消防設備士 乙6の試験では、消火薬剤の種類・主成分・適応火災が規格(6問)と法令類別(4問)の両方で問われます。粉末消火薬剤だけで3種類あり、主成分の名称と適応できる火災の区分(A・B・C)の組み合わせが混同しやすい箇所です。この記事では、薬剤規格省令(消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令)と消防法施行令別表第二をもとに、各薬剤の主成分・消火原理・適応火災を整理します。
適応火災の区分(A普通・B油・C電気)の全体像は消火器の適応火災A・B・C。薬剤ごとの適応火災対応表で整理しています。消火器の種類と加圧方式の違いは消火器の種類と仕組み。加圧式と蓄圧式の違いを整理するを参照してください。
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▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
消火薬剤の種類一覧
消火器に使われる消火薬剤は、薬剤規格省令(消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令)によって種類が定められています。現行の消火器に充填される薬剤は大きく7種類に分類されます。
| 薬剤の種類 | 主成分 | 消火原理 | 適応火災 |
|---|---|---|---|
| 粉末(りん酸塩類) | 第一りん酸アンモニウム | 抑制・窒息 | A・B・C |
| 粉末(炭酸水素ナトリウム) | 炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム) | 抑制・窒息 | B・C |
| 粉末(炭酸水素カリウム) | 炭酸水素カリウム | 抑制・窒息 | B・C |
| 強化液 | 炭酸カリウム水溶液(アルカリ性) | 冷却・抑制 | A(棒状)・A・B・C(霧状) |
| 化学泡 | 硫酸アルミニウム+炭酸水素ナトリウム | 窒息・冷却 | A・B |
| 機械泡 | 界面活性剤(合成系・たん白系) | 窒息・冷却 | A・B |
| 二酸化炭素 | 二酸化炭素(CO2) | 窒息 | B・C |
| ハロゲン化物 | ハロン1301等 | 抑制 | B・C |
出典:薬剤規格省令・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
粉末消火薬剤はりん酸塩類・炭酸水素ナトリウム・炭酸水素カリウムの3種類があり、このうちA火災(普通火災)にも対応できるのはりん酸塩類のみです。炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムはB(油)とC(電気)の2区分に対応します。
粉末消火薬剤の3種類と主成分
粉末消火薬剤(ドライケミカル)は、乾燥した粉末状の薬剤を放射して燃焼の連鎖反応を断つ抑制消火と、粉末が燃焼面を覆うことによる窒息消火を組み合わせた方式です。薬剤規格省令では種類ごとに主成分と含有率が規定されています。
りん酸塩類(ABC粉末)
主成分は第一りん酸アンモニウム(NH4H2PO4)です。りん酸アンモニウムが加熱分解してメタりん酸(HPO3)が生成され、この物質が燃焼面に被膜を形成することでA火災にも対応できます。B・C火災への対応は他の粉末薬剤と同様です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 第一りん酸アンモニウム |
| 化学式 | NH4H2PO4 |
| 適応火災 | A(普通)・B(油)・C(電気) |
| 薬剤の色 | 淡紅色(ピンク) |
| 消火原理 | 燃焼連鎖の抑制+被膜形成による窒息 |
出典:薬剤規格省令第3条・第4条(2026年10月確認)
りん酸塩類はABC全区分に対応するため、家庭用・業務用を問わず最も広く普及しています。薬剤の色は淡紅色(ピンク)で、白色の炭酸水素ナトリウムと目視で区別できます。
炭酸水素ナトリウム(BC粉末・重炭酸ナトリウム)
主成分は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)です。重炭酸ナトリウム・重曹とも呼ばれます。加熱により二酸化炭素と水を放出しながら分解し、燃焼の連鎖反応を断ちます。A火災(普通火災)への適応はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム) |
| 化学式 | NaHCO3 |
| 適応火災 | B(油)・C(電気) |
| 薬剤の色 | 白色 |
| 消火原理 | 燃焼連鎖の抑制 |
出典:薬剤規格省令第3条(2026年10月確認)
炭酸水素カリウム(BC粉末)
主成分は炭酸水素カリウム(KHCO3)です。適応火災はB・Cの2区分で炭酸水素ナトリウムと同じですが、単位面積あたりの消火能力が炭酸水素ナトリウムよりも高いとされています。薬剤の色は紫色で、白色の炭酸水素ナトリウムと目視で区別できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 炭酸水素カリウム |
| 化学式 | KHCO3 |
| 適応火災 | B(油)・C(電気) |
| 薬剤の色 | 紫色 |
| 消火原理 | 燃焼連鎖の抑制 |
