飲食店(個人事業主)の税金の計算。年商3,800万円・所得から消費税・所得税・住民税を試算する。

飲食店(個人事業主)の税金の計算。年商3,800万円・所得から消費税・所得税・住民税を試算する。 飲食店の開業

公庫の記入例(洋風居酒屋)の軌道後の年商は約3,864万円(月商322万円×12か月)で、年間の事業利益は約638万円になります。個人事業主として青色申告特別控除65万円を適用した場合、課税所得は約573万円です。この所得に対する所得税は約72万円、住民税は約57万円です。さらに年商が1,000万円を超えると原則として翌々年から消費税の課税事業者になり、簡易課税(飲食店は第4種・みなし仕入率60%)で計算すると納税額は約140万円になります。所得税・住民税・消費税の合計は約270万円で、毎月約22万円を積み立てておく必要があります。

飲食店(個人事業主)に課かる税金の種類

飲食店を個人事業主として経営する場合、主に4種類の税金が発生します。それぞれの課税の仕組みと時期が異なるため、資金繰りで混乱しないよう事前に把握しておくことが大切です。実際の税額の計算は税理士にご相談ください。

1つ目は所得税です。国税であり、事業から得た所得(売上から経費を引いた金額)に対して超過累進課税が適用されます。課税所得が高くなるほど税率が上がる仕組みです。確定申告(翌年3月15日まで)で精算します。

2つ目は住民税です。地方税であり、前年の所得に対して税率10%(均等割約0.5万円別途)が課かります。翌年6月から4期分割で納付します。所得税とは別に納付するため、見落としやすい税金です。

3つ目は消費税です。年商(課税売上)が1,000万円を超えた年の翌々年から課税事業者になります。飲食店の場合、簡易課税制度(第4種・みなし仕入率60%)を選択すると計算が簡単になります。翌年3月31日(原則)に申告・納付します。

4つ目は個人事業税です。地方税で、事業所得が290万円を超えた場合に課かります。飲食業(飲食店営業)の税率は5%です。(事業所得−290万円)×5%で計算し、翌年8月と11月の2回に分けて納付します。

税金の種類 課税対象 税率の目安 納付時期
所得税(国税) 事業所得(超過累進) 5%〜45% 翌年3月15日
住民税(地方税) 前年の所得 10%+均等割 翌年6月〜4期
消費税(国税・地方) 課税売上(年商1,000万超から) 実質4%(簡易課税) 翌年3月31日
個人事業税(地方税) 事業所得290万円超の部分 5%(飲食業) 翌年8月・11月

なお、国民健康保険料と国民年金保険料は税金ではありませんが、確定申告で社会保険料控除として所得から差し引くことができます。これにより所得税と住民税の課税所得が下がります。本記事では計算の複雑さを避けるため、社会保険料控除は含めずに試算しています。

課税所得の計算(年商3,864万円・経費を引く)

所得税と住民税の計算の出発点は「課税所得」です。課税所得は「売上 − 必要経費 − 各種控除」で求めます。

公庫の記入例(洋風居酒屋)の軌道後の数字で計算します。年商は月商322万円×12か月=3,864万円です。年間の必要経費は、原価(年商の35%)が約1,352万円、人件費(88.6万円×12か月)が1,063万円、家賃(20万円×12か月)が240万円、その他(47.5万円×12か月)が570万円で、合計約3,226万円になります。事業所得は3,864万円−3,226万円=638万円です。

ここから青色申告特別控除65万円(電子申告の場合)を引くと、課税所得は638万円−65万円=573万円になります。

注意が必要なのは返済元金の扱いです。融資700万円を元利均等10年で返済する場合、毎月の返済額は約6.6万円(年間約79万円)ですが、このうち元金部分は必要経費にできません。利息部分のみ経費算入が可能です(1年目の利息は年間約17万円程度、元金部分は約62万円)。そのため、事業所得638万円から返済全額を引いた「手取り」は約559万円ですが、税金は返済前の事業所得638万円をもとに計算されます。

月商 年商 年間経費合計 事業所得 課税所得(青色控除後)
247万円(立ち上がり77%) 2,964万円 2,911万円 53万円 0万円(赤字)
280万円 3,360万円 3,049万円 311万円 246万円
322万円(軌道後) 3,864万円 3,226万円 638万円 573万円
360万円 4,320万円 3,385万円 935万円 870万円

経費の計算方法:年間経費=原価(年商×0.35)+固定費年計(156.1万円×12か月=1,873万円)。青色申告特別控除65万円を差し引いて課税所得を算出。事業所得がマイナスの場合は損失繰越(翌年の所得と通算)を使うことで将来の税負担を下げられます。本テーブルは利息を経費算入せずに計算しています。

