保育所の個人情報保護研修、何を教えればいいか。

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保育所は子どもと保護者の個人情報を大量に扱う事業者です。氏名・住所・健康状態・発達状況・障害の有無など、多くの情報が日常的に流通しています。

個人情報の保護に関する法律(以下、個人情報保護法)に基づいて、事業者には利用目的の明示・安全管理措置・従業者の監督などの義務があります。この記事では、保育所が扱う個人情報の種類・法律上の義務・研修で教えるべき内容・記録の残し方を整理します。

保育所が扱う個人情報の種類

保育所が日常的に取り扱う個人情報には、次のようなものがあります。

種類 具体例 分類
基本情報 氏名・生年月日・住所・連絡先 個人情報
健康・医療情報 既往症・アレルギー・服薬状況・身体測定記録 要配慮個人情報
障害・発達情報 障害の有無・診断名・個別支援計画の内容 要配慮個人情報
家庭情報 家族構成・保護者の職業・養育の状況 個人情報
保育記録 連絡帳・発達記録・面談の記録・写真 個人情報

健康・医療情報や障害・発達情報は「要配慮個人情報」に当たります。個人情報保護法(第2条第3項)では、本人の同意なく取得・第三者提供することが原則として禁止されています。通常の個人情報より慎重な取り扱いが必要です。

個人情報取扱事業者の4つの義務

個人情報保護法に基づいて、事業者には次の4つの主要な義務があります。

1. 利用目的の明示

個人情報を取得する際に、その利用目的を本人(保護者)に明示することが必要です。入園時に配布する「個人情報の取り扱いについて」の書類で、「○○の目的のために使用します」と具体的に記載してください。「業務全般のために使用する」のような抽象的な記載は不十分とされる場合があります。

2. 安全管理措置

個人情報の漏洩・滅失・毀損を防ぐために、適切な管理措置を講じることが義務です。具体的には次のような取り組みが含まれます。

  • 書類の施錠保管(鍵のかかるキャビネットに保管)
  • 電子データのパスワード設定・アクセス権限の制限
  • 不要になった書類のシュレッダー処分
  • 情報を持ち出す際のルールの整備

3. 従業者への監督

事業者は、従業者(職員・パート・ボランティア等)が個人情報を適切に取り扱うよう監督する義務があります。研修の実施・誓約書の取得・日常的な指導がこれに当たります。

4. 第三者提供の制限

本人(保護者)の同意なく、個人情報を第三者に提供することは原則禁止です。他の保護者への連絡先の提供・写真の無断公開・医療機関への情報提供(同意なし)などが該当します。「子ども同士が仲良しだから」という理由でも、無断で連絡先を教えることは個人情報保護法違反になります。

SNSによる情報漏洩が最も起きやすい

保育所での個人情報漏洩の原因として、SNSへの不適切な投稿が最も多く見られます。「子どもがかわいかったから」という軽い気持ちで投稿した写真や文章が、深刻な問題になることがあります。

SNSに関連して特に注意が必要な行為は次のとおりです。

  • 園内の写真の個人投稿:子どもの顔が写った写真をSNSに投稿する行為。子どもの顔は個人情報です。保護者から「写真を削除してほしい」と求められた場合、対応が困難になります
  • 子どもの名前・状況の投稿:「今日○○ちゃんが転んで泣いていた」「○○くんはアレルギーがある」など、子どもの情報をSNSに書くこと
  • 保護者の情報の投稿:「今日○○さんのお迎えが遅かった」「○○のお宅は○○の事情があるらしい」など
  • 施設内の機密情報の投稿:業務上知り得た情報(他の職員の情報を含む)を職場の愚痴としてSNSに書くこと

「鍵アカウントだから大丈夫」は誤りです。スクリーンショットによる転載・フォロワーへの拡散を完全に防ぐことはできません。

研修で教えるべき4つのテーマ

テーマ1:個人情報の種類と要配慮個人情報

「個人情報とは何か」という定義の確認から始めます。特に「要配慮個人情報」(健康・医療・障害に関する情報)については、通常の個人情報より厳格な取り扱いが必要であることを説明してください。「子どものアレルギーを気軽に話してしまう」という行為が要配慮個人情報の漏洩に当たることを、具体例とともに伝えます。

テーマ2:施設内・外部への情報提供のルール

「誰に・どんな情報を・どういう場合に提供できるか」のルールを確認します。よくある場面として、「小学校への申し送り」「医療機関への情報共有」「他機関との連携」「保護者同士の交流」などがあります。いずれも、保護者の同意の範囲内かどうかが判断基準になります。

テーマ3:SNS利用の注意点

前述のSNSに関するリスクを研修で具体的に伝えます。「自分の施設では起きないこと」ではなく、実際に他の保育施設で問題になった事例を参考に話し合うと、職員の意識が高まります。研修後に「SNS利用に関する誓約書」を全職員から取得することをおすすめします。

テーマ4:漏洩が起きたときの対応手順

万が一、個人情報の漏洩や紛失が起きた場合の報告・対応手順を確認します。令和4年(2022年)の個人情報保護法改正により、一定規模以上の漏洩が発生した場合には個人情報保護委員会への報告義務が生じました。施設のルールとして「漏洩に気づいたら誰にどう報告するか」の手順を明確にしておいてください。

誓約書と研修記録の整備

個人情報保護に関して整備しておくべき書類は次のとおりです。

  • 個人情報保護方針(プライバシーポリシー):取り扱う情報の種類・利用目的・管理体制・問い合わせ先を記載した文書。保護者向けに配布・掲示する
  • 職員の誓約書:採用時に個人情報の適切な取り扱いと秘密保持について署名・捺印を求める。退職後も秘密保持義務が続くことを明記する
  • 研修の実施記録:実施日・参加者名・研修のテーマ・内容の概要。毎年の実施記録を保管する

誓約書は採用時だけでなく、研修を実施したタイミングで再確認(再署名)を求める施設もあります。「知っているはずだから」ではなく、定期的に意識を新たにする機会として活用してください。

運営指導でよく指摘される不備

  • 個人情報に関する研修の記録がない:「毎年伝えています」という口頭の説明では記録として不十分です。実施日・参加者・内容が確認できる記録を残してください
  • パート・非常勤職員が未受講:正規職員しか参加していないケースがあります。パート・非常勤・ボランティアも個人情報を扱うため、全員が研修を受ける体制が必要です
  • SNSに関する規定・誓約書がない:「言わなくてもわかるはず」という考えでは不十分です。SNS利用に関するルールを文書化して全職員に周知し、誓約書を取得してください
  • 書類の管理が不十分:個人情報が記載された書類が鍵のかかっていない棚に保管されている・不要な書類が普通ゴミとして捨てられているなど、安全管理措置が取られていないケース

まとめ

保育所は子どもの健康・障害に関する要配慮個人情報を含む多くの情報を扱います。個人情報保護法に基づく義務(利用目的の明示・安全管理措置・従業者の監督・第三者提供の制限)を守るための体制整備が必要です。

研修では「個人情報の種類・社内外の情報提供ルール・SNSの注意点・漏洩時の対応手順」の4テーマを取り上げ、記録と誓約書を整備してください。SNSによる漏洩が最も起きやすいため、SNS規定の周知と誓約書の取得は早めに対応することをおすすめします。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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