粉末消火器の薬剤には3種類あり、成分によって適応できる火災の区分が変わります。A火災(普通火災)にも対応できるのはABC粉末だけで、BC粉末はA火災には使えません。試験では「どの粉末がどの火災に対応するか」「色の違い」「炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの違い」が問われます。この記事では、3種類の粉末の成分・色・適応火災と、現場での選び方を条文に沿って整理します。
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▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
粉末消火器の3種類の一覧
消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第28号・以下「薬剤規格省令」)は、粉末消火薬剤を第一種・第二種・第三種(および第四種・第五種)に区分しています。消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号・以下「規格省令」)第1条の2は、この粉末の種類に応じた消火器の区分を定めています。
| 種類 | 主成分 | 色 | 適応火災 |
|---|---|---|---|
| 第一種粉末(ABC粉末) | りん酸塩類等(第一りん酸アンモニウムが主体) | 淡紅色 | A・B・C火災 |
| 第二種粉末(BC粉末) | 炭酸水素ナトリウム(重曹) | 白色 | B・C火災 |
| 第三種粉末(BC粉末) | 炭酸水素カリウム | 紫色 | B・C火災 |
出典:消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令第3条〜第7条・消火器の技術上の規格を定める省令第1条の2(2026年10月確認)
第四種粉末(炭酸水素カリウムと尿素の反応生成物)・第五種粉末(その他)は薬剤規格省令上の区分として存在しますが、現在の国内市場では第一種・第二種・第三種の3種類がほぼすべてを占めています。試験では第一種・第二種・第三種の3種類を中心に押さえれば対応できます。
適応火災の識別表示は、A火災が白地に炎の絵(白)、B火災が黄地(黄)、C火災が青地(青)の絵表示で消火器本体に貼付されます(規格省令第8条第2号)。第一種粉末にはA・B・Cの3つの絵表示があり、第二種・第三種にはB・Cの2つのみ貼付されます。
ABC粉末がA火災に対応できる理由
りん酸塩類等(第一種粉末)は、熱分解によってメタりん酸(HPO₃)が生成されます。このメタりん酸が固体の燃焼面を被覆し、酸素の供給を遮断することで普通火災(A火災)の燃焼を止めます。
| 薬剤 | A火災への消火メカニズム |
|---|---|
| 第一種粉末(ABC) | 熱分解でメタりん酸を生成し燃焼面を被覆する |
| 第二種・第三種粉末(BC) | 被覆効果がなく、A火災の燃焼面を覆えない |
出典:消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(2026年10月確認)
炭酸水素ナトリウム・炭酸水素カリウムは熱分解で二酸化炭素と水蒸気を発生させ、火炎の燃焼反応を抑制する負触媒効果(ラジカル連鎖反応の阻害)によってB・C火災に対応しますが、固体表面を被覆する効果はありません。このため、木材・紙・繊維などの固体可燃物が燃えるA火災には対応できません。
試験では「BC粉末をA火災に使えない理由」が記述問題(鑑別)や選択問題の形で問われます。「A火災の燃焼面を被覆する効果がない」という点を根拠として押さえてください。
現場での選び方(ABCとBCの使い分け)
消防法施行令別表第二は、防火対象物の用途・構造・使用する危険物の種類と、各消火器の適応性を規定しています。現場での設置計画では、この別表第二を参照して適応性を確認します。
| 設置場所の例 | 想定される火災 | 選ばれる粉末 |
|---|---|---|
| 一般建物・事務所・住宅 | A・B・C | 第一種粉末(ABC) |
| 変電室・電気室(固体可燃物が少ない場所) | 主にB・C | 第二種または第三種粉末(BC)を選ぶ場合がある |
| 危険物(引火性液体)の貯蔵・取扱い場所 | B・C | 第一種〜第三種いずれも適応(別表第二で確認) |
出典:消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
一般的な建物では、A・B・Cすべてに対応できるABC粉末(第一種)が広く使われています。BC粉末(第二種・第三種)はA火災が起きにくい用途に絞って設置される場合がありますが、設置する際は施行令別表第二の適応性を確認したうえで選定します。
