キッチンカーの損益分岐点は、「月の固定費 ÷(1 − 変動費率)」で計算できます。たとえば月の固定費が5万円・変動費率(食材費率+出店料率)が60%なら、損益分岐の月の売上は12.5万円、客単価900円・月20日出店なら1日約7食で黒字転換となります。ただしこの計算は「毎日同じ食数を売る」前提のため、出店日数が減る月や立ち上がり期には実際の数字を使って確認することが重要です。
この記事では、キッチンカーの損益分岐点の計算方法・出店日数・客単価が変わったときの影響、および立ち上がり期の読み方を解説します。
損益分岐点の計算式
キッチンカーのコストは「変動費(売上に比例して増えるコスト)」と「固定費(売上に関係なくかかるコスト)」に分けられます。
| 種類 | 主な費目 | 特徴 |
|---|---|---|
| 変動費 | 食材費・出店料(歩合制) | 売上が増えると比例して増える |
| 固定費 | 車両維持費・保険・駐車場代・通信費・借入返済・出店料(固定制) | 売上ゼロでもかかる |
損益分岐の売上を求める計算式は次のとおりです。
- 損益分岐の月の売上(円)= 月の固定費(円) ÷(1 − 変動費率)
変動費率とは、売上に対する変動費の割合です。食材費率が35%・出店料率が20%なら変動費率は55%です。
- 変動費率 = 食材費率 + 出店料率
出店料が固定制(月額)の場合は固定費扱いになります。出店料の扱い(歩合か固定か)は、計算の前に確認してください。
具体的な計算例
条件を設定して、損益分岐の売上と食数を計算してみます。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 客単価 | 900円 |
| 1日の出店日数(月) | 20日 |
| 食材費率 | 35% |
| 出店料(歩合制) | 売上の20% |
| 変動費率(食材費率+出店料率) | 55% |
| 月の固定費(車両維持費・保険・通信費・借入返済など) | 5万円 |
損益分岐の月の売上を計算します。
- 損益分岐の月の売上 = 5万円 ÷(1 − 0.55)= 5万円 ÷ 0.45 = 約11.1万円
月の売上11.1万円を達成するために必要な月の食数は次のとおりです。
- 月の必要食数 = 11.1万円 ÷ 900円 = 約124食
月20日出店なら1日あたりの損益分岐食数は次のとおりです。
- 1日あたりの損益分岐食数 = 124食 ÷ 20日 = 約6.2食
つまりこの条件では、1日7食以上売れば赤字にならない計算です。
出店日数が変わると損益分岐食数も変わる
固定費(月5万円)は出店日数に関わらずかかります。そのため出店日数が少ない月は、1日あたりの損益分岐食数が増えます。
| 月の出店日数 | 月の損益分岐売上 | 月の損益分岐食数 | 1日あたりの損益分岐食数 |
|---|---|---|---|
| 25日 | 111,111円 | 124食 | 約5食 |
| 20日 | 111,111円 | 124食 | 約7食 |
| 15日 | 111,111円 | 124食 | 約9食 |
| 10日 | 111,111円 | 124食 | 約13食 |
月の損益分岐売上(11.1万円)は出店日数が変わっても同じです。しかし出店日数が少ないほど、1日あたりに売らなければならない食数が増えます。雨天や体調不良で予定の出店日数に届かない月は、1日あたりの目標食数を引き上げて補う必要があります。
固定費が増えると損益分岐も上がる
借入の返済・駐車場代・自賠責以外の任意保険・車検費用など、月の固定費の合計が変わると損益分岐の売上も変わります。
| 月の固定費 | 損益分岐の月の売上 | 月20日出店での損益分岐食数(客単価900円) |
|---|---|---|
| 3万円 | 66,667円 | 約75食(1日約4食) |
| 5万円 | 111,111円 | 約124食(1日約7食) |
| 8万円 | 177,778円 | 約198食(1日約10食) |
| 12万円 | 266,667円 | 約297食(1日約15食) |
固定費に借入返済が加わると、月5万円の例では対応できていたものが、返済が月5万円加わると固定費が10万円になり、損益分岐の月の売上は約22.2万円・月20日出店で1日あたり約14食になります。開業資金に借入を使う場合は、返済額を固定費に加えた損益分岐の計算が必要です。
立ち上がり期は損益分岐より多く売れないことも多い
開業直後の1〜3か月は、固定出店先がまだ少なく、口コミも積み上がっていない時期です。計画上の損益分岐食数(たとえば1日20食)に対して、実際には1日10〜15食しか売れないという状況は珍しくありません。
この時期は赤字が続きますが、それ自体は計画の範囲内です。問題になるのは、「開業時の運転資金が立ち上がり期の赤字を吸収できるだけ確保されているか」です。
立ち上がりを12か月と仮定した場合のシミュレーションイメージは次のとおりです。
| 時期 | 1日の食数(目標40食に対して) | 月の売上目安 | 月の損益の目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜2か月目 | 28食(70%) | 504,000円 | 変動費277,200円+固定費250,000円=赤字約23,000円 |
| 3〜5か月目 | 34食(85%) | 612,000円 | 変動費336,600円+固定費250,000円=黒字約25,000円 |
| 6か月目以降 | 40食(100%) | 720,000円 | 変動費396,000円+固定費250,000円=黒字約74,000円 |
これは例示であり、実際の立ち上がりの食数は業態・出店場所・天候・季節によって異なります。計算を自分のケースで行う場合は、シミュレーターを使って月次で確認することをお勧めします。
FG比率と損益分岐の関係
変動費率(FG比率)が高いほど、損益分岐の売上が上がります。つまり「食材費が高い業態・出店料率が高い場所」ほど、黒字になるために必要な売上が大きくなります。
| 変動費率 | 損益分岐の月の売上 | 月20日・客単価900円での1日あたり損益分岐食数 |
|---|---|---|
| 50% | 100,000円 | 約6食 |
| 55% | 111,111円 | 約7食 |
| 60% | 125,000円 | 約7食 |
| 65% | 142,857円 | 約8食 |
| 70% | 166,667円 | 約10食 |
変動費率が60%を超えると利益率が低下するため、利益を増やすには「食材費を下げる(仕入れの見直し・メニューの整理)」か「出店料の低い場所を増やす」かの対策が必要になります。食材費率については「キッチンカーの原価率、飲食店と何が違うか。」で解説しています。
損益分岐の計算を自分のケースで確認する
ここで示した数字は例示であり、自分のビジネスの数字(客単価・出店日数・食材費率・出店料の形式・固定費の構成)を入れると結果が変わります。
キッチンカー開業 収支シミュレーターでは、客単価・1日の食数・月の出店日数・食材費率・出店料・固定費を入力することで、月次の収支・損益分岐・資金残高を計算できます。無料で使えます。
収支の全体像は「キッチンカーの収支、開業前に知っておくべき数字の全体像。」でまとめています。
記事中の計算はすべて例示であり、実際の収支を保証するものではありません。損益分岐点の計算は変動費と固定費の分類が前提であり、借入返済・税金・個人の生活費等を含めた計算は個別の状況によります。数字の確認は開業前に税理士または中小企業診断士に相談することをお勧めします。


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