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グループホームの意思決定支援は、基準に明記された義務です。「利用者が自分で決める」という場面は、食事・外出・金銭の使い方・医療への同意など、日常の中に何度も出てきます。この記事では、共同生活援助(グループホーム)における意思決定支援の根拠と義務、そして研修でどう伝えるかをまとめます。
意思決定支援、何が義務か
指定障害福祉サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第210条の5第2項では、共同生活援助事業者に対して、サービス提供にあたり利用者の意思決定の支援に配慮するよう義務付けています。
この条文は、利用者の意思を「引き出し・尊重し・代弁する」というプロセスを事業者が意識的に実施することを求めています。単に「希望を聞く」だけでなく、利用者が自分で考え、表現し、選べるよう支援することが要求されています。
出典:平成18年厚生労働省令第171号第210条の5第2項
意思決定支援ガイドラインの位置づけ
厚生労働省は2017年3月に「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(障発0331第15号)を発出しています。グループホームの運営においてこのガイドラインは、具体的な支援の進め方の基礎となる文書です。
ガイドラインが示す意思決定支援の3つの基本原則は以下のとおりです。
- 本人の意思の尊重:本人が自ら選んだことを最大限尊重する。たとえ支援者が「適切でない」と感じても、本人の選択を否定しない
- 情報提供:本人が意思を形成するために必要な情報を、本人が理解できる形で提供する
- 意思形成の支援:本人が意思を表明できるよう、環境を整えコミュニケーションを工夫する
出典:「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(障発0331第15号・平成29年3月31日)
グループホームならではの場面:生活の中の意思決定
グループホームは「生活の場」です。利用者が1日のほとんどを過ごす場所で、意思決定が必要な場面が日常的に発生します。施設(入所型)や通所と違い、「今日の昼食を何にするか」「週末はどこに出かけるか」「どの服を着るか」という小さな判断が、生活の中に毎日あります。
グループホームの意思決定支援で特に押さえておきたい場面をまとめます。
| 場面 | 意思決定支援の具体例 |
|---|---|
| 食事・生活リズム | 好きな食べ物・起床時間・入浴のタイミングを本人が選べるよう選択肢を示す |
| 外出・余暇 | 「行きたい場所」「会いたい人」を本人が言いやすい環境をつくる |
| 金銭の使い方 | 自分のお金の使い方を本人が把握・決定できるよう支援する(預かり金管理との連動) |
| 医療 | 受診・処方変更について、本人が理解した上で同意できるよう情報をわかりやすく伝える |
| 住まいの変更 | 退居・転居について、本人の意向を最初に確認する |
意思が読み取りにくい利用者への対応
グループホームでは、言語によるコミュニケーションが難しい利用者が入居していることがあります。このような方への意思決定支援は、「言葉で聞く」以外の方法が必要になります。
ガイドラインでは「意思の推定」という考え方を示しています。本人が意思表示できない状況では、以下の順序で意思を推定することが求められます。
- 本人の過去の意思表示・行動の記録を確認する(支援記録・個別支援計画の経緯)
- 本人をよく知る家族・関係者の意見を聞く
- 支援チームで「本人はどう感じているか・何を望んでいるか」を話し合う
重要なのは、「チームで話し合った結果」を記録に残すことです。誰かが1人で判断するのではなく、複数の視点で検討したプロセスが記録されていることが、後の運営指導でも確認されます。
出典:「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(障発0331第15号)
支援チームの構成と役割
意思決定支援はスタッフ1人で行うものではありません。ガイドラインでは「意思決定支援チーム」として、以下のメンバーを想定しています。
- 本人(中心)
- グループホームの担当支援員・サービス管理責任者
- 家族・後見人
- 相談支援専門員
- 医師・看護師・作業療法士など(必要に応じて)
グループホームの支援員は、日常の中で本人と最も接する立場です。「最近この人はこういう反応をするようになった」「この場面では嫌がる様子がある」という気づきを、支援チーム全体に伝える役割を担っています。
研修では「支援員が観察した気づきを、どのタイミングでどこに伝えるか」を具体的に確認しておくことが実用的です。
意思決定支援と個別支援計画の関係
個別支援計画の作成プロセスは、意思決定支援の場面でもあります。サービス管理責任者がアセスメントを行う際に「本人が何を望んでいるか」を確認し、それを計画に反映させる。この流れ自体が意思決定支援の実践です。
研修では「計画を作るとき、本人はどこまで関わっているか」を振り返ることで、意思決定支援の現状を確認する材料になります。
- アセスメントに本人が参加しているか
- 計画の内容を本人が理解しているか(説明の仕方)
- 「本人が言ったこと」が計画に反映されているか
- モニタリングで「今も同じ気持ちか」を確認しているか
「本人のため」という思い込みへの注意
グループホームの現場で意思決定支援の研修を行うときに、必ず伝えてほしいことがあります。
支援の仕事を続けているスタッフほど、「この人のためにはこうした方がいい」という判断が習慣化してきます。本人に聞く前に決めてしまう、本人の言葉を「わかっていない」と判断して別の方向に誘導するといったことが、日常の中で気づかないうちに起きます。
ガイドラインは、これを「意思決定支援とは言えない」と明確に述べています。意思決定支援の出発点は「本人はどう思っているか」であり、支援者がよかれと思う方向に向けることとは違います。
研修で「最近こんな場面があった」を話し合う時間をとることで、実際の支援を振り返るきっかけになります。
記録と運営指導への備え
意思決定支援の研修の記録として残すべき項目は以下のとおりです。
- 実施日・実施時間
- 参加した職員の氏名
- 研修の内容(ガイドラインの基本原則・グループホームでの場面・事例検討など)
- 振り返り(気づいた点・次回への課題)
運営指導では、個別支援計画の作成プロセスに本人の意向が反映されているかが確認されることがあります。研修の記録に加えて、「計画に本人の希望を記載した経緯」を残しておくことも有用です。
まとめ
グループホームの意思決定支援は、特別なプログラムを用意することではありません。「今日の夕食は何がいいか」「週末は何をしたいか」という日常の場面で、本人が選ぶ機会をつくることが出発点です。研修では「自分の支援の中に、本人に聞かずに決めていた場面はないか」を振り返ることが、最も実際の支援に直結します。意思決定支援GLの基本原則を理解した上で、グループホームの生活の場に合わせた具体的な実践を積み上げてください。
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グループホームの法定研修の全体像は、こちらの記事をご覧ください。
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