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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)では、就労移行支援の収支差率を法人形態別に確認できます。就労移行支援では社会法人の収支差率が高く、営利法人が低いという、放課後等デイサービスとは逆の傾向があります。
法人形態別の収支差率一覧
| 法人形態 | 事業所数 | 平均定員 | 平均年収入 | 収支差率 |
|---|---|---|---|---|
| その他 | 52件 | 14人 | 2,510万円 | 15.5% |
| 社会法人(他含む) | 76件 | 9人 | 1,235万円 | 11.7% |
| NPO法人 | 32件 | 14人 | 2,065万円 | 8.8% |
| 営利法人 | 136件 | 17人 | 4,129万円 | 2.6% |
調査296事業所の中で営利法人が136件(46%)と最多ですが、収支差率は2.6%と最低水準です。社会法人は11.7%と高い収支差率ですが、平均年収入1,235万円と規模が小さい(平均定員9人)のが特徴です。
社会法人の就労移行支援が高収支差率な理由
社会法人(社会福祉法人・学校法人等を含む)の就労移行支援が11.7%という高い収支差率を示している理由には、次の要因が考えられます。
- 小規模事業所が多い:平均定員9人(営利17人の半分程度)と小規模で、人件費等の固定費を抑えた運営をしている事業所が多い。小規模ながら稼働率を維持できていれば収支差率は高くなりやすい
- 法人全体の支援体制の中に位置づけられている:既存のGH・生活介護等と一体的に運営されているケースでは、施設・人員の共有で費用が抑えられる場合がある
- 就職実績が安定した事業所が多い:就労移行支援は就職実績によって加算(就労定着支援体制加算等)が取得できる。社会法人は既存の就労支援ノウハウを持っている場合が多く、就職率・定着率が安定しやすい
営利法人の就労移行支援が収支差率2.6%になる理由
営利法人の就労移行支援の収支差率が2.6%と低い背景には、次の要因があります。
- 規模が大きいが収支差が出にくい:平均定員17人・年収4,129万円と規模は最大ですが、収支差率は2.6%(差額107万円程度)にとどまる。大規模でも人件費・賃料等の固定費が比例して増加するため、収支差率が改善しにくい
- 稼働率69.2%(WAM参考値)で定員が多いと空き定員の影響が大きい:定員17人で稼働率69.2%なら、毎日約5人が空き定員の状態。定員が多いほど空き定員による収入ロスが大きくなる
- 競合が多い市場での利用者獲得コスト:営利法人が多い就労移行支援の市場では、利用者獲得のための情報提供・見学対応等のコストが相対的に高くなる傾向がある
放デイと就労移行支援の法人形態別傾向の違い
| 項目 | 放デイ | 就労移行支援 |
|---|---|---|
| 営利法人の収支差率 | 12.6%(最高) | 2.6%(最低) |
| 社会法人の収支差率 | ▲2.0%(最低) | 11.7%(高い) |
| 全体の中央値 | 2.7% | 4.5% |
放デイと就労移行支援では、法人形態による収支差率の優劣が逆転しています。この違いは「どの法人形態がその事業に向いているか」という単純な話ではなく、事業所の規模・稼働率・加算の取得状況といった個別要因の方が収支差率に大きく影響しています。
就職実績と収支差率の関係
就労移行支援の収支は、就職実績と密接に関係しています。就職率が高い事業所は以下の加算取得につながります。
- 就労定着支援体制加算:就職後の職場定着率(6ヶ月・12ヶ月・24ヶ月定着)が一定水準を超えた場合に取得できます。定着率が高いほど加算単価が上がり、1人1日あたりの収入が増加します
- 特定事業所加算:支援員1人あたりの就職者数など複数の要件を満たした事業所が取得できます。就職実績と職員配置の要件が絡んでいます
就職実績が高い事業所(定着率70%以上)は、加算収入により1人1日あたりの収入が増え、稼働率が同じでも収支差率が改善します。逆に就職実績が低い事業所は加算が取得できず、収支差率が低くなりやすい構造です。
法人形態別の収支差率の差(社会法人11.7%・営利2.6%)には、就職実績や定着率の違いも一因として含まれている可能性があります。自事業所の就職率・定着率を確認し、加算取得の状況と照合することが重要です。
定員規模の違いが収支差率に与える影響
就労移行支援では、定員規模が小さい事業所(平均定員9人の社会法人)の収支差率が高く、大きい事業所(平均定員17人の営利法人)の収支差率が低いという逆転現象が起きています。
この背景には、定員が大きいほど「稼働率69.2%(WAM参考値)での空き定員数が増える」という問題があります。定員17人・稼働率69.2%なら約5.3人が毎日空き定員。定員9人・稼働率69.2%なら約2.8人が空き定員。収入の損失額は大きな事業所の方が大きくなります。
稼働率を80〜90%に改善できる見込みがない場合、定員を縮小することで固定費対比の収入割合を高めることができます。定員変更は指定権者(都道府県・政令市等)への変更届が必要です。
就労移行支援の収支改善の優先順位
法人形態を問わず、就労移行支援の収支改善で確認すべき優先順位は次のとおりです。
- 稼働率の確認:69.2%(WAM参考値)を下回っている場合は新規利用者の確保が最優先
- 就職実績の向上:就労定着率が上がると就労定着支援体制加算・特定事業所加算等の取得につながる
- 定員規模の最適化:定員と現状の稼働率・利用者数のバランスを確認し、定員過多の場合は縮小を検討する
法人形態別の全国水準(社会法人11.7%・営利2.6%)を参考値として把握しつつ、自事業所の現状と比較することで改善の方向性を特定できます。自事業所が営利法人で収支差率2.6%に近い場合でも、稼働率や加算の改善によって収支差率を高めることは可能です。全国水準を「当然の水準」と考えず、改善余地がある指標に取り組むことが重要です。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。法人形態別の詳細は同調査の事業所別集計にもとづきます。

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