「親の認知症中に財産を使い込んでいる」と兄弟から疑われた・または兄弟の一人が親の財産を使い込んでいると疑っている。財産の使い込み問題は認知症介護で起きやすいトラブルの一つだ。疑われた側の対処と、疑っている側の対処の両方を整理した。
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財産の使い込みトラブルが起きやすい背景
認知症介護で財産の使い込みトラブルが起きやすい理由は次の通りだ。
- 近くで介護している家族(主介護者)が親の口座を管理するようになる一方で、離れた兄弟には通帳の中身が見えない
- 成年後見人がいない状態で家族が財産を管理している(法的根拠が曖昧)
- 医療費・介護費用と「私的な支出」の区別がつきにくい
- 相続が発生してから「過去の使い込み」が問題になる
使い込みを「疑われた側」の対処
介護中に財産を管理していた家族が、後から使い込みを疑われた場合の対処は次の通りだ。
- 記録を整理して開示する:通帳の全明細コピー・介護費用の領収書・医療費の領収書・ATM明細を整理して相手に開示する。「何のためにいくら使ったか」が明確であれば疑惑を解消しやすい
- 記録がない場合は今からでも記録を始める:過去の記録がない場合は、今後の全ての収支を記録する。金融機関に「通帳の取引明細(過去5〜10年分)」を請求して整理する
- 弁護士に相談する:相手から内容証明郵便が届いた・法的手続きの予告をされた場合は、弁護士に相談する
使い込みを「疑っている側」の対処
兄弟の一人が認知症の親の財産を使い込んでいると疑っている場合の対処は次の通りだ。
- 親の金融機関に「取引明細の開示請求」をする:相続人の一人として親の取引明細(通帳コピー)の開示を金融機関に請求できる場合がある(金融機関によって対応が異なる)
- 法定後見申立てを行う:成年後見人が選任されると、後見人が財産調査を行い不正があれば対処できる。申立てできる人は4親等内の親族(民法第840条)
- 弁護士への相談:「不当利得返還請求」「不法行為による損害賠償請求」として法的手続きを検討する場合、弁護士に相談する
「使い込み」の法的な責任
親の財産を無断で使い込んだ場合、民事・刑事両面で責任が問われる可能性がある。
- 民事責任(不当利得返還・損害賠償):使い込んだ金額の返還を民事訴訟で請求できる
- 刑事責任(業務上横領・横領):後見人等の「財産管理を委任された立場」にある者が私的流用した場合は業務上横領(刑法第253条)が成立する可能性がある
トラブルを防ぐ事前の体制
使い込みトラブルを最初から防ぐための体制は次の通りだ。
- 成年後見人または任意後見人を立てて、第三者による監督体制を整える
- 家族全員で通帳の収支を共有できる仕組みを作る(コピーを全員に配付・表計算で共有等)
- 介護費用の口座と日常生活費の口座を分ける
この記事のまとめ
- 使い込みを疑われた側は「通帳明細・領収書・使途メモ」を整理して開示する
- 疑っている側は「取引明細の開示請求・後見申立て・弁護士相談」の3つの手段がある
- 使い込みは民事(返還請求)・刑事(業務上横領)の両面で責任が問われる可能性がある
- トラブルを防ぐには成年後見人・任意後見人を立てて第三者監督体制を整える
出典:民法第840条(後見申立て権者)、刑法第253条(業務上横領)、民法第703条(不当利得)・第709条(不法行為による損害賠償)
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