避難器具の設置基準。何階から必要か・収容人員の条件。




避難器具の設置義務は「すべての建物に一律に課される」わけではありません。消防法施行令第25条により、防火対象物の用途(別表第一の区分)・対象となる階・収容人員の3つの条件を組み合わせて判断します。

この記事では、施行令第25条の表をもとに設置基準の仕組みを整理します。

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設置基準の判断は3つの条件の組み合わせで決まる

施行令第25条第1項は、次の3つの条件をすべて満たす場合に避難器具の設置義務が生じると規定しています。

  1. 防火対象物の用途(別表第一の区分)が設置対象に該当する
  2. 設置対象となる階(2階以上または地階)である
  3. 収容人員が定められた基準人数以上である

出典:消防法施行令第25条(e-Gov法令検索・消防法施行令)

設置対象は2階以上と地階。1階には原則として義務なし

施行令第25条第1項の括弧書きで「避難階及び十一階以上の階を除く」と明記されています。避難階(地上に直接出ることができる階)と11階以上の階は設置義務がありません。

設置対象となる階は次のとおりです。

階 設置対象 備考
避難階(通常は1階) 対象外 地上に直接出られる階
2階〜10階 対象(用途・収容人員の条件による) 地下も含む
11階以上 対象外 高層部分は別途避難設備
地階 対象(用途・収容人員の条件による) 2階以上と同じ扱い

用途別の設置基準。施行令第25条の表の読み方

施行令第25条の表では、防火対象物の用途によって収容人員の基準が異なります。用途が変わると同じ階・同じ人数でも設置義務の有無が変わります。

用途(別表第一の区分) 代表的な施設 設置対象となる階 収容人員の基準
(六)項イ・ロ・ハ・ニ 病院・診療所・助産所・福祉施設・保育所 2階以上および地階 20人以上(下階に特定用途があれば10人以上)
(五)項イ 旅館・ホテル・宿泊所 3階以上および地階 30人以上(下階に特定用途があれば10人以上)
(一)(二)(三)(四)項 劇場・百貨店・飲食店・キャバレー 3階以上および地階 50人以上(3階以上の無窓階・地階は30人以上)
(五)項ロ 共同住宅・寄宿舎 5階以上および地階 10人以上
(十二)(十五)項 工場・倉庫・事務所 3階以上および地階 100人以上(無窓階・地階も100人以上)

出典:消防法施行令第25条第1項(e-Gov法令検索)

上記は主な用途の例です。施行令第25条の表は用途ごとに細かく定められているため、実際の設計・検査では原文の表を直接確認してください。

「下階に特定用途がある場合」の特例

施行令第25条の表には「当該防火対象物の下階に(六)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分(…)がある場合」という特例があります。

たとえば(五)項イ(旅館・ホテル)で3階が設置対象に当たらない場合でも、2階に(六)項の施設(病院・福祉施設等)があれば収容人員10人以上で設置義務が生じます。下階の用途によって基準が引き下がる仕組みです。

無窓階の扱い。開口部の基準

施行令上の「無窓階」とは、外壁に面した開口部の面積が一定の基準(消防法上の規定による)を満たさない階のことです。無窓階は一般の階より収容人員の基準が低く設定されており、より少ない人数で設置義務が生じます。

無窓階判定は設置基準だけでなく自動火災報知設備等の基準にも影響するため、第5類の試験では「無窓階では収容人員の基準が低い(設置義務が厳しくなる方向)」という点を覚えておきます。

設置個数の計算方法

施行令第25条に基づく設置個数の基本的な考え方は「1つの階に1個以上」ですが、収容人員が多い場合は複数設置が必要になります。個数の計算は施行規則第26条の規定(個数の減少の条件)とあわせて判断します。

設置個数は次の手順で求めます。

  1. 対象階の収容人員を確認する
  2. 施行令第25条の表で当該用途の基準を確認する
  3. 収容人員が基準を超えている場合、超えた人数に応じて個数を計算する
  4. 施行規則第26条の免除・減少条件に該当する場合は個数を減らせる

