放課後等デイサービスの損益分岐点。黒字化に必要な稼働率と利用児童数の目安。

放課後等デイサービスの損益分岐点。黒字化に必要な稼働率と利用児童数の目安。 放課後等デイサービス・児童発達支援

放課後等デイサービスの損益分岐点は、毎月の固定費(人件費・家賃など)を収入で賄えるようになる稼働率のことです。全国平均の収支差率は5.8%(令和5年経営実態調査)と薄く、稼働率が少し下がるだけで赤字になります。この記事では、損益分岐点の計算の考え方と、黒字化までにかかる期間の目安を整理します。

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損益分岐点とは、固定費を月の収入で賄えるようになる稼働率をいう

損益分岐点とは、収入と費用がちょうど等しくなる点のことです。放課後等デイサービスの場合、費用の大部分は人件費や家賃など「利用者数が変わっても毎月ほぼ一定にかかる固定費」です。利用者が少ない月も人件費はほぼ変わらないため、一定の稼働率を下回ると毎月赤字が続きます。

損益分岐点の稼働率は、「固定費 ÷ 満員時の月収入」で計算できます。固定費の水準と収入単価によって変わるため、事業所ごとに異なりますが、定員10人・その他地域の標準的なコスト構成では、稼働率70〜80%あたりが損益分岐点の目安になることが多いです。

収入の中心は、利用した児童の人数×時間区分の単位数で決まる基本報酬

放課後等デイサービスの収入は、「利用した児童1人・1日ごと」に基本報酬が算定されます。単位数は平日(学校がある日)と学校休業日(夏休み・土日祝日)で異なり、1日の利用時間によって3つの時間区分に分かれます(定員10人以下)。時間区分の単位数・地域区分別の単価の詳細は放課後等デイサービスの収入の計算方法をご覧ください。

たとえばその他地域(単価10.00円)で、時間区分2(609単位)・1日平均8人来所(稼働率80%)・月22日営業の場合、基本報酬だけの月収入は次のように計算できます。

609単位 × 10.00円 × 8人 × 22日 = 約107万円

これに加算(送迎加算・加配加算など)が加わります。実際の収入は事業所の加算の取得状況によって大きく変わります。

なお、この記事では定員10人以下・主として重症心身障害児以外の事業所を前提としています。定員11人以上の事業所や重症心身障害児を主として通わせる事業所は単位数が異なります。

費用の大部分は人件費。開設当初は収入より費用が上回る

全国平均(令和5年経営実態調査・放課後等デイサービス・485事業所・令和4年度決算)の年間支出は約2,978万円、月換算で約248万円です。支出の中心は人件費です。

人員配置基準では、定員10人以下で「管理者1人(兼務可)・児童発達支援管理責任者1人(常勤専任)・児童指導員または保育士2人以上」が必要です(出典:児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の設備及び運営に関する基準)。これを満たすだけで常勤換算2〜3人分の人件費が固定で発生します。

開設後しばらくは、利用者が少なく収入が少ない月が続きます。利用者が定員に向けて増えていく過程では、収入よりも費用のほうが大きくなるのが通常です。この赤字の累積額が、開業時に準備しておく必要がある運転資金の目安になります。

定員10人・稼働率85%の試算では、開設後7か月目に黒字化する

放課後等デイサービス 収支シミュレーター(fufumumu-design.com/houdei-keikaku/)の初期値(定員10人・時間区分2・稼働率85%・その他地域・送迎加算月40回)で試算すると、開設後7か月目に月次黒字化します。それまでの赤字の累積(必要な運転資金の目安)も確認できます。

稼働率85%というのは「登録定員10人のうち、1日に実際に来所するのが平均8〜9人」というイメージです。開設直後はこの水準に達しない月が続くため、黒字化までの期間は事業所によって異なります。

全国平均の収支差率5.8%は、薄い黒字を意味する

厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」第26表(放課後等デイサービス・令和4年度決算・485事業所)によると、全国の平均的な事業所の数字は次のとおりです。

項目 金額(年間) 月換算
収入 約3,161万円 約263万円
支出 約2,978万円 約248万円
収支差 約183万円 約15万円
収支差率 5.8% —

収支差率5.8%というのは、月収入263万円のうち15万円程度が残るという水準です。稼働率が少し落ちたり、加算の算定をしていない事業所では、収支差がマイナスになります。定員10人・職員5人という平均的な規模でも、黒字の幅は決して大きくありません。

