キッチンカーのメニュー選び。売れるものと収支が成り立つものの両立。

キッチンカーのメニューは、「自分が作れるもの」と「売れるもの」と「収支が成り立つもの」の三つが重なるところに決めるのが原則です。人気のメニューでも原価率が高すぎると利益が出ず、安く作れるメニューでも客単価が低すぎると出店日数・食数が足りません。この記事では、メニューを選ぶときの考え方と客単価の設定方法を解説します。

メニューを選ぶ三つの軸

メニューを選ぶ際に確認すべき軸は三つです。

メニュー選びの三つの軸
軸 確認する内容 引っかかりやすい罠
作れるか(技術・設備) 現在の腕前と車両の設備で実際に作れるか。1日50〜100食のペースで作れるか 自宅での試作は簡単でも、車内で連続して作るのはまったく違う
売れるか(需要) 出店予定のエリア・曜日・時間帯でその商品を買う人がいるか 「おしゃれだから売れる」は根拠にならない。似た業態の出店者の混み具合を確認する
収支が成り立つか(原価率・客単価) 原価率を計算して、目標の利益を出せる客単価と食数が現実的かどうか 「安くすれば売れる」という発想が原価率を圧迫する

原価率から逆算して客単価を決める

「いくらで売るか」を感覚で決めると、後から収支が合わないことに気づきます。先に原価率と目標利益から、最低限必要な客単価を逆算することが重要です。具体的な計算手順と業態別の目安は「キッチンカーの価格設定。客単価をどう決めるか・値上げを判断するタイミング。」で解説しています。メニューの候補が絞れたら、実際に計算して「この客単価が出店エリアで現実的かどうか」を確認してください。

業態ごとの原価率と客単価の傾向

メニューの種類によって、原価率と現実的な客単価の傾向が異なります。

業態別の原価率・客単価の目安(参考)
業態 原価率の目安 一般的な客単価の範囲 収支上の特徴
コーヒー・ドリンク類 20〜35%程度 400〜700円 原価が低く利益が出やすいが、1杯あたりの単価が低いため回転数が重要
クレープ・スイーツ 25〜40%程度 500〜900円 比較的原価が低め。トッピングで単価を上げやすい
から揚げ・揚げ物 35〜50%程度 500〜900円 食材費(鶏肉)の相場に左右される。揚げ油の消費も原価に含まれる
カレー・丼系 40〜55%程度 700〜1,200円 食材費がかかりやすく、客単価を上げないと収支が厳しい
サンドイッチ・弁当(仕込み済み) 35〜50%程度 600〜1,000円 仕込みに時間がかかる。廃棄リスクの管理が重要

これらは参考値であり、実際の原価率は仕入れ先・仕込み方法・廃棄率によって変わります。自分のメニューで実際に試作して原価を計算することが重要です。

「1品メニュー」か「複数メニュー」かの判断

開業当初は1品または2品に絞ることを勧める理由は、仕込み・在庫管理・販売オペレーションがシンプルになるからです。品数が増えると、各メニューの食材の仕込み量の管理・廃棄リスク・製造時間が複雑になります。

1品メニューが成立しやすい条件:

  • 1品の客単価が十分高い(700円以上)
  • リピート需要がある(出店先にいつも同じ人が来る)
  • 製造スピードが速く、1時間に30食以上作れる

品数を増やすタイミングは「1品目で収支が成り立つようになってから」が基本です。最初から品数を多くして、すべてのメニューの品質が落ちるよりも、1品を高品質で安定提供する方が評判につながります。

客単価を上げる3つの方法

値段を上げることへの抵抗感がある場合でも、次の方法で実質的な客単価を上げることができます。

  • セット販売:単品600円 → ドリンクセット850円など。1回の会計単価を上げる
  • サイズ展開:Sサイズ500円・Mサイズ700円・Lサイズ900円など。Mサイズを一番見やすい位置に置くことで自然にMを選ばれやすくなる
  • トッピング追加:基本価格+トッピング100〜200円。原価の低いトッピング(ソース・スパイス系)で単価を上げる

値下げは一度やると元に戻しにくく、原価率の悪化につながります。値段を上げる判断は早めに行い、最初からやや高めの価格設定でスタートして、「特別サービス期間」として割引する方が、後から値上げするより心理的な抵抗が小さくなります。

収支のシミュレーションに客単価を組み込む

メニューを変えたときの収支への影響は、キッチンカー開業 収支シミュレーターで客単価・食数・変動費率を入力して確認できます。売上計算の仕方については「キッチンカーの1日の売上、どう計算するか。」も参考にしてください。


記事中の原価率・客単価はいずれも参考値です。実際の数字は仕入れ先・メニュー・地域によって異なります。開業前に自分のメニューで実際に試算してください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

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