飲食店が月次の収益状況を把握するために確認すべき指標は、損益分岐点達成率・FL比率・客単価の3つです。この3指標を毎月の実績と比べることで、どこに問題があるかを素早く絞り込めます。公庫の記入例(洋風居酒屋)では損益分岐点月商240〜249万円・FL比率目標68%前後・客単価約2,500円が基準になります。3指標のうちどれが基準から外れているかを見ることで、「売れていないのか」「コストがかかりすぎているのか」「単価が下がっているのか」を特定できます。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター
月次経営指標① 損益分岐点達成率
損益分岐点達成率は「実際の月商 ÷ 損益分岐点月商 × 100」で計算します。100%を超えれば黒字、100%未満は赤字です。
| 実際の月商 | 損益分岐点月商(249万円)に対する達成率 | 月次損益(概算) |
|---|---|---|
| 322万円(記入例・軌道後) | 129% | +約47万円 |
| 280万円 | 112% | +約20万円 |
| 249万円 | 100% | ±0万円 |
| 220万円 | 88% | -約19万円 |
| 190万円(立ち上がり期77%) | 76% | -約38万円 |
損益分岐点の計算方法は「固定費 ÷ 限界利益率」です。公庫の記入例(固定費161.7万円:人件費88.6+家賃20+その他47.3+返済5.8・限界利益率65%)では161.7÷0.65≒249万円(概算)が損益分岐点になります。
月次の損益分岐点達成率が90%前後を継続している場合は、①固定費を下げられないか(家賃交渉・人員調整)、②限界利益率を上げられないか(原価率削減・客単価の見直し)の2点から改善策を検討します。
月次経営指標② FL比率
FL比率は「(食材原価 + 人件費) ÷ 月商 × 100」で計算します。公庫「小企業の経営指標調査」では一般飲食店の全体平均FL比率は約68%(原価率35%+人件費率33%)です。
| FL比率の水準 | 意味 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 60%以下 | 業界平均より大幅に低い。収益性が高い | 現状維持・集客投資に回す余裕がある |
| 60〜65% | 良好な水準 | 継続確認 |
| 66〜70% | 業界平均前後 | 継続確認・原価率か人件費率のどちらが高いかを確認 |
| 71〜75% | やや高い。改善が必要 | 原価率・人件費率の内訳を分解して改善策を検討 |
| 76%以上 | 高い。赤字リスクが大きい | コストの見直しを優先 |
FL比率が上がっている場合、原価率と人件費率のどちらが原因かを分けて確認します。原価率が上がっているなら食材仕入れの見直し・廃棄ロスの削減・メニュー構成の変更が対策です。人件費率が上がっているなら客数が計画を下回ってアルバイトシフトが余っている可能性があります(売上が下がると人件費率が上がる)。
FL比率の全国平均の詳細は、FL比率60%は公的な基準ではないで確認できます。
月次経営指標③ 客単価
客単価は「月商 ÷ 月次客数」で計算します。客単価の低下は、①1人あたりの注文数が減っている(追加注文が出ていない)、②単価の低いメニューが選ばれている、③ドリンクの注文率が下がっている、などのサインです。
| 月商 | 月次客数(1,625人・固定) | 客単価 | 記入例比較 |
|---|---|---|---|
| 322万円(記入例) | 1,625人 | 1,981円 | 基準 |
| 300万円 | 1,625人 | 1,846円 | -135円 |
| 280万円 | 1,625人 | 1,723円 | -258円 |
| 322万円(記入例) | 1,500人 | 2,147円 | 客数減・単価増 |
| 322万円(記入例) | 1,800人 | 1,789円 | 客数増・単価減 |
月商が同じでも、客数が多くて客単価が低い状態と、客数が少なくて客単価が高い状態では、オペレーション上の課題が異なります。客数が多くて単価が低い場合は「注文数を増やす」「ドリンクを薦める」「アップセルメニューを追加する」などの施策が効果的です。
3指標の組み合わせで問題を絞り込む
損益分岐点達成率・FL比率・客単価の3指標を組み合わせると、問題の原因を特定しやすくなります。
| 症状 | 損益分岐点達成率 | FL比率 | 客単価 | 考えられる原因 |
|---|---|---|---|---|
| 月次が赤字・FL比率は正常 | 100%未満 | 65〜70%前後(正常) | 正常 | 客数が足りない(売上不足)。集客施策を見直す |
| 月次が赤字・FL比率が高い | 100%未満 | 75%以上 | 低い | 食材コストか人件費が過剰。メニューの再設計・シフト調整が必要 |
| 月次が黒字・FL比率が高い | 100%以上 | 75%以上 | 正常〜高め | 今は黒字だが将来リスクあり。高い客単価・多い客数でカバーしているが、コスト構造は改善が必要 |
| 客単価の低下 | やや低め | 高め(人件費率増) | 低下 | 1人あたりの注文が減っている。ドリンク注文率・アップセル施策を確認 |
月次チェックを習慣化する3つのステップ
月次経営指標を定期的に確認するためのシンプルなステップを整理します。
第1ステップは、月末に「月商・食材原価・人件費」の3数字を集計することです。レジの売上日報、仕入れ伝票、給与台帳をもとに3つの数字を出します。食材原価は「期首棚卸し+当月仕入れ−期末棚卸し」で計算する方法が正確ですが、開業初期はレシート合計を原価の概算として使っても問題ありません。
第2ステップは、3指標を計算して前月・計画と比べることです。損益分岐点達成率・FL比率・客単価の3つを計算します。計画値と比べて10ポイント以上乖離している指標があれば、その原因を探ります。
第3ステップは、翌月の施策を1つ決めることです。「広告費を2万円増やして集客する」「メニューの1品を単価の高いものに差し替える」「アルバイトのシフトを週3時間削減する」など、1つの指標に対して1つの施策を決めて実行します。
月次の収支試算と損益分岐点の確認は飲食店の開業 収支シミュレーターで行えます。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 飲食店の開業 収支シミュレーター
本記事の数値は公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)および公庫「小企業の経営指標調査(2025年度)」をもとに計算しています。実際の損益は業態・立地・経営状況によって異なります。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年11月確認。


コメント