生活介護の身体拘束廃止未実施減算、通所系の1%と入所系の10%で基準が違う理由。
生活介護の身体拘束廃止未実施減算は、基本報酬の1%だ。これは通所系サービスに共通する減算率で、グループホームなど入所系の10%とは大きく異なる。
なぜ通所と入所で減算率が違うのか。厚生労働省の考え方は、身体拘束が起きやすい状況と、それが利用者に与えるダメージの違いに基づいている。入所施設では24時間の生活管理があり、拘束が長時間にわたるリスクが高い。通所サービスでは利用時間が限られるため、入所系より低い1%が設定されている。
ただし、生活介護は障害支援区分の高い利用者(区分4以上が原則)が多い。自傷行為や激しい行動障害への対応で、知らぬ間に身体拘束に当たる行為が起きることがある。だからこそ研修と委員会が義務とされている。
生活介護に身体拘束適正化義務が課される根拠条文。
根拠は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(基準省令)の生活介護に関する条文だ。
指定生活介護事業者は、指定生活介護の提供に当たっては、身体的拘束等の適正化を図るため、次に掲げる措置を講じなければならない。
一 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
二 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
三 従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
(指定障害福祉サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 生活介護に関する条文より引用)
研修の「定期的」の水準は解釈通知(障発0330第12号)が年1回以上と示している。委員会も年1回以上の開催が求められる。
生活介護で「身体拘束」に当たる行為の例。
生活介護では、高い障害支援区分の利用者が多い。強度行動障害のある利用者に対して、安全のためにとった措置が身体拘束に当たる場合がある。
厚生労働省の「身体拘束ゼロへの手引き」は、次の行為が拘束に当たる可能性があるとしている。
- 自傷を止めるためにミトン型手袋をはめること
- 転倒を防ぐためにつなぎ服や腰ベルトを使うこと
- 安全のために部屋から出られないようにすること
- 行動を抑えるために薬を必要以上に使うこと
生活介護で特に注意が必要なのは「強度行動障害への対応」だ。自傷行為を止めるための身体介助は必要な支援だが、その手段と程度によっては身体拘束に当たると判断される可能性がある。
身体拘束のやむを得ない例外として認められる3要件は「切迫性・非代替性・一時性」だ。これをすべて満たさない限り、身体拘束は禁止される行為だ。
委員会・指針・研修の3点が欠けると減算の対象になる。
身体拘束廃止未実施減算は、委員会の開催・指針の整備・研修の実施という3点のセットのどれかが欠けた場合に発生する。基本報酬の1%が毎月削られ続ける仕組みだ。
生活介護の基本報酬は、障害支援区分・定員・所要時間の組み合わせで決まる。1%の減算を具体的にイメージするには、主な報酬区分での計算が参考になる。定員30人・区分5・3時間以上5時間未満の生活介護を例に取ると、基本報酬から毎月継続して1%が引かれ続ける額は、年間で無視できない水準になる。
「身体拘束はしていない」という事業所でも、研修と委員会を行っていなければ減算の対象になる。これが通所系サービスの共通ルールだ。
研修記録と委員会記録の残し方。
身体拘束の研修記録として残す内容は次のとおりだ。
- 実施日
- 参加した職員の名前と確認の署名または印
- 研修のテーマと使用した資料
委員会の記録は、開催日・出席者・議題・協議した内容・決定事項を残す。委員会の記録は運営指導で提出を求められる。議事録の様式は自由だが、最低限の情報が書かれていれば問題ない。
研修と委員会は同日に続けて行う事業所が多い。研修で身体拘束に関する事例を学び、委員会でその事例を議題として協議するという流れは効率的だ。
生活介護の年間計画における配置。
生活介護の法定研修の義務テーマは4つだ。
| テーマ | 研修の年間回数 | 訓練の年間回数 | 委員会 |
|---|---|---|---|
| 虐待防止 | 年1回以上 | なし | 年1回以上 |
| 身体拘束の適正化 | 年1回以上 | なし | 年1回以上 |
| 感染症 | 年2回以上 | 年1回以上 | なし |
| BCP | 年1回以上 | 年1回以上 | なし |
感染症だけ年2回以上のため、12ヶ月の年間計画に感染症を2回配置し、残りの10ヶ月にBCP研修・BCP訓練・虐待防止研修・委員会・身体拘束研修・委員会などを割り振る。キットで用意している12テーマを毎月1テーマずつ消化する形が、担当者の負担を平準化する上で現実的だ。
生活介護向けの法定研修ツール。
生活介護向けの法定研修・訓練キットを公開している。身体拘束の適正化を含む12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案・年間計画を1つのツールで作れる。
無料版では虐待防止の1テーマをすべての機能で試すことができる。


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