出典:薬剤規格省令第3条(2026年10月確認)
粉末3種類の比較
| 種類 | 主成分 | 色 | A火災 | B火災 | C火災 |
|---|---|---|---|---|---|
| りん酸塩類 | 第一りん酸アンモニウム | 淡紅色 | ○ | ○ | ○ |
| 炭酸水素ナトリウム | 炭酸水素ナトリウム | 白色 | — | ○ | ○ |
| 炭酸水素カリウム | 炭酸水素カリウム | 紫色 | — | ○ | ○ |
出典:薬剤規格省令・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
試験では「りん酸塩類のみA火災に適応する」「炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムはA火災に対応しない」という区別が出題されます。また、薬剤の色(淡紅色・白色・紫色)が鑑別問題で問われることがあります。
強化液消火薬剤の主成分
強化液消火薬剤の主成分は炭酸カリウム(K2CO3)の水溶液で、アルカリ性を示します。水よりも高い消火力を持ち、冷却効果に加えて再燃を防ぐ抑制効果もあります。薬剤規格省令では、炭酸カリウムの含有率と液性(アルカリ性)が規定されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 炭酸カリウム水溶液 |
| 液性 | アルカリ性(強アルカリ) |
| 消火原理 | 冷却+再燃防止(抑制) |
| 凝固点 | −20℃以下(水より低い) |
出典:薬剤規格省令第5条(2026年10月確認)
強化液の適応火災は、放射方式によって異なります。
| 放射方式 | 適応火災 | 理由 |
|---|---|---|
| 棒状放射 | A(普通)・C(電気) | 液体が棒状で放射されるため油火災(B)には不適(油が飛散して拡大する恐れ) |
| 霧状放射 | A(普通)・B(油)・C(電気) | 微細な霧状により油面に均一に作用できるためB火災にも対応 |
出典:消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
棒状放射の強化液がB火災に対応しない理由は、液体の勢いで燃焼中の油が周囲に飛散して火が広がるためです。霧状放射であれば細かい粒子が油の表面を覆うように作用するため、B火災にも適応します。この区別は試験の法令類別(4問)および規格(6問)の両方で問われる頻出ポイントです。
泡消火薬剤(化学泡と機械泡)の違い
泡消火薬剤はA・B両区分の火災に対応し、燃焼面を泡で覆うことによる窒息消火と冷却消火を組み合わせた方式です。泡の生成方式によって化学泡と機械泡の2種類に分けられます。
化学泡消火薬剤
化学泡は、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が化学反応を起こすことで泡を生成します。外筒に炭酸水素ナトリウム水溶液、内筒に硫酸アルミニウム水溶液を充填し、消火器を転倒させると2液が混合して反応します。この転倒させる操作が必要な点が特徴で、「転倒式」とも呼ばれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分(外筒) | 炭酸水素ナトリウム水溶液 |
| 主成分(内筒) | 硫酸アルミニウム水溶液 |
| 泡の生成 | 2液の化学反応(混合すると二酸化炭素が発生し泡になる) |
| 操作方式 | 転倒式(容器を逆さにして2液を混合) |
| 現状 | 新規製造は停止(既存のものが残存している場合がある) |
出典:薬剤規格省令(2026年10月確認)
機械泡消火薬剤
機械泡は、界面活性剤(合成系または天然たん白系)を水で希釈した薬剤を放射ノズルで空気と混合することで泡を生成します。化学反応に依存せず、機械的に空気を混入させて泡を作る方式です。現在の泡消火器の主流は機械泡式です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 界面活性剤(合成系・たん白系)の水溶液 |
| 泡の生成 | 放射時に空気を機械的に混入して泡化 |
| 操作方式 | 蓄圧式または加圧式(転倒不要) |
| 現状 | 現在の泡消火器の主流 |
出典:薬剤規格省令(2026年10月確認)
化学泡と機械泡の比較
| 区分 | 化学泡 | 機械泡 |
|---|---|---|
| 泡の生成方法 | 2液の化学反応 | 空気との機械的混合 |
| 主成分 | 硫酸アルミニウム+炭酸水素ナトリウム | 界面活性剤水溶液 |
| 操作 | 転倒させる必要がある | 転倒不要 |
| 適応火災 | A・B | A・B |
| 現状 | 新規製造停止 | 現行主流 |
出典:薬剤規格省令・規格省令(2026年10月確認)
化学泡の「転倒式」は試験の鑑別問題で操作方法として問われます。また「化学泡の2液の主成分は何か」という出題パターンでは、硫酸アルミニウムと炭酸水素ナトリウムの両方を正確に答えられる必要があります。
二酸化炭素とハロゲン化物消火薬剤
二酸化炭素とハロゲン化物はいずれもB・C火災に対応し、A火災(普通火災)には使用できません。どちらも消火後に残留物が残らない特性から、電気設備・精密機器のある場所での使用を前提として設計されています。
二酸化炭素消火薬剤