月商247万円(記入例の77%水準)は事業所得が53万円と小さく、青色控除65万円を引くと赤字です。立ち上がり期は所得税・住民税がほぼゼロになる一方、消費税は年商が1,000万円を超えれば将来的に課税対象になります。

所得税と住民税の試算(課税所得573万円)

所得税は超過累進課税です。課税所得の金額に応じて段階的に税率が変わります。国税庁が公表している速算表では、課税所得×税率−控除額で計算できます。

記入例水準の課税所得573万円は「330万円超695万円以下」の区分に該当します。税率は20%、控除額は42.75万円です。所得税=573万円×20%−42.75万円=114.6万円−42.75万円=71.85万円(約72万円)になります。これに復興特別所得税(所得税×2.1%)として約1.5万円が加わります。

住民税は課税所得×10%(均等割約0.5万円別途)です。573万円×10%=57.3万円になります。所得税・復興税・住民税・均等割の合計は約131万円です。

個人事業税は(573万円−290万円)×5%=283万円×5%=14.15万円(約14万円)になります。

課税所得 所得税 住民税(10%) 合計税額 手残り(課税所得−税額)
100万円 5万円 10万円 15万円 85万円
200万円 10.25万円 20万円 30.25万円 169.75万円
300万円 20.25万円 30万円 50.25万円 249.75万円
400万円 37.25万円 40万円 77.25万円 322.75万円
573万円(記入例水準) 71.85万円 57.3万円 129.15万円 443.85万円
700万円 97.4万円 70万円 167.4万円 532.6万円

所得税の速算式(国税庁・2026年時点):195万円以下は5%・控除0円、195万〜330万は10%・控除9.75万円、330万〜695万は20%・控除42.75万円、695万〜900万は23%・控除63.6万円。復興特別所得税(所得税×2.1%)と住民税均等割(約0.5万円)は含まず。個人事業税は除く。

課税所得573万円のケースで所得税と住民税を足すと129万円超になります。月収換算では約11万円を税金として毎月積み立てる計算です。税金を引いた後に融資返済(月6.6万円)も残るため、開業計画の段階から税金の資金繰りを想定しておく必要があります。実際の税額は社会保険料控除や扶養控除などで変わりますので、税理士に確認することをお勧めします。

消費税の計算(年商3,864万円・簡易課税)

年商が1,000万円を超えると、原則として翌々年から消費税の課税事業者になります。たとえば2026年の年商が1,000万円を超えると、2028年1月1日以降の課税期間が課税事業者になります。開業初年度(2026年)と翌年(2027年)は、特定期間(前年1〜6月の売上や給与)が条件を満たさない限り免税事業者のまま推移できます。

飲食店には「簡易課税制度」があります。これは実際の仕入にかかった消費税を計算する代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納税額を計算する方法です。飲食店は第4種事業に分類され、みなし仕入率は60%です。

記入例の年商3,864万円(税込)で計算します。売上消費税=3,864万円×10÷110=351.3万円、みなし仕入控除額=351.3万円×60%=210.8万円、納税額=351.3万円−210.8万円=140.5万円になります。年商の約3.6%が消費税の納税額になる計算です。

年商(税込) 売上消費税(×10/110) みなし仕入控除(60%) 納税額
1,100万円 100万円 60万円 40万円
2,200万円 200万円 120万円 80万円
3,300万円 300万円 180万円 120万円
3,864万円(記入例) 351.3万円 210.8万円 140.5万円
4,320万円 392.7万円 235.6万円 157.1万円

簡易課税・第4種(みなし仕入率60%)で計算。納税額は売上消費税×(1−0.60)=売上消費税×0.40で求められます。実際の仕入消費税が売上消費税の60%を超えている場合は、本則課税のほうが有利になります。どちらが有利かは開業前に税理士に相談することをお勧めします。

インボイス制度(2023年10月〜)では、適格請求書(インボイス)を発行できる登録事業者でないと、取引先が仕入税額控除を使えなくなります。個人向け飲食業(B to C)では影響が小さいケースが多いですが、法人客やデリバリープラットフォーム経由の取引がある場合は登録を検討する価値があります。

税金の支払いスケジュールと資金繰りへの影響

税金は稼いだ年に払うわけではなく、翌年以降に集中して支払うため、資金繰りに影響を与えます。各税金の納付スケジュールを整理しておきます。

所得税の確定申告は翌年2月16日〜3月15日です。この期間に1年分の税額を申告し、納付します。予定納税(前年の税額が15万円以上の場合、7月と11月に前払い)がある場合は分割になります。

住民税は翌年6月に最初の納付書が届きます。6・8・10月・翌年1月の4期に分けて納付します。所得税の確定申告後にしばらく間が空くため、「税金は払い終わった」と思って使ってしまうリスクがあります。

