訪問看護の利用者確保。ケアマネジャーとの連携と紹介を受けるためのポイント。
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訪問看護ステーションの利用者は、開業後に自然に集まるわけではありません。介護保険の利用者の多くはケアマネジャー(介護支援専門員)が担当するケアプランを通じて紹介されます。医療保険の利用者は病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)や主治医からつながります。この記事では、新規開業後の利用者確保のために何をすべきかを、介護保険・医療保険の2つの経路別に整理します。
介護保険の利用者はケアマネジャー経由で紹介される
要介護・要支援の認定を受けた利用者が介護保険で訪問看護を利用するには、ケアマネジャーが作成したケアプラン(居宅サービス計画)に訪問看護が位置付けられる必要があります。つまり、ケアマネジャーが「この事業者に依頼しよう」と思わなければ紹介が来ません。
ケアマネジャーが訪問看護を選ぶ基準
ケアマネジャーが訪問看護ステーションを選ぶ際に重視するポイントは次のとおりです(ケアマネジャーへのヒアリング・業界情報をもとにした整理であり、各ケアマネジャーによって異なります)。
- 対応できる医療処置の範囲:点滴・褥瘡処置・ストーマ管理・気管カニューレ管理等に対応できるか
- 夜間・緊急時の対応体制:24時間対応(オンコール)の有無、緊急訪問に対応できるか
- 返答・連絡の速さ:電話・メールへのレスポンスが速いか
- 計画書・報告書の質と提出の正確さ:主治医への報告がきちんと行われているか(ケアマネは間接的に評価できる)
- 担当者会議への出席:ケアプランの変更時に出席できるか、意見を適切に言えるか
- 同一法人・系列の事業所:在宅ケアパッケージを提供する法人系のステーションは、すでに連携の基盤がある
ケアマネジャーとの連携のために開業前にやること
1. 近隣の居宅介護支援事業所に事前のあいさつ回り
開業直前(指定日の2〜4週間前)に、事業所周辺にある居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが在籍する事業所)を訪問します。「○月○日から開業します。こういう対応が得意です。よろしくお願いします」という挨拶をするだけで、最初に頭の中に入る確率が上がります。事前に電話でアポを取り、1か所あたり15〜30分の短い挨拶にとどめるのが基本です。
2. 紹介資料(事業所案内)を準備する
ケアマネジャーに渡す事業所案内(A4・1〜2枚)に次の情報を入れます。
- 対応できる医療処置の一覧(点滴・褥瘡・カテーテル・人工呼吸器・ストーマ等)
- スタッフの専門性(認定看護師・専門看護師がいる場合はその分野)
- 24時間対応(オンコール)の有無
- 連絡先(電話番号・FAX・メール)と対応可能な時間帯
- 管理者の名前と資格
「何でもできます」よりも「点滴・褥瘡・気管切開管理が得意です」のように得意分野を絞った方が、ケアマネジャーの記憶に残りやすくなります。
3. 緊急時の連絡先を明確に伝える
24時間対応を取る場合は、夜間・休日でも連絡できる専用の電話番号を事業所案内に明記します。「夜でも電話できるか分からない」という不安を持たれると紹介を躊躇される理由になります。
開業後に連携を続けるための実践
担当者会議に積極的に出席する
ケアプランの新規作成・変更時に行われる「サービス担当者会議」に出席することで、ケアマネジャーと直接顔を合わせて信頼関係を築けます。担当者会議への出席は省令で求められている場合もあるため(介護保険の指定訪問看護の場合)、原則として欠席しないことが基本です。参加できない場合は事前に理由を伝え、書面で意見を送ることが次善の対応です。
計画書・報告書を丁寧に送付する
訪問看護計画書・報告書は主治医だけでなく、ケアマネジャーにも写しを送付します(省令に基づく義務)。記載が具体的で読みやすい報告書は「このステーションはしっかり見ている」という評価につながります。
早いフィードバック
ケアマネジャーから利用者の状態変化(入院・転倒・体重変化等)の情報を受けた場合は、速やかに訪問看護側の観察結果を返します。フィードバックが遅い事業所は「連携しにくい」という評価を受けるリスクがあります。
医療保険の利用者はMSW・主治医が窓口
別表第7の難病患者・退院直後の在宅移行患者・精神科訪問看護等、医療保険で訪問看護を利用する方は、介護保険のケアプランではなく主治医の訪問看護指示書で紹介されます。窓口は次の2つです。
病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)
退院前カンファレンス(入院中に退院後の在宅ケアの体制を決める会議)に参加すると、退院後の訪問看護先として選ばれるケースがあります。近隣の病院のMSWへのあいさつ・名刺交換・事業所案内の配布を行い、「退院前カンファに来てください」と言われる関係を作ります。
主治医(かかりつけ医・病院の担当医)
難病・在宅酸素・人工呼吸器等の医療的ケアが必要な患者を担当する開業医・専門外来の医師との関係構築も重要です。主治医が「この患者には訪問看護が必要」と判断したとき、頭の中に名前が浮かぶ事業所に声がかかります。
退院時共同指導加算を活用して関係を作る
訪問看護ステーションは、利用者の入院中に病院スタッフとともに退院指導を行った場合に「退院時共同指導加算」(介護保険・医療保険)を算定できます。介護保険では退院時共同指導600単位(skill.md確認済み)が算定できます。算定のためだけでなく、入院中から顔を合わせることで退院後の連携がスムーズになります。
新規開業後の利用者増加ペースの目安
全国平均(令和7年度介護事業経営概況調査・令和6年度決算・介護保険のみ・有効254)では、介護保険の訪問看護ステーションは月延べ421.5回の訪問を行い、常勤換算8.6人(うち看護職員5.4人)を抱えています。
新規開業直後は利用者ゼロからのスタートです。利用者がケアプランに組み込まれるまでには時間がかかります。月に2〜3人ずつ増えるのが現実的なペースで、損益分岐に必要な利用者数(35人前後が多い)に到達するまでに1年以上かかるケースがほとんどです。
このシミュレーターの既定値は「介護保険の利用者が毎月3→2→1.5→1人ずつ増加、医療保険は1.5→2→1.5→1人ずつ」という例示です。この速さは保証するものではなく、ケアマネジャーへのアプローチや専門性によって大きく変わります。
損益分岐に達する利用者数から逆算して動く
訪問看護の損益分岐(月の収支が黒字になる利用者数)は、訪問頻度・単価・スタッフ数・人件費水準によって異なります(詳細は「訪問看護ステーションの損益分岐」記事を参照)。損益分岐から逆算すると「何人の新規利用者を毎月増やす必要があるか」が分かります。
例えば損益分岐が35人で、毎月2人ずつ増えるとすると約18か月かかります。この間の資金不足に耐えられるだけの自己資金・融資が必要です。利用者確保の速度を上げるためのケアマネ連携活動は、開業前から計画に織り込んでおくことが重要です。
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まとめ
訪問看護ステーションの介護保険の利用者はケアマネジャー経由で紹介されます。医療保険の利用者は病院のMSWや主治医からつながります。利用者を確保するには、開業前に近隣の居宅介護支援事業所へのあいさつ回り・紹介資料の配布を行い、開業後は担当者会議への参加・報告書の丁寧な送付・早いフィードバックで信頼関係を積み上げることが基本です。損益分岐に達するまでに1年以上かかることも多いため、その間の資金計画と開業前からのケアマネ連携活動を計画に織り込んでください。
出典:令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・厚生労働省)。作成:2026年11月。

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