有料老人ホームの開設、届出と指定申請は何が違うか。

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有料老人ホームの開設には、老人福祉法に基づく「届出」と、介護保険法に基づく「指定申請」の2つの手続きがあります。届出はすべての有料老人ホームに必要な手続きで、施設を開設するときに都道府県知事に行います。指定申請は介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)として介護報酬を受け取るために必要な手続きで、届出とは別に行います。住宅型有料老人ホームは届出のみで、指定申請は不要です。

届出は老人福祉法第29条の義務、すべての有料老人ホームに必要

老人福祉法第29条は、有料老人ホームを設置しようとする者は都道府県知事に届け出なければならないと定めています。届出の期限は設置の日の1か月前とされています。

届出の対象になる「有料老人ホーム」は、老人(60歳以上の者)を入居させ、食事の提供・洗濯や掃除等の家事の供与・健康管理の供与・身体介護のいずれかのサービスを提供している施設です(老人福祉法第29条第1項)。

届出に必要な主な書類は以下のとおりです(都道府県によって様式や必要書類が異なります。開設する都道府県の担当窓口で確認してください)。

  • 届出書(都道府県指定の様式)
  • 施設の平面図・面積表
  • 設備の概要
  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 入居契約書
  • 前払い金(入居一時金)を受け取る場合は、保全措置の内容を示す書類
  • 法人の登記事項証明書(法人の場合)

届出後、都道府県は施設の設備や運営規程などを審査します。設備基準や重要事項説明書の記載事項などに不備がある場合は、指導が入ることがあります。

指定申請は介護保険法の手続き、介護付きにするために必要

「介護付き有料老人ホーム」という名称は、都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設だけが使える表示です(厚生労働省の「特定施設入居者生活介護サービスの提供」に関する取扱い)。

特定施設の指定を受けると、施設の職員が直接介護サービスを提供し(直接提供型)、介護報酬を受け取ることができます。入居者の介護保険の自己負担分は施設に支払われ、残り(9割または8割・7割)は保険者(市区町村)から施設に支払われます。

指定申請の窓口は都道府県(または一部の市区町村)です。申請には、人員基準・設備基準・運営基準を満たしていることを示す書類を提出します。主な書類は以下のとおりです。

  • 指定申請書(都道府県指定の様式)
  • 従業者の勤務体制と勤務形態一覧表
  • 組織体制図
  • 管理者・計画作成担当者の経歴書(資格証の写しを含む)
  • 施設の平面図・居室ごとの面積表
  • 設備の概要
  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 法人の登記事項証明書

指定の基準は「指定特定施設入居者生活介護の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令)に定められています。書類の整備と合わせて、実際の人員体制・施設の設備が省令の基準を満たしているかを確認することが申請の前提になります。

指定枠の制限がある場合、時期が限られることがある

特定施設入居者生活介護の指定は、都道府県が策定する「介護保険事業(支援)計画」に基づき、定員の総数を管理しています。すでに計画上の総数の枠が埋まっている都道府県や地域では、新規の指定申請を受け付けていない(指定の凍結)ケースがあります。

指定枠の状況は都道府県によって異なります。開業を検討している地域で新規の特定施設の指定が可能かどうかを、都道府県の介護保険担当窓口に事前に確認することが、計画の前提として必要です。指定が受けられない地域では、住宅型有料老人ホームとして開設する選択肢を検討することになります。

届出と指定申請の違いをまとめると

届出(老人福祉法第29条) 指定申請(介護保険法)
対象 すべての有料老人ホーム 介護付き有料老人ホームを希望する場合
窓口 都道府県 都道府県(一部は市区町村)
タイミング 開設の1か月前まで 開設前(審査に時間がかかるため早めに)
根拠法令 老人福祉法第29条 介護保険法第70条等
主な審査内容 設備・運営規程・重要事項説明書 人員基準・設備基準・運営基準
指定枠の制限 なし 都道府県の計画による制限あり

住宅型有料老人ホームは届出のみ、介護付きを目指す場合は届出に加えて指定申請が必要と覚えると整理しやすいです。

都道府県への事前相談が実質的に必須

届出・指定申請ともに、本申請の前に都道府県の担当窓口への事前相談が実質的に必要です。書類の様式・必要書類・手続きの順序は都道府県ごとに異なるうえ、施設の設計や運営規程が基準を満たしているかについて、事前に確認しておくことで手戻りを防ぐことができます。

特に、介護付きを目指して指定申請を行う場合は、(1)指定枠の残数の確認、(2)申請書類の準備期間、(3)審査・指定決定までの期間を逆算して、開業スケジュールに余裕を持たせることが重要です。

開業前に必要な手続きと費用の全体を確認するためにも、収支計画と合わせて準備を進めることをおすすめします。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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