂(温度一定) |
| シャルルの法則 | V₁ ÷ T₁ = V₂ ÷ T₂(圧力一定) |
| ボイル・シャルルの法則 | P₁V₁ ÷ T₁ = P₂V₂ ÷ T₂ |
| 仕事 | 仕事(J)= 力(N)× 距離(m) |
| 動力(仕事率) | 動力(W)= 仕事(J)÷ 時間(s) |
| 摩擦力 | 摩擦力(N)= 摩擦係数 × 垂直抗力(N) |
| 連続の式 | A₁ × v₁ = A₂ × v₂ |
| 密度 | 密度(kg/m³)= 質量(kg)÷ 体積(m³) |
摩擦力の計算では、静止摩擦係数は動摩擦係数より大きい(止まっている物体を動かし始めるときのほうが、動いている物体を動かし続けるより大きな力が必要)という特性も押さえておきます。
問題集で9テーマを確認する
消防設備士 乙6の問題集(https://fufumumu-design.com/shobo-otsu6/)では、基礎的知識(機械)の9テーマについて確認済みの問題を収録しています。筆記の問題集は全問無料で使えます。
テーマごとに問題を解いていくと、解答の記録と苦手テーマが残ります。問題を解き終えたあとは、AIが作る問題(1日3問まで無料・買い切りで無制限)を使うと、確認済みの問題集には含まれていない角度からの出題に慣れることができます。
試験では9テーマから5問の出題なので、全テーマをひと通り確認してから弱いテーマを繰り返す進め方が、2問以上の正解を安定させる近道です。


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