訪問看護で難病・精神疾患の利用者を受け入れると、医療保険の算定はどう変わるか。

がん末期・難病・急性増悪など、厚生大臣が定める一定の疾患の利用者には、要介護認定があっても医療保険による訪問看護が優先されます。通常は週3回が上限ですが、難病等では週4回以上の訪問が認められ、基本療養費が5,550円から6,550円に上がります(看護師・令和8年告示第74号)。また1日2回以上の訪問には難病等複数回訪問加算(4,500円)が算定できます。

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医療保険が優先される利用者とは

訪問看護では、要介護・要支援の認定がある利用者は原則として介護保険が優先されます。ただし、次のような疾患・状態の利用者は、介護保険の認定があっても医療保険による訪問看護が使われます。

  • がん末期
  • 厚生労働大臣が定める疾病等(難病・神経疾患・膠原病など)
  • 急性増悪・退院直後などで特別訪問看護指示書が交付された場合
  • 精神科訪問看護の対象となる利用者(後述)

正確な疾患リスト・適用条件は令和8年告示第74号および厚生労働省の関連通知でご確認ください。

難病等は週3回の上限が外れる

医療保険の訪問看護は、原則として週3回を上限としています。しかし、厚生大臣が定める特別な疾患の利用者には週4回以上の訪問が認められます。

週4日以降は基本療養費の単価が上がります。

職種 週3日目まで(円/回) 週4日目以降(円/回)
看護師(保健師・助産師を含む) 5,550 6,550
准看護師 5,050 6,050

出典: 令和8年告示第74号

週4日以降の単価が高くなるため、難病等で高頻度の訪問が必要な利用者ほど1回あたりの収入が増える仕組みになっています。

難病等複数回訪問加算は1日2回以上の訪問で算定できる

難病等の利用者に1日2回以上の訪問看護を行った場合、難病等複数回訪問加算を算定できます(令和8年告示第74号)。

1日の訪問回数 加算額(1日あたり)
1日2回 4,500円
1日3回以上 8,000円

これは通常の1日1回訪問では発生しない加算です。医療依存度が高く、朝夕2回の訪問が必要な利用者がいれば、その日は4,500円が上乗せされます。

1か月の収入試算(難病利用者・週4回・1日2回訪問が2週ある場合)

難病等の利用者を月16回訪問し(週4回×4週)、そのうち2週は1日2回実施する場合の試算です(看護師・機能強化型なし・1か月28日で月初訪問+15回の2日目以降)。

項目 計算 金額(円)
管理療養費(月初日) 1回 7,710
管理療養費(2日目以降) 15回 × 3,010円 45,150
基本療養費(週3回目まで・12回) 12回 × 5,550円 66,600
基本療養費(週4回目以降・4回) 4回 × 6,550円 26,200
難病等複数回訪問加算(2週分) 2回 × 4,500円 9,000
合計 154,660

1人の難病利用者から1か月で約154,660円の収入になります。介護保険の利用者(同程度の訪問回数)と比較すると、医療保険優先となる利用者の収入単価が高いことがわかります。

※この試算は令和8年告示第74号の単価に基づく概算です。実際の算定は告示・通知の要件を満たした場合のみ可能です。

乳幼児の利用者がいる場合は乳幼児加算が上乗せされる

6歳未満の利用者への訪問看護では、基本療養費に1回あたり1,400円の乳幼児加算が加わります(令和8年告示第74号)。難病を抱える小児への訪問看護では、複数の加算が重なることがあります。

精神疾患の利用者は別の算定体系になる

精神疾患(統合失調症・気分障害など)を主たる傷病とする利用者への訪問看護は、「精神科訪問看護基本療養費」として別に定められた算定体系が適用されます。通常の基本療養費とは金額・要件・職種の条件が異なります。精神科訪問看護を行う場合は、令和8年告示第74号の精神科訪問看護に関する条項および関連通知を別途ご確認ください。

難病等の利用者対応は事業所の専門性と直結する

難病等の利用者を安全に受け入れるには、看護師の知識・経験と医師・ケアマネとの連携体制が必要です。しかし、対応できる体制が整えば収入面での貢献度は高く、特別管理加算(5,000円)やターミナルケア加算(25,000円)など他の加算との組み合わせも生まれます。

開業後に「どの疾患・状態の利用者に対応するか」を明確にしておくことが、収支計画の精度を上げます。

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参照した資料
厚生労働省告示第74号(訪問看護療養費・令和8年6月1日施行)。医療保険が優先される疾患の詳細は「厚生大臣が定める疾病等」(健康保険法第88条関連告示)でご確認ください。数値は令和8年10月時点。試算はあくまで概算です。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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