訪問看護の創業計画書。日本政策金融公庫への融資申請で書く「事業の見通し」。
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訪問看護ステーションの開業には、法人設立・物件確保・スタッフ採用・設備費用・開業後の運転資金が必要であり、日本政策金融公庫などへの融資を検討する方が多くいます。融資を申請する際には「創業計画書」を提出し、事業の収支見通しを説明することが求められます。この記事では、公庫の創業計画書のうち訪問看護ステーションに関わる「事業の見通し」欄の書き方と、融資審査で問われるポイントを整理します。
訪問看護ステーションの開業資金と融資の選択肢
訪問看護ステーションの開業に必要な資金の目安は、「500万〜1,000万円程度」とされることが多い(公的な統計ではなく、民間コンサルや開業支援業者の情報をもとにした数値です。詳細は「訪問看護ステーションの開業資金」の記事を参照してください)。主な資金の内訳は次のとおりです。
- 法人設立費用(登録免許税・定款認証費用・司法書士費用等)
- 物件費用(敷金・礼金・初月家賃・内装工事等)
- 設備・備品費用(訪問看護に使う医療機器・消耗品・IT設備等)
- 採用費用(求人広告費・紹介手数料等)
- 開業前の人件費(指定日まで)
- 開業後の運転資金(指定日から収入が入るまでの2〜3か月分)
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」(無担保・無保証が特徴)や「医療貸付」(医師・看護師等が開業する場合に利用できる制度)が選択肢として挙げられます。詳細な条件・申込方法は日本政策金融公庫のWebサイトで確認してください。
創業計画書の「事業の見通し」欄とは
日本政策金融公庫の「創業計画書」には「事業の見通し」欄があり、創業1年目・2年目(または6か月ごと)の売上・費用・利益の見通しを記入します。この欄は審査担当者が「返済できる収益が出るか」を確認する最も重要な箇所です。
見通しに「根拠」がないと審査で問われます。「なぜその売上見通しなのか」を数値で説明できる状態にしておくことが必要です。
「事業の見通し」に書く数値の作り方
1. 月あたりの売上の計算式を示す
訪問看護ステーションの売上(介護報酬)は次の計算式で試算できます。
- 介護報酬 ≒ 利用者数 × 平均訪問回数/月 × 1回あたりの単価(介護保険)
- 医療保険収入 ≒ 利用者数 × 月あたりの請求額(医療保険)
たとえば「利用者20人・1人あたり月8回訪問・1回8,248円(全国平均・介護保険のみ)」なら月あたりの介護報酬は約132万円です(8,248円×8回×20人)。この計算式と根拠(全国平均データ等)をまとめておきます。
全国平均(令和7年度介護事業経営概況調査・令和6年度決算・介護保険のみ・有効254)では、月延べ421.5回の訪問・訪問1回8,248円が全国平均です。新規開業ではこの水準に達するまでに時間がかかりますが、「将来的にはこの水準を目指す」という説明の根拠として使えます。
2. 利用者が増える根拠を説明する
融資審査では「なぜその利用者数を見込めるのか」を必ず問われます。説明の材料として次のものを準備します。
- 開業地域の高齢者人口・要介護認定者数(市区町村の介護保険事業計画等から引用できます)
- 地域の訪問看護ステーション数(競合の状況)
- 自分の専門性・経験(在宅医療の実務経験・認定看護師の資格等)
- 既存のケアマネジャーや病院との関係(あいさつ回りの計画等)
3. 費用の内訳と合計を示す
費用欄には次の項目を記載します。
- 人件費(看護師等の給与・賞与・法定福利費)
- 家賃・リース料
- 訪問交通費(自動車・バイクの維持費・ガソリン代等)
- 消耗品費(医療材料等)
- 通信費・システム費(訪問看護専用ソフト等)
- 借入返済額
費用のうち人件費は全費用の70〜75%を占めることが多く、これが最大の固定費です(全国平均の給与費比率は70.1%・令和7年度概況調査・介護保険のみ)。
訪問看護特有の融資上の注意点
指定が下りるまで収入ゼロ
訪問看護ステーションは都道府県知事の指定を受けるまで報酬を請求できません。指定申請から指定日まで1〜2か月かかります。この期間は収入ゼロで人件費・家賃だけが出続けます。創業計画書には「開業準備期間(○か月)は収入がない」と明記し、その間の運転資金がどこから出るかを示します。
入金は事業開始から最低2か月後
訪問看護の報酬は「サービス提供月の翌月に請求・翌々月に入金」が原則です(介護保険・医療保険ともに)。つまり事業開始から最低2か月間は収入ゼロです。「指定日=すぐ収益が入る」という前提では資金計画が甘くなります。
「事業の見通し」の収支欄に入金の遅れを反映させておくと、審査担当者に「現実を理解している」という印象を与えます。このシミュレーターの「入金の遅れ」機能で試算した数値を根拠として使うこともできます。
自己資金比率の目安
日本政策金融公庫の新創業融資制度では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が要件とされています(詳細・最新の条件は公庫Webサイトで確認してください)。自己資金が少ないと融資額の上限が低くなる場合があります。
融資面接で問われる5つのポイント
| ポイント | 説明のための材料 |
|---|---|
| 創業動機 | なぜ訪問看護ステーションを開業するのか(経験・地域のニーズ・自分の強み) |
| 経歴・経験 | 看護師・管理者としての職歴、在宅医療の経験年数、資格 |
| 自己資金の出所 | 貯蓄・退職金・家族からの借入等(通帳のコピーが必要な場合が多い) |
| 収支見通しの根拠 | 利用者数の根拠(地域の高齢者人口・ケアマネとの関係等)・全国平均との比較 |
| 返済計画 | 月の返済額が収益から捻出できることの説明(損益分岐に達した後の手残り) |
創業計画書にシミュレーターの数値を活用する
このシミュレーターでは、利用者の増え方・訪問単価・地域区分・人件費比率・入金の遅れ等を入力することで、月次の収支・資金の谷・損益分岐時期を試算できます。「事業の見通し」欄に書く数値の根拠として活用できます。
印刷機能(Pro版)では「事業計画書」形式の出力が可能です。試算した数値を事業計画書として印刷し、創業計画書の添付資料として使うことができます。
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まとめ
訪問看護ステーションの開業融資の申請では、創業計画書の「事業の見通し」欄に1〜2年目の月次収支の根拠を示すことが重要です。売上見通しは「利用者数×訪問回数×単価」の計算式と根拠(地域の高齢者人口・全国平均データ)で説明します。訪問看護特有の注意点として、指定が下りるまで収入ゼロ・入金は事業開始から最低2か月後という現金回収の遅れを計画書に反映させることが、審査担当者に現実を理解していると伝えるポイントです。このシミュレーターで試算した数値を根拠として活用できます。
出典:令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・厚生労働省)・日本政策金融公庫「創業計画書」様式(公庫Webサイト)。作成:2026年11月。


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