消費税は翌年3月31日(原則)に申告・納付します。前年に中間申告(年間の消費税額が48万円超の場合)が発生することもあります。

個人事業税は翌年8月と11月の2回に分けて納付します。都道府県から納税通知書が届きます。

税金の種類 納付時期 記入例水準の年額 月割り積立額の目安
所得税(復興税含む) 翌年3月15日 約73万円 約6万円/月
住民税 翌年6月〜(4期) 約58万円 約5万円/月
消費税(簡易課税) 翌年3月31日 約141万円 約12万円/月
個人事業税 翌年8月・11月 約14万円 約1万円/月
合計 約286万円 約24万円/月

記入例(課税所得573万円・年商3,864万円)水準では、4種類の税金の合計が年間約286万円になります。月に約24万円を税金用の口座に積み立てておく計算です。融資返済(月6.6万円)と合わせると月30万円以上が「キャッシュアウト固定費」として発生します。月商322万円の記入例水準でもギリギリ成立するため、売上が10〜15%落ちた月が続くと資金繰りが厳しくなります。

青色申告・経費計上で税負担を下げる仕組み

税金を適正に減らすための方法として、青色申告と経費計上の2つが基本です。過度な節税策は税務調査のリスクを高めるため、合法的な控除と経費計上の範囲にとどめることが重要です。

青色申告特別控除は最大65万円(電子申告・複式簿記の場合)を事業所得から差し引けます。税率20%の区分なら65万円×20%=13万円の節税効果があります。承認申請は開業から2か月以内に税務署に提出する必要があります。記帳ソフト(freee・マネーフォワード等)を使えば青色申告は難しくありません。

小規模企業共済は、個人事業主が老後の備えとして積み立てられる制度で、掛金の全額が所得控除になります。月最大7万円(年84万円)まで積み立てられます。課税所得573万円の場合、年84万円の掛金で所得税が約17万円(84万×20%)、住民税が約8万円(84万×10%)の合計25万円の節税になります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)も掛金が全額所得控除になります。個人事業主は月最大6.8万円(年81.6万円)まで拠出できます。

固定資産の減価償却は毎年の経費として計上できます。内装工事(耐用年数10〜15年)、厨房設備(耐用年数8年)、什器(耐用年数5〜8年)を法定耐用年数で割った金額を毎年の経費にできます。記入例では設備投資1,260万円(内外装200万円+厨房150万円+什器120万円)の減価償却費が経費に計上できます。

家族を従業員として雇用する場合、青色事業専従者給与として給与を経費に計上できます。家族への給与を事業の経費にするには届出が必要で、実際に業務に従事していることが条件です。

これらの節税策をすべて使うと課税所得が大幅に下がり、税負担が軽くなります。ただし、節税のしすぎは事業の収益力が見えにくくなるため、融資審査に影響する場合があります。税理士に相談しながら、節税と信用力のバランスを取ることが重要です。

開業初年度の消費税と免税事業者の判断

開業初年度は原則として消費税の免税事業者です(基準期間の売上がないため)。翌年も特定期間(前年1〜6月)の課税売上または給与が1,000万円以下であれば免税事業者のままです。記入例の月商322万円なら前年1〜6月だけで1,932万円となり1,000万円を大きく超えるため、2年目から課税事業者になる可能性が高い状況です。

免税事業者の期間は消費税を納付しなくてよいため、その分だけキャッシュが手元に残ります。ただし、インボイス制度の適用後は取引先企業が仕入税額控除を使えなくなるため、登録事業者になることを求められる場合もあります。

課税事業者になるかどうかの判断(簡易課税 vs 本則課税の選択も含む)は、実際の仕入れにかかる消費税額によって有利不利が変わります。開業2年目以降の選択届出は前年末までに行う必要があるため、早めに税理士と検討することをお勧めします。

飲食店の個人事業主が直面する税金の全体像まとめ

公庫の記入例(月商322万円・年商3,864万円)水準の飲食店を個人事業主として経営する場合、青色申告特別控除65万円のみを適用したときの課税所得は約573万円です。所得税・復興税・住民税・個人事業税・消費税の合計は年間約286万円になり、月に約24万円を積み立てておく必要があります。

税金を含めたキャッシュフローを開業前に把握するには、月次の収支シミュレーションが有効です。

月次の損益と年間の所得水準の試算は、飲食店の開業 収支シミュレーターで確認できます。実際の税額については税理士にご相談ください。

本記事の税率・控除額は2026年時点の国税庁の情報をもとにした概算です。個人の状況(扶養控除・社会保険料控除・その他控除)により実際の税額は大きく異なります。確定申告・納税については税理士または税務署にご相談ください。本記事の試算は参考値であり、税務上の正確な計算を保証するものではありません。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年10月確認。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

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