医師から「認知症の可能性が高い」「認知症と診断された」と言われたとき、本人(親)にどう伝えるかは難しい判断だ。告知することで本人が落ち込む・混乱する可能性もある一方で、告知しないまま本人が気づいていない状態で手続きを進めると後から問題になることもある。医師・専門機関の一般的な考え方と、家族が実際にどう伝えるかの具体的な方法を整理した。
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「告知すべきか、しないべきか」の医療の立場
厚生労働省「認知症施策推進大綱」(2019年)では、「本人が認知症であることを理解し、自らの意思で今後の生活設計(意思決定)ができるよう支援することが重要」という方向性が示されている。告知することを前提に、本人が前向きに備えられるよう支援する考え方だ。
主治医(専門医)が診断をどう伝えるかは医師の判断によるが、近年は「本人への告知を避ける」より「適切に伝えながら支援する」方向が主流になっている。「認知症かもしれない」という本人の不安を放置せず、適切に情報を伝えることが本人の尊厳を守るという考え方だ。
告知することで手続き上のメリットがある
本人が診断を知っていることには、手続き面でも重要なメリットがある。
- 任意後見契約・家族信託の設計に本人が主体的に参加できる:「自分の財産を誰にどう管理してほしいか」を自分で決める機会が生まれる
- 遺言書の作成を本人が主体的に行える:「誰に何を残したいか」を本人の意思で決められる
- 介護保険・成年後見の申請に本人が協力しやすくなる:「何のための手続きか」を理解しているため、拒否が減りやすい
伝え方のポイント
本人への告知は一度の「宣告」ではなく、「少しずつ理解を深める」プロセスとして捉える方が実態に即している。
告知時の注意点:
- 医師(専門医・かかりつけ医)から本人に説明してもらうのが最善。医師に「本人への告知の仕方について相談したい」と事前に伝える
- 「認知症です」という言葉だけで終わらせず、「これからできることがたくさんある」という見通しを一緒に伝える
- 告知直後に財産管理・後見・遺言の話を一度に始めると圧迫感が大きい。「今日は診断を聞いた日。手続きの話は少し時間を置いてから」という進め方が現実的
本人が「認知症ではない」と否定する場合
告知をしても「私は大丈夫」「認知症じゃない」と否定する本人は少なくない。これは「病識欠如」(自分の病気を認識できない認知機能の特性)が原因の場合もある。
否定された場合、家族は「そうだね、でもこういう準備だけは一緒にしておきたい」と、手続きを強制的に進めようとせず「一緒に備える」という枠組みで話す方が摩擦が少なくなることが多い。
主治医に「本人が告知を受け入れていない」と相談すると、「専門の心理士・ソーシャルワーカーとの面談」を設定してもらえる場合がある。
告知後に本人と一緒に決めると良いこと
本人が告知を理解した後、早めに本人と一緒に話し合っておきたい事項は次の通りだ。
- 財産の管理を誰に任せるか(家族・任意後見人候補)
- 介護が必要になったらどこで過ごしたいか(自宅・施設・子の家)
- 財産を誰にどう渡したいか(遺言の意思確認)
- 延命治療に関する意思(尊厳死宣言・ACP=アドバンス・ケア・プランニング)
この記事のまとめ
- 厚労省の認知症施策では「本人への告知→本人主体の生活設計支援」の方向性が示されている
- 告知することで任意後見・家族信託・遺言の手続きに本人が主体的に参加できる
- 告知は医師から本人に伝えてもらうのが最善。いきなり手続きの話をせず、一度時間を置く
- 本人が否定する場合は「一緒に備える」という枠組みで話す
- 告知後に「財産管理・介護の場所・遺言・延命意思」の4点を本人と話し合っておく
出典:厚生労働省「認知症施策推進大綱」(2019年)、厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(2018年)
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