設置位置の基準。施行規則第27条が定める条件

施行令第25条が「何を・どこに・何個」を定めるのに対して、施行規則第27条は設置位置の具体的な条件(降下空間・操作面積・取り付け金具の強度等)を定めています。

設置位置を決める際に確認すべき主な条件は次のとおりです。

確認事項 内容 根拠
降下空間 避難器具の前方・後方・側方に一定距離以内の障害物がないこと 施行規則第27条
操作面積 避難器具を操作するための踊り場・バルコニー等の床面積が確保されていること 施行規則第27条・型式試験基準
取り付け金具の強度 最大許容荷重の2倍以上に耐えること 型式試験基準

設置基準の判断で試験に出やすいポイント

第5類の試験では次のポイントが問われます。

問われるポイント 正解となる知識
設置対象となる階 2階以上および地階(避難階・11階以上は除く)
用途による基準の違い (六)項は20人以上、(五)項イは30人以上、など用途によって異なる
下階に特定用途がある場合 収容人員の基準が10人以上に引き下がる
無窓階 一般の階より収容人員の基準が低い(少人数で設置義務が発生)
11階以上 施行令上は除外(高層建物の上層階には別の避難設備の規定がある)

収容人員の計算方法。防火対象物ごとの算定基準

設置基準の判断に使う「収容人員」は、実際の在籍人数ではなく消防法施行規則第1条の3で定めた算定方法によって計算します。用途ごとに算定方法が異なります。

用途 収容人員の算定方法
劇場・映画館等((一)項) 固定式椅子は椅子の数・それ以外は床面積を0.5㎡で割った数
飲食店等((三)項) 客席部分の床面積を3㎡で割った数+従業員数
病院等((六)項) 病床数+入院患者数以外の従業員数
共同住宅等((五)項ロ) 居住者数(住居の床面積に応じて算定)
事務所等((十五)項) 床面積の合計を3㎡で割った数

出典:消防法施行規則第1条の3(e-Gov法令検索)

試験では「収容人員の算定はどの条文に基づくか」「収容人員と面積の関係」が問われる場合があります。施行令第25条の表を読む前に収容人員の算定方法を把握しておくと判断がしやすくなります。

設置個数の計算。収容人員に応じた個数の出し方

設置個数は施行令第25条の表で「何人以上で1個設置」という基準が示されており、収容人員が増えるにつれて設置個数が増えていきます。

個数の計算の基本的な考え方は次のとおりです。

  1. 施行令第25条の表で当該用途の基準人数(たとえば(六)項なら20人)を確認する
  2. 収容人員が基準人数に達していれば1個設置
  3. 基準人数を超えた人数についてさらに100人増えるごとに1個追加(用途によって異なる)
  4. 施行規則第26条の免除・減少条件に当てはまる場合は個数を調整する

具体的な個数の計算式は施行令第25条の表に規定されています。表の読み方は「最初の○人以上で1個、以後○人増えるごとに1個追加」というパターンが多いです。

施行令別表第一の区分と避難器具の関係

施行令別表第一は防火対象物の用途を(一)項から(十六の三)項まで分類しており、避難器具の設置基準だけでなく自動火災報知設備・スプリンクラー設備等のほかの消防用設備の基準にも使われます。

避難器具で特に重要な区分は次のとおりです。

別表第一の区分 用途の例 設置基準の特徴
(一)項 劇場・映画館・演芸場 収容人員の基準が50人以上(3階以上の場合)
(二)項 キャバレー・ナイトクラブ・遊技場 (一)項に準じた基準
(五)項イ 旅館・ホテル・宿泊所 収容人員30人以上(3階以上の場合)
(六)項 病院・診療所・福祉施設・保育所 収容人員20人以上(2階以上)・最も厳しい基準
(五)項ロ 共同住宅・寄宿舎 5階以上で収容人員10人以上

(六)項が最も設置基準が厳しい(2階以上、20人以上)のは、病院・福祉施設等に自力避難が難しい人が多いためです。

設置基準を確認する手順まとめ

実際に設置基準を確認する場合は次の手順で進めます。

  1. 防火対象物の用途(別表第一の区分)を特定する
  2. 対象となる階(2階以上・地階か、避難階・11階以上かを確認)を確認する
  3. 収容人員を施行規則第1条の3の方法で算定する
  4. 施行令第25条の表で当該用途の基準人数を確認し、設置義務が生じるかを判断する
  5. 設置義務がある場合は施行規則第26条で免除・減少条件を確認する
  6. 設置個数を確定したら施行規則第27条で設置位置の基準を確認する

