自動火災報知設備の受信機には、常用電源とは別に予備電源の設置が義務づけられています。停電が起きても設備の監視機能を維持するためです。消防設備士4類の試験では、「予備電源の容量は何分か」「受信機に使われるのは蓄電池か乾電池か」「停電時の切替は自動か手動か」といった問題が繰り返し出ます。本記事では予備電源の法的根拠・種類の違い・切替の仕組み・点検の方法を順に整理します。
予備電源とは何か
自動火災報知設備の電源は、建物の常用電源(交流電源・AC100V)から供給されています。しかし地震・落雷・電力事故など何らかの理由で停電すると、常用電源が遮断されます。このとき設備が止まってしまえば、火災を感知・警報する機能が失われます。
予備電源はこの問題に対応するための電源です。常用電源が断たれると自動的に切り替わり、設備の監視機能を継続させます。自動火災報知設備では受信機内部に内蔵されているのが一般的で、設備全体ではなく受信機の動作を維持することを主な目的としています。
消防法施行規則第24条第1号ヌは、自動火災報知設備に予備電源を設けることを定めています。予備電源は「オプション」ではなく、法令上の義務です。
容量60分の根拠
予備電源には容量の基準があります。「受信機の基準」(昭和56年消防庁告示第2号)では、予備電源の容量について次のように定めています。
監視状態を60分間継続した後、2回線の火災信号を同時に受信した場合に火災表示を行い、かつ地区音響装置を10分間鳴動させることができる容量以上であること。
この「60分」が試験で問われる数値です。ただし60分は「監視状態の継続時間」であり、その後さらに10分の鳴動を維持できる容量が求められます。単に「60分もつ電池」ではなく、監視60分+鳴動10分という構成で理解しておく必要があります。
| 動作フェーズ | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 監視状態の維持 | 60分以上 | 感知器回路の監視・表示灯の点灯継続 |
| 火災信号受信後の鳴動 | 10分以上 | 地区音響装置の鳴動・火災表示の継続 |
試験では「予備電源の容量は何分か」という問い方が多く、答えは「60分」です。「10分」は鳴動時間の基準であり、容量の基準と混同しないよう注意してください。
蓄電池と乾電池の違い
受信機の予備電源には蓄電池が使われます。乾電池は使われません。この区別は試験でも問われます。
蓄電池の特徴
受信機に内蔵される予備電源は、密閉型鉛蓄電池(シール型鉛蓄電池)が一般的です。蓄電池には次の特徴があります。
- 常用電源から充電されるため、停電前から満充電状態を維持できる
- 繰り返し充放電が可能
- 容量が大きく、60分以上の監視状態を維持できる
- メンテナンスとして電圧測定・充電確認・交換が必要
乾電池が使われる場所
乾電池は受信機の予備電源には使われませんが、感知器の一部(住宅用火災警報器や一部の自動試験機能付き感知器)に使われることがあります。ただし消防設備士4類の試験で問われる「自動火災報知設備の受信機の予備電源」については、答えは蓄電池です。
| 電源の種類 | 受信機予備電源 | 特徴 |
|---|---|---|
| 密閉型鉛蓄電池 | 使われる | 充電式・繰り返し使用可・容量大 |
| 乾電池 | 使われない | 使い切り・容量小・交換頻度が高い |
| ニッケル水素電池 | 一部の機器に使用 | 軽量・充電式・小型機器向け |
停電時の自動切替の仕組み
自動火災報知設備の予備電源への切替は自動で行われます。手動による操作は不要です。この「自動切替」という点も試験で問われます。
切替の流れ
常用電源が正常なとき、受信機は交流電源で動作しながら蓄電池を充電しています。停電が発生すると、受信機内部の整流回路が交流電源の消失を検出し、自動的に蓄電池からの直流電源に切り替わります。
この切替は通常0.5秒以内に完了するため、停電の瞬間に火災警報が一時的に止まるようなことはほとんどありません。
切替後の動作確認
停電が発生すると受信機の「電源灯」の点灯状態が変化します(常用電源灯が消灯し、予備電源使用中を示す表示に切り替わる機種もあります)。点検時には以下を確認します。
- 常用電源を遮断したとき、予備電源への切替が自動で行われるか