なお、設置義務がある防火対象物への消火器の選定は、施行令第10条・施行規則第6条・別表第三に基づく能力単位の算定と合わせて行います。設置基準の詳細は消火器の設置基準で整理しています。
炭酸水素カリウム(第三種粉末)の特徴
第三種粉末(炭酸水素カリウム)は第二種粉末(炭酸水素ナトリウム)と適応火災(B・C)が同じですが、消火性能が高い点で区別されます。
| 項目 | 第二種粉末 | 第三種粉末 |
|---|---|---|
| 主成分 | 炭酸水素ナトリウム(重曹) | 炭酸水素カリウム |
| 色 | 白色 | 紫色 |
| 適応火災 | B・C | B・C |
| 消火効果 | 標準 | 第二種より高い |
出典:消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(2026年10月確認)
外観での区別は色で行います。第二種粉末は白色、第三種粉末は紫色です。第一種粉末(淡紅色)とあわせて、3種類を色で識別できるようにしておくことが鑑別問題の対策になります。
国内市場では、A火災にも対応できるABC粉末(第一種)が主流で、第三種粉末は第二種より流通量が少ない状況です。試験では第三種粉末の「紫色・BC火災・炭酸水素カリウム」の3点を確認するパターンが多く見られます。
試験での出題パターン
粉末消火薬剤の種類と適応火災は、法令(類別)・構造・規格のいずれの科目でも出題されます。出題の形式は、選択肢から選ぶ問題と鑑別の記述問題の両方があります。
| 出題パターン | 正解のポイント |
|---|---|
| A火災に適応しない粉末はどれか | 第二種・第三種(BC粉末)。A火災の燃焼面を被覆できない |
| りん酸塩類等の粉末の色は何色か | 淡紅色(第一種粉末・ABC) |
| 炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの違いは何か | 色が白色と紫色で異なる。適応火災はどちらもBC。消火効果は炭酸水素カリウムが高い |
| 3種類の粉末を主成分・色・適応火災で整理せよ | 第一種(りん酸塩類・淡紅色・ABC)・第二種(炭酸水素ナトリウム・白色・BC)・第三種(炭酸水素カリウム・紫色・BC) |
| 第四種粉末の主成分は何か | 炭酸水素カリウムと尿素の反応生成物(出題頻度は低い) |
出典:消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令・消防法施行規則第33条の12(2026年10月確認)
よくある誤答は「炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムは適応火災が違う」です。どちらもBC火災で適応火災は同じであり、異なるのは色と消火効果です。この点を選択肢で引っかけるパターンに注意してください。
他の消火薬剤との適応火災の比較
粉末3種類を含む全薬剤のA・B・C火災への適応性を横断して確認します。消防法施行令別表第二と薬剤規格省令の内容に基づいた整理です。
| 薬剤 | A火災(普通) | B火災(油) | C火災(電気) |
|---|---|---|---|
| 第一種粉末(ABC) | ○ | ○ | ○ |
| 第二種粉末(BC) | — | ○ | ○ |
| 第三種粉末(BC) | — | ○ | ○ |
| 強化液(霧状) | ○ | ○ | ○ |
| 強化液(棒状) | ○ | — | — |
| 機械泡 | ○ | ○ | — |
| 二酸化炭素 | — | ○ | ○ |
| ハロゲン化物 | — | ○ | ○ |
出典:消防法施行令別表第二・消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(2026年10月確認)
粉末3種の中でA火災に対応できるのは第一種(ABC)だけです。第二種・第三種は同じBC火災に適応し、A火災には適応しない点が共通しています。この比較が試験で横断的に問われる場面があります。他の薬剤との適応火災の詳細は消火器の適応火災(A・B・C火災の区分)で整理しています。
まとめ
粉末消火薬剤の3種類は、第一種(りん酸塩類等・淡紅色・ABC火災)・第二種(炭酸水素ナトリウム・白色・BC火災)・第三種(炭酸水素カリウム・紫色・BC火災)です。A火災に対応できるのは第一種のみで、BC粉末には固体燃焼面を被覆する効果がないためA火災には使えません。第二種と第三種は適応火災が同じBC火災で、異なるのは色(白色と紫色)と消火効果(第三種が高い)です。試験では成分・色・適応火災の組み合わせと、「炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの適応火災は同じBC」という点が出題されやすいため、この3点をセットで押さえてください。
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