設置基準を覚えるコツ。用途と人数のセットで覚える

施行令第25条の表は用途ごとに異なる数値が並んでいます。試験対策では「用途(六)項=20人、(五)項イ=30人、劇場・百貨店等=50人」というように用途と基準人数をセットで覚えるのが効率的です。

さらに「下階に(六)項がある場合は10人に引き下がる」という特例を加えると、ほとんどの設置義務判断問題に対応できます。

無窓階については「通常の基準より少人数で義務が発生する(より厳しくなる)」という方向性だけ押さえておけば十分です。

実際の設置義務判断の例

具体的な例で設置義務の判断を確認します。

例1:(六)項の福祉施設(特別養護老人ホーム)の3階、収容人員25人

  • 用途:(六)項 → 2階以上および地階が対象
  • 階:3階 → 対象(11階以上でも避難階でもない)
  • 収容人員:25人 → 20人以上の基準を満たす
  • 判断:設置義務あり

例2:(十五)項の事務所の2階、収容人員80人

  • 用途:(十五)項 → 3階以上および地階が対象(2階は対象外)
  • 階:2階 → (十五)項では対象とならない
  • 判断:設置義務なし(2階は(十五)項の対象外)

この例のように「用途によって対象となる最低階が異なる」点が重要です。(六)項は2階以上が対象ですが、(十五)項は3階以上が対象です。

設置基準の判断でよくある誤り

試験や実務でよく見られる誤りとその正しい理解を整理します。

よくある誤り 正しい理解
「1階にも設置義務がある」と思う 1階(避難階)は原則として設置義務なし。施行令第25条の括弧書きで除外されている
「10階まで設置が必要」と思う 2〜10階が対象(ただし用途・収容人員の条件を満たす場合のみ)
「面積が小さければ不要」と思う 面積だけでの免除規定はない。用途・階・収容人員が判断基準
「スプリンクラーがあれば設置免除」と思う 設置免除にはならない(個数の減少が認められる場合がある)
「地下(地階)は設置不要」と思う 地階も設置対象(用途・収容人員の条件を満たせば設置義務あり)

建物改修時の再確認

既に避難器具が設置されている建物でも、次の変更があった場合は設置基準を再確認する必要があります。

  • 建物の用途が変わった場合(別表第一の区分が変わる)
  • 収容人員が大幅に増加した場合
  • 内装変更により降下空間に障害物が生じた場合
  • 法改正があった場合(避難器具は遡及適用の対象)

特に「避難器具は法改正があった場合に既存建物にも新基準が適用される」(消防法第17条の2の5)点は、スプリンクラー設備等とは異なる重要な特性です。

設置基準の全体像をつかむ学習の流れ

第5類の法令類別(4問)をカバーするために、設置基準の学習は次の順序で進めると理解しやすいです。

  1. 施行令第25条の表を読んで「用途・階・収容人員」の3条件の仕組みを理解する
  2. 施行令第25条の括弧書きで「避難階と11階以上は除外」を確認する
  3. 収容人員の算定方法(施行規則第1条の3)を確認する
  4. 施行規則第26条で免除・個数の減少条件を確認する
  5. 施行規則第27条で設置位置の基準(降下空間・操作面積・取り付け金具)を確認する

これら5つのステップを順番にこなすことで、設置基準に関する問題をほぼすべてカバーできます。施行令第25条の表を覚えることに集中しすぎず、設置免除(施行規則第26条)や設置位置基準(施行規則第27条)も合わせて学習することが重要です。

設置基準の確認は法令の原文から行う

設置基準は法改正によって変わる場合があります。試験直前や実務での確認は、e-Gov法令検索(消防法施行令第25条)の原文を参照してください。

出典:消防法施行令第25条(e-Gov法令検索・消防法施行令)・消防法施行規則第26条・第27条(同)

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作成日:2026年11月5日 作成者:fufumumu_design
出典:消防法施行令第25条・消防法施行規則第26条・第27条(e-Gov法令検索)

この記事を書いた人

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