- 切替後も受信機の監視機能が継続しているか
- 60分以上の監視状態を維持できる容量が残っているか
予備電源の点検方法
消防設備の定期点検では、予備電源の状態確認が求められます。主な確認項目は次のとおりです。
外観確認
- 蓄電池のケースに膨れ・液漏れ・変形がないか
- 接続端子の腐食・緩みがないか
- 設置位置が正常か(受信機内部の固定が外れていないか)
電圧測定
充電完了時の電圧が規定値(蓄電池の種別による)を満たしているかを確認します。電圧が低い場合は充電回路の異常または蓄電池の劣化が考えられます。
容量確認(負荷試験)
常用電源を遮断して予備電源に切り替えた状態で、規定の負荷をかけながら監視状態を60分以上維持できるかを確認します。実際の現場では放電試験器を使って確認します。
交換時期の目安
密閉型鉛蓄電池の寿命は一般的に4〜6年とされています。メーカーや使用環境によって異なりますが、5年を目安に交換を検討するケースが多いです。ただし交換の判断はメーカー仕様を優先してください。
規格数値のまとめ
試験で問われる予備電源の数値を整理します。
| 項目 | 数値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 監視状態の継続時間 | 60分以上 | 受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号) |
| 火災信号受信後の鳴動時間 | 10分以上 | 同告示 |
| 切替方式 | 自動切替 | 受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号) |
| 電源種別 | 蓄電池(密閉型鉛蓄電池等) | 実務・告示の規定に基づく |
試験での出題パターン
消防設備士4類の筆記試験(規格科目)と実技試験(鑑別)で、予備電源に関する問題は以下の形で出ます。
パターン1:容量の数値を問う
「自動火災報知設備の受信機の予備電源は、監視状態を何分間継続できる容量が必要か」→ 60分。「10分」「30分」「120分」との混同に注意してください。
パターン2:切替方式を問う
「常用電源が断たれたとき、予備電源への切替は自動か手動か」→ 自動切替。手動操作は不要です。
パターン3:電源種別を問う
「受信機の予備電源に使われるのは蓄電池か乾電池か」→ 蓄電池。乾電池は受信機の予備電源として使われません。
パターン4:正誤判断
「予備電源の容量は、監視状態を30分継続できれば足りる」→ 誤り(60分)。「予備電源への切替は手動で行う」→ 誤り(自動切替)。このような誤った記述の中から正しいものを選ぶ問題も出ます。
まとめ
予備電源のポイントを3点に絞ります。
- 容量は「監視状態60分以上+鳴動10分以上」が基準(受信機の基準・昭和56年消防庁告示第2号)
- 受信機の予備電源は蓄電池(密閉型鉛蓄電池)。乾電池は使われない
- 停電時の切替は自動。手動操作は不要
試験では「60分」「蓄電池」「自動切替」の3つが特に問われます。この3点を確実に押さえておけば、予備電源の問題は対応できます。受信機の各部の構造についてはP型受信機の各部の名称と機能で詳しく解説しています。
規格科目で出てくる他の数値(地区音響装置の音圧90dB・回路抵抗50Ω以下など)については規格数値の覚え方にまとめています。整備の手順を確認したい場合は感知器・受信機の整備手順を参照してください。
出典
- 消防法施行規則第24条(自動火災報知設備の設置に関する技術基準)
- 受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号)
- 消防試験研究センター「試験科目及び問題数」(最新版はセンター公式サイトで確認してください)
本記事の内容は法令・告示の規定に基づいていますが、法改正や運用変更の可能性があります。最新情報は消防試験研究センターおよび所轄消防署でご確認ください。
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4類の試験概要・合格基準・甲種と乙種の違いは消防設備士4類の案内ページをご覧ください。


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