障害者グループホームは、個人では開業できない。法人格が必要な理由と法人の選び方。

障害者グループホームは、個人では開業できない。法人格が必要な理由と法人の選び方。 福祉事業の開業と運営





障害者グループホームは、個人では開業できない。法人格が必要な理由と法人の選び方。

障害者グループホームは、個人では開業できない。法人格が必要な理由と法人の選び方。

障害者グループホーム(共同生活援助)は、個人事業主・個人では開業できません。障害者総合支援法に基づく指定を受けるためには、法人格が必要です。これは訪問介護や放課後等デイサービスと同じ要件です。

この記事では、法人格が必要な根拠条文、法人形態の選び方、設立にかかる費用と時間を整理します。

個人では開業できない。法人格が指定の要件。

障害者総合支援法の規定(第36条第3項第1号・都道府県条例)に基づき、指定障害福祉サービス(共同生活援助を含む)の事業者は、都道府県知事(または市区町村長)から「指定」を受ける必要があります。

「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」第3条は、指定を受けることができる申請者を「法人」に限定しています。個人・個人事業主は法人ではないため、指定の申請自体ができません。

これは「やる気があれば個人でも申請できる」という話ではなく、制度上の要件です。法人格がなければ、どれだけ準備を進めても指定申請の受付対象になりません。

選べる法人形態は4種類。それぞれの特徴。

グループホームの運営事業者として使われる法人形態は、主に次の4つです。

法人形態 設立費用の目安 設立にかかる時間の目安 資本金 主な特徴
株式会社 約20〜25万円 2〜4週間 1円以上(実質10〜50万円以上) 営利目的が明確・融資を受けやすい・設立後の手続きが比較的シンプル
合同会社(LLC) 約6〜10万円 1〜3週間 1円以上 株式会社より設立費用が安い・社会的信用はやや低め・決算公告義務なし
NPO法人 数千円〜数万円(認証申請費用) 4〜6か月 不要 非営利・社会的信用が高い・認証まで時間がかかる・会員(社員)10人以上の要件
社会福祉法人 数百万円〜 6か月〜1年以上 大規模な基本財産が必要 最も社会的信用が高い・行政との関係が密・設立要件が厳格

(設立費用は登録免許税・公証人手数料等の実費。司法書士等への依頼費用は別途)

グループホームを開業する際に選ばれやすい法人形態。

グループホームの新規開業では、株式会社・合同会社・NPO法人の3つが選ばれるケースが多いです。

株式会社・合同会社は、設立スピードが速く(2〜4週間)、費用も比較的抑えられます。融資を受ける際の信用力は株式会社のほうが高い傾向があります。合同会社は費用を抑えたい場合の選択肢になります。

NPO法人は、社会的な信用・利用者や地域との関係構築という点では有利ですが、設立に4〜6か月かかるため、開業スケジュールに余裕が必要です。会員(社員)10人以上が必要という条件もあります(NPO法人法でいう「社員」は出資者ではなく会員の意味です)。

社会福祉法人は、行政との連携・補助金の受け取りにおいて有利な面がありますが、基本財産の確保や行政の審査に時間がかかり、新規開業での設立は容易ではありません。

法人設立の費用の実際。

法人設立にかかる実費(登録免許税等)の目安は次のとおりです(法務局公式情報より)。

  • 株式会社:登録免許税15万円(資本金×7/1,000が15万円を上回る場合はその金額)+定款認証手数料(公証役場)3〜5万円 → 合計18〜20万円程度
  • 合同会社:登録免許税6万円(資本金×7/1,000が6万円を上回る場合はその金額)・定款認証不要 → 合計6万円程度

これに加えて、司法書士や行政書士への報酬(5〜15万円程度)が必要になる場合があります。自分で手続きを行えば専門家費用は節約できますが、書類の不備があると再申請になるため、初めての場合は専門家に依頼する選択肢も現実的です。

法人設立から指定申請・開業まで。大まかな流れ。

法人設立から開業まで、最低でも3〜6か月かかります。大まかな流れは次のとおりです。

  1. 事業計画の策定・収支の試算
  2. 物件の選定・行政への事前相談
  3. 法人の設立(株式会社・合同会社なら2〜4週間)
  4. 人員の確保(サービス管理責任者・世話人・生活支援員)
  5. 指定申請書類の作成・提出(開業希望日の2〜3か月前)
  6. 指定・開業

都道府県によって申請の受付時期(毎月・隔月・年数回など)が異なります。受付時期を逃すと次の機会まで待つ必要があるため、行政への事前相談で確認しておくことが重要です。

また、物件が住宅として使用できるか(消防法・建築基準法上の要件)、利用定員の設定(2〜10人・複数の共同生活住居をまとめて運営する事業所の場合は15人規模が全国平均)、設備基準(個室7.43㎡以上等)を満たすかどうかも、早い段階で行政に確認しておく必要があります。

開業前に収支を試算する。

法人設立・物件・人員の費用を合計すると、開業時に必要な資金は数百万円規模になります。融資を受ける場合は、収支計画を具体的な数字で示す必要があります。

障害者グループホームの収支を試算できるシミュレーターを公開しています。定員・利用者の障害支援区分・人員・費用・加算を入力すると、月次収支・資金繰り・全国平均との比較を確認できます。事業計画書(印刷用)の自動生成機能もあります。

▶ 障害者グループホーム 開業向け収支シミュレーター


出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第36条第3項第1号・都道府県条例・指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準第3条・同基準第210条第8項第2号(個室面積)・法務局「商業・法人登記の申請書様式」(登録免許税の記載より)。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

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