2026年11月、岡山県内の12の金融機関が、成年後見(せいねんこうけん)に関する手続き書式を共通化したことが報じられました。成年後見とは、認知症などで判断能力が低下した方に代わって、財産管理や契約行為を行う制度です。これまで金融機関ごとに書式がバラバラで、後見人(こうけんにん)やその家族が窓口を回るたびに書き方を変えなければならない負担がありました。
金融機関ごとに書式が違う——これまでの現場の実態
成年後見制度を使って親の銀行口座を管理しようとすると、金融機関ごとに「所定の用紙」への記入を求められるケースが少なくありません。A銀行ではこの様式、B銀行では別の様式、という具合に、後見人が複数の口座を管理する場合は手間が重なります。家族が後見人になるケース(親族後見)でも、専門家(弁護士・司法書士など)が後見人になるケースでも、書式の煩雑さは共通の課題とされてきました。
法務省が公表している成年後見制度の利用状況データでは、2023年末時点で後見等(後見・保佐・補助)の利用者は全国で約25万人にのぼります。利用者数が増えるほど、書式の非統一による負担も積み上がる構造です。(参考:法務省「成年後見制度について」)
書式共通化で何が変わるのか
書式が共通化されると、後見人は一度書き方を覚えれば、参加している金融機関の窓口で同じ様式を使えるようになります。具体的には次のような変化が期待されます。
- 書式の書き直し・記入ミスによる差し戻しが減る
- 後見人側の書類準備の手間が軽減される
- 金融機関の窓口担当者も確認作業を標準化しやすくなる
岡山の取り組みは地域単位の動きですが、類似の連携は他の地域でも少しずつ広がりつつあります。全国統一の書式が整備されているわけではないため、お住まいの地域や取引金融機関の対応状況は、各金融機関の窓口に直接確認するのが現実的です。
後見手続きで金融機関の窓口に行く前に準備しておくこと
書式が共通化されても、窓口に持参すべき基本書類は変わりません。一般的に求められる書類として、以下が挙げられます。
- 後見登記事項証明書(法務局で取得・後見人であることを証明する書類)
- 後見人自身の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 被後見人(本人)の通帳・届出印
後見登記事項証明書は、法務局(本局)またはオンライン申請で取得できます。申請から交付まで数日かかる場合があるため、窓口に行く前に余裕をもって準備しておくと手続きがスムーズに進みやすいです。(参考:法務省「後見登記等ファイルの登記事項証明書について」)
書式共通化は「制度そのものの使いにくさ」を解消するわけではない
書式の統一は手続きの入口を整えるものですが、成年後見制度そのものが抱える課題——利用コストの高さ、一度始めると原則として取り消せない仕組み、後見人の報酬管理——は変わりません。認知症の症状が軽いうちであれば、家族信託(かぞくしんたく:家族間の契約で財産管理を委ねる仕組み)や任意後見(にんいこうけん:本人が判断力のあるうちに後見人を指定する制度)といった選択肢も検討できます。
どの制度が適しているかは、本人の判断能力の状態、財産の種類・規模、家族構成によって変わります。司法書士や弁護士、地域の成年後見センターに相談しながら、状況に合った方法を選ぶことが大切です。
認知症になる前に確認しておきたい手続きチェックシート(無料)
後見・家族信託・口座・遺言・施設入居……何から始めればいいか分からない方向けに、手続きの優先順位と確認事項をまとめたツールです。費用の目安も一緒に確認できます。
地域の金融機関の動きを、家族の手続き準備に活かす
岡山県の取り組みのように、地域単位で後見手続きの利便性を高める動きは今後も続く可能性があります。ただし、書式の共通化が進んでいるかどうかは地域や金融機関によって異なるため、実際に手続きを始める前に、取引している金融機関へ確認することをお勧めします。
成年後見制度の利用を検討している場合、家庭裁判所への申立てから審判確定まで数か月かかるケースもあります。口座の管理に困り始めてから動き出すと時間が足りなくなることがあるため、親の認知症の診断を受けた段階から、必要な手続きの流れだけでも把握しておくと準備がしやすくなります。


コメント