二酸化炭素(CO2)は、高圧ガスとして液化した状態で容器に充填されます。放射すると急激に膨張・気化し、酸素濃度を下げることで窒息消火します。消火後の汚損が少なく、電気設備火災に有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | 二酸化炭素(CO2) |
| 充填状態 | 液化ガス |
| 消火原理 | 窒息(酸素濃度の低下) |
| 適応火災 | B(油)・C(電気) |
| 残留物 | なし |
出典:薬剤規格省令・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
ハロゲン化物消火薬剤
ハロゲン化物(ハロン)は、フッ素・塩素・臭素などのハロゲン元素を含む有機化合物で、燃焼の連鎖反応を断つ抑制消火が主な消火原理です。代表的なハロン1301(CF3Br)・ハロン1211(CF2ClBr)はオゾン層破壊物質に指定されており、現在は新規製造・輸入が原則禁止されています。既存の設備での使用は一部継続されていますが、消火器については代替品(HFC系等)への移行が進んでいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主成分 | ハロン1301(CF3Br)等のハロゲン化物 |
| 消火原理 | 抑制(燃焼連鎖の遮断) |
| 適応火災 | B(油)・C(電気) |
| 現状 | 新規製造・輸入停止(オゾン層保護法・モントリオール議定書) |
| 残留物 | なし |
出典:薬剤規格省令(2026年10月確認)
二酸化炭素とハロゲン化物の比較
| 区分 | 二酸化炭素 | ハロゲン化物 |
|---|---|---|
| 消火原理 | 窒息 | 抑制 |
| 適応火災 | B・C | B・C |
| A火災 | 不適応 | 不適応 |
| 特徴 | 残留物なし・酸欠リスクあり | 残留物なし・オゾン層破壊のため新規製造停止 |
出典:薬剤規格省令・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
二酸化炭素消火器は密閉空間での使用時に酸素濃度が急激に下がるため、人がいる室内での使用に注意が必要です。この特性は試験の注意事項として問われる場合があります。
試験で問われる薬剤の識別問題パターン
消火薬剤の主成分・適応火災・特性は、規格(6問)・法令類別(4問)の両科目で出題されます。試験に出やすいパターンを整理します。
主成分を問うパターン
| 出題パターン | 正解 |
|---|---|
| りん酸塩類の主成分は? | 第一りん酸アンモニウム |
| 炭酸水素ナトリウムの別名は? | 重炭酸ナトリウム(重曹) |
| 強化液の主成分は? | 炭酸カリウム水溶液(アルカリ性) |
| 化学泡の2液の成分は? | 硫酸アルミニウムと炭酸水素ナトリウム |
適応火災を問うパターン
| 出題パターン | 正解 |
|---|---|
| 粉末消火薬剤でA火災に対応できるのはどれか? | りん酸塩類のみ |
| 強化液(棒状)の適応火災は? | A・C(B火災は不適応) |
| 強化液(霧状)の適応火災は? | A・B・C |
| 二酸化炭素消火器がA火災に使えない理由は? | 窒息消火のためA火災(固体の残り火)への効果が低い |
薬剤の色を問うパターン(鑑別)
| 薬剤の種類 | 色 |
|---|---|
| りん酸塩類(ABC粉末) | 淡紅色(ピンク) |
| 炭酸水素ナトリウム | 白色 |
| 炭酸水素カリウム | 紫色 |
出典:薬剤規格省令(2026年10月確認)
鑑別問題では、写真や図で示された容器ラベルの色や薬剤の色から種類を特定する問いが出ます。3種類の粉末薬剤の色の組み合わせをセットで覚えておくと確実です。
現行製造の有無を問うパターン
| 薬剤の種類 | 現在の状況 |
|---|---|
| 化学泡 | 新規製造停止(既存品は残存) |
| ハロゲン化物 | 新規製造・輸入停止(オゾン層保護法) |
| 機械泡・粉末・強化液・二酸化炭素 | 現行製造あり |
出典:薬剤規格省令・オゾン層保護法(2026年10月確認)
「現在製造されていない薬剤はどれか」という問いでは、化学泡とハロゲン化物の両方が対象になります。混同しないよう、それぞれの停止理由(化学泡は方式の問題、ハロゲン化物はオゾン層破壊)を合わせて覚えると整理しやすいです。
まとめ
消火薬剤の種類と主成分は次の通りです。粉末消火薬剤は3種類あり、りん酸塩類(第一りん酸アンモニウム・淡紅色)がABCに対応し、炭酸水素ナトリウム(白色)と炭酸水素カリウム(紫色)はBC対応です。強化液(炭酸カリウム水溶液)は棒状放射がA・C、霧状放射がA・B・Cと放射方式で適応火災が異なります。化学泡は硫酸アルミニウムと炭酸水素ナトリウムの2液混合(新規製造停止)、機械泡は界面活性剤系で現在の主流です。二酸化炭素は窒息消火でB・C対応、ハロゲン化物は抑制消火でB・C対応(新規製造・輸入停止)です。
試験では主成分の名称・適応火災の区分・薬剤の色・現行製造の有無がセットで問われます。特に「りん酸塩類のみA火災対応」「強化液は棒状ではB火災不適応」「化学泡の2液」の3点は頻出です。各薬剤の根拠は薬剤規格省令と消防法施行令別表第二にあります。
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