保育所・認定こども園のプール・水遊びは、短時間で重大な事故につながるリスクがあります。2023年以降、こども家庭庁は安全計画(第6条の3)の対象にプール・水遊びを明示し、事前の対策と訓練の実施を求めています。
この記事では、プール・水遊びを安全に実施するために事前に確認すべき事項と、研修・訓練の進め方を整理します。
安全計画へのプール・水遊びの位置づけ
令和5年4月に義務化された安全計画(第6条の3)は、保育所内外のすべての安全リスクを対象にします。こども家庭庁の通知・手引きでは、安全計画に盛り込むべき分野のひとつとしてプール・水遊びが明示されています。
プール・水遊びに関して安全計画に盛り込む内容は、大きく次の3つです。
- プール・水遊びの実施基準(いつ・どんな条件で実施するか・中止基準)
- 実施中の監視体制と緊急時の対応手順
- 職員への研修と訓練の実施方針
事前に確認する5つの項目
プール・水遊びを始める前に、施設全体で確認しておくべき項目を整理します。
① 子どもの体調・健康状態の確認
プール・水遊びの当日は、すべての子どもの体調を登園時に確認します。次の状態の子どもは参加を見合わせます。
- 発熱・鼻水・咳など体調不良の症状がある
- 結膜炎(流行性角結膜炎・咽頭結膜熱)の疑いがある
- 皮膚に湿疹・傷・とびひなど感染リスクのある状態がある
- 耳鼻科・眼科から「プール禁止」の指示が出ている
保護者から「水遊びを控えてほしい」という申し出がある場合も、記録を残したうえで対応してください。
② 監視員の配置と役割の明確化
プール・水遊びの最中に溺水が起きる可能性があります。「保育士が水遊びの援助をしながら監視もする」という兼任の体制では、目を離す瞬間が生まれます。
安全な体制の基本は次のとおりです。
- 監視専任の職員を1名以上置く:水の中に入らず、子ども全員を見渡せる位置に立ち、監視だけを担当する職員を配置する
- 監視員は子どもと一緒に水遊びをしない:援助の職員と監視の職員を明確に分ける
- 監視の死角をなくす:プールの形状によって見えにくい場所がある場合は、監視員の位置を複数に増やす
こども家庭庁が2023年に公表した「教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について(報告)」では、溺水事故の多くで「監視体制が不十分」「監視員が他の作業を兼任していた」という指摘が繰り返し挙げられています。
③ 中止基準の設定
プール・水遊びを中止する基準を事前に文書で定めておきます。
- 気温・水温:気温と水温の合計が50度以下の場合は中止を検討する(気温22度・水温28度が目安)。WBGT(暑さ指数)が31以上の場合も中止を検討する
- 天候:落雷の危険がある場合・強風・大雨
- 施設の状況:プールの水が濁っている・水質検査で基準を超えた場合
- 職員の状況:監視専任の職員が確保できない場合
「中止しにくい雰囲気」で無理に実施することは避けてください。中止の判断をした場合は記録を残してください。
④ 水質管理
プールの水は定期的に検査し、基準を満たしていることを確認します。水道水を使ったプールでも、時間の経過とともに塩素が薄まり、感染リスクが高まります。
- 遊離残留塩素濃度:0.4mg/L以上1.0mg/L以下(厚生省令第15号「プール水等の衛生基準について」)
- pH値:5.8以上8.6以下
- 水の入替えや塩素の補充は施設のマニュアルに従って実施する
ごく浅いビニールプールや水遊びの場合も、水は毎日交換することが基本です。前日の水を使い回すことは衛生上適切ではありません。
⑤ 緊急時の対応手順の確認
万一の事故に備えて、緊急時の対応手順を職員全員で共有しておきます。
- 溺れている子どもを発見→水から引き上げる(1名が水中対応・別の1名が大声で周囲に知らせる)
- 意識・呼吸の確認→呼びかけに反応がない場合は直ちに119番通報と心肺蘇生(CPR)を開始
- AEDを取りに行く(設置場所・操作方法を全職員が把握しておく)
- 保護者への連絡(通報の前後に応じて対応)
- 施設長・行政への報告(重大事故の場合は速やかに報告)
CPRとAEDの操作は、口頭で知っていても実際にはうまく動けないことが多いです。毎年プール開始前に訓練を行うことをおすすめします。
研修で取り上げること
プール・水遊びの安全に関する研修は、毎年プールを始める前に実施することが望ましいです。取り上げるべきテーマは次のとおりです。
- 今年度の安全計画(プール・水遊び部分)の確認と職員への周知
- 監視体制の確認(誰が監視専任を担うか・役割分担)
- 中止基準の確認
- 子どもの体調チェックの手順
- 水質管理の手順
- 溺水発生時の緊急対応手順(CPR・AED含む)
訓練で行うこと
プール・水遊びの安全訓練で最も優先度が高いのはCPR(心肺蘇生)とAED操作の訓練です。訓練の進め方は次のとおりです。
- 溺水事故のシナリオを設定する(「プールで子どもが意識を失った」)
- 発見→引き上げ→意識確認→119番通報→CPR開始→AED到着→AED操作の一連の流れを確認する
- 訓練用マネキン・AEDトレーナーを使って実際に体を動かす
- 訓練後に「できていたこと」「課題」を振り返り、記録に残す
CPR・AEDの訓練は、消防署や日本赤十字社の「普通救命講習」(3時間・無料または低価格)を活用することもできます。「施設内で全職員が講習を受けた」という記録は、運営指導でも説明しやすい実績になります。
記録の残し方
プール・水遊びの安全管理に関連して残すべき記録をまとめます。
- 水質検査の記録(日付・塩素濃度・pH・検査者)
- プール実施日ごとの気温・水温・WBGT・実施の可否
- 中止した場合の理由の記録
- 子どもの体調チェックの記録
- 研修の実施記録(日時・テーマ・参加者)
- 訓練の実施記録(日時・シナリオ・参加者・課題)
運営指導では、安全計画にプール・水遊びの内容が含まれているか、研修・訓練が実施されているかが確認されることがあります。記録を整理した状態にしておいてください。
まとめ
保育所のプール・水遊びの安全管理のポイントをまとめます。
- 安全計画(第6条の3)の対象に含まれる。実施基準・監視体制・緊急対応手順を文書化する
- 事前に確認する5項目:子どもの体調確認・監視員の配置・中止基準・水質管理・緊急時の対応手順
- 監視は専任職員を配置し、援助職員と兼任しない
- プール開始前に研修(安全計画の共有・役割確認)と訓練(CPR・AED操作)を実施する
- 水質検査・体調チェック・研修・訓練の記録を残す
プール・水遊びの安全に関する研修資料・確認テスト・訓練記録様式を用意したツールがあります。ぜひ活用してください。


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