法定後見が開始すると、後見人の約74%が専門職(司法書士・弁護士・社会福祉士)になる。これは最高裁判所の統計が示す現実だ。家族が後見人候補者として申立て書に名前を書いても、家庭裁判所が別の人物を選任することが少なくない。なぜ家族が後見人になれないのか、専門職が選任されるのはどういう場合かを整理する。
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専門職後見人が選任される割合は約74%(令和5年)
最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年)によると、後見等の開始審判において、後見人等に選任されたのは以下の通りだ。
| 後見人等の種別 | 割合(令和5年) |
|---|---|
| 司法書士 | 約34% |
| 弁護士 | 約21% |
| 社会福祉士 | 約15% |
| その他専門職(税理士・行政書士等) | 約4% |
| 親族後見人(家族・親戚) | 約26% |
専門職が選任される割合は2010年代前半には約50%だったが、家族後見における財産の横領・使い込みが問題化したことを受け、裁判所が専門職を選任する方向に慎重になってきた経緯がある。
家族後見が認められにくい3つのケース
家族が後見人候補者として名前を出しても、以下のようなケースでは専門職が選任されることが多い。
ケース1:本人の財産が多額(おおむね数千万円以上)
財産が大きいほど、横領・使い込みのリスクが高くなる。家庭裁判所は財産規模が大きい場合に専門職の選任を推奨することが多い。
ケース2:親族間に対立・紛争がある
兄弟間でお金の問題を巡って不仲になっている・誰かが「家族後見には反対」と主張しているケースでは、第三者的な立場の専門職が選任されることが多い。
ケース3:候補者に問題がある(過去の犯罪歴・多額の借金等)
後見人候補者に破産歴・犯罪歴・多額の借金がある場合、家庭裁判所は選任を認めない(民法第847条・後見人の欠格事由)。
家族後見が認められやすい条件
逆に、家族後見が認められやすいケースは以下の通りだ。
- 財産規模が比較的小さい(数百万円程度)
- 親族間に対立がなく、家族全員が候補者の選任に同意している
- 候補者に欠格事由がない
- 候補者が定期的に家庭裁判所に報告できる体制を整えている
これらの条件を満たしても、必ずしも家族後見が認められるわけではないが、可能性は高くなる。
家族後見が開始した後の義務と注意点
家族が後見人に選任された後は、以下の義務が発生する。
- 財産目録の作成:就任後1か月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出する
- 定期報告(年1回):毎年、収支状況・財産残高を家庭裁判所に報告する
- 重要な行為への許可申請:居住用不動産の売却・一定額以上の出費等は家庭裁判所の許可が必要
- 後見監督人への報告:後見監督人が選任された場合は定期的な報告が必要
家族後見は「自分の裁量で自由に動ける」と誤解されやすいが、実際には家庭裁判所の監督下に置かれる。報告を怠ったり、不適切な財産使用をしたりすると解任・損害賠償請求の対象になる。
専門職後見人の費用は誰が負担するか
専門職後見人が選任された場合、後見人報酬は本人(被後見人)の財産から支払われる。家族が後見人報酬を立て替えることはない。ただし本人の財産が消費されていくことになるため、相続財産の目減りという形で将来の相続人(家族)に影響する。
財産が少なく後見人報酬を支払えない場合は、市区町村に「成年後見制度利用支援事業」の補助を申請できる場合がある。費用の全部または一部を助成する制度で、利用条件は市区町村によって異なる。
この記事のまとめ
- 法定後見で専門職後見人が選任される割合は約74%(令和5年)
- 財産が多額・親族間に対立・候補者に欠格事由の3ケースで家族後見が認められにくい
- 家族後見が認められても財産目録・年次報告・裁判所許可の義務がある
- 専門職の報酬は本人の財産から支払われる
- 財産が少ない場合は「成年後見制度利用支援事業」の補助制度がある
出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年1〜12月)、民法第847条(後見人の欠格事由)・第857条・第859条、厚生労働省「成年後見制度利用促進基本計画」
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