稼働率が5ポイント下がると、収支差率は半分以下になることがある

放課後等デイサービスのコスト構造は固定費の割合が高いため、稼働率の変化に対して収支が敏感に反応します。たとえば、稼働率が85%から80%に下がった場合、収入は約6%減りますが、費用(特に人件費)はほとんど変わりません。その結果、収支差は半分以下になることがあります。

逆にいえば、稼働率が高い月は収支差が大きくなり、稼働率の維持・向上が経営の安定に直結します。全国的に放課後等デイサービスの事業所数が増えている(令和7年1〜3月:22,748か所、前年比+6.8%。出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス等の最近の動向について」)ことを考えると、利用者の確保が経営の中心的な課題になっています。

令和8年6月以降に新規指定を受ける事業所は、基本報酬が約1.8%減算される

令和8年6月1日以降に新規指定を受ける放課後等デイサービスには、基本報酬に982/1000の減算が適用されます。出典:厚労省・こども家庭庁「令和8年度報酬改定における改定事項について(報告)」。

基本報酬が約1.8%減ることで、稼働率が同じ場合でも収支差はさらに薄くなります。開業を検討している方は、この減算を織り込んだうえで収支の試算をしておく必要があります。収支シミュレーターには「令和8年6月1日以降に新規指定を受ける事業所」の入力欄があり、試算に反映できます。

なお、重症心身障害児を主として支援する事業所や、離島・中山間地域に該当する事業所など、一部の配慮措置の対象については別の取り扱いがあります。自分の事業所が対象かどうかは、指定権者に確認してください。このシミュレーターではその配慮措置は反映されません。

損益分岐点を下げるには、加算の取得と固定費の抑制が中心になる

損益分岐点の稼働率を下げる(黒字化しやすくする)ためにできることは、大きく2つです。

1つ目は、加算の取得による収入の底上げです。放課後等デイサービスで算定できる主な加算には、次のものがあります。

加算の種類 単位数(1日・1人あたりの目安)
加配加算(経験5年以上常勤専従) 187単位
加配加算(常勤専従・上記以外) 152単位
加配加算(経験5年以上常勤換算) 123単位
加配加算(児童指導員等常勤換算) 107単位
加配加算(その他の従業者) 90単位
専門的支援体制加算 123単位
医療連携体制加算(Ⅰ) 32単位
送迎加算(片道) 54単位

出典:平成24年厚労省告示第122号(令和8年こども家庭庁告示第5号改正後)原文。加配加算・専門的支援体制加算は「利用した児童1人・1日ごと」に加算されます(事業所単位の算定ではありません)。

加配加算を1人算定できるだけで、1日あたり90〜187単位の収入が積み上がります。利用者が10人の日なら、加算1人で900〜1,870円/日の収入増です。月20〜22日で換算すると、月1.8万〜4.1万円程度の収入増につながります。

2つ目は、固定費の抑制です。特に家賃と人件費が大きい費用項目です。物件の選定時に月額家賃の水準を抑えること、開設当初の職員数を人員基準の最低限に絞ることが、損益分岐点を下げる直接の手段になります。ただし、職員数を減らすと加配加算が取れなくなる場合もあるため、収入と費用のバランスを試算しながら検討する必要があります。

試算はシミュレーターで確認できる

損益分岐点の稼働率や、黒字化までにかかる期間・必要な運転資金の目安は、事業所の定員・地域・加算の状況・人件費・家賃などによって変わります。放課後等デイサービス 収支シミュレーター(fufumumu-design.com/houdei-keikaku/)では、これらの条件を入力して3年分の収支・資金繰りを試算できます。無料で利用できる範囲があります。

あわせて読みたい

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出典

  • 厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」第26表(放課後等デイサービス・令和4年度決算・有効回答485事業所)
  • 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会第149回・令和7年9月25日資料)
  • はぐめいと「【法改正】令和6年4月以降、児童発達支援と放課後等デイサービスの基本報酬の時間区分の考え方」
  • conobell「放デイの時間区分と報酬単価表」
  • カイポケ「【2024年度報酬改定】放デイ・児発など障害児支援サービスの地域区分、1単位あたりの単価とは?」
  • 平成24年厚労省告示第122号(児童福祉法に基づく指定通所支援等の費用の額の算定基準)令和8年こども家庭庁告示第5号による改正後
  • 厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度報酬改定における改定事項について(報告)」(社会保障審議会障害者部会第155回資料)

作成者:fufumumu_design 作成日:2026-11-01
この記事の数字は公表資料から当方が読み取り・計算したものです。制度の解釈や試算の正確性は保証しません。開業・資金調達の判断は専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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