認知症GHの医療連携体制加算:3種類の要件と月収入への影響

認知症GHの医療連携体制加算は、看護師の対応体制に応じてⅠイ(57単位/日)・Ⅰロ(47単位/日)・Ⅰハ(37単位/日)の3種類があります(令和6年厚生労働省告示第128号)。1ユニット9人で全員が対象の場合、Ⅰイを取得すると月間で約15万〜16万円、年間で約190万円の報酬増になります。看護師が自法人にいない場合でも、訪問看護事業所との委託契約で算定できます。

医療連携体制加算の3区分比較

区分 単位数 看護師の対応体制
Ⅰイ 57単位/日 看護師が24時間連絡体制を確保し、かつ定期的(週1回以上)に訪問
Ⅰロ 47単位/日 看護師が24時間連絡体制を確保し、随時(利用者の状態変化時等)に対応
Ⅰハ 37単位/日 看護師が定期的(月2回以上)に訪問

Ⅰイはすべての区分の中で最も高く、「24時間の連絡体制+週1回以上の定期訪問」が条件です。Ⅰハは月2回以上の定期訪問で算定でき、算定の敷居が最も低い区分です。

月間・年間の収入増加額(試算)

区分 月間増加額(1ユニット9人・単価10.00円) 年間増加額
Ⅰイ(57単位) 57×10.00×9×30.4日=約156,024円 約187万円
Ⅰロ(47単位) 47×10.00×9×30.4日=約128,592円 約154万円
Ⅰハ(37単位) 37×10.00×9×30.4日=約101,160円 約121万円

上記は稼働率100%・その他地域の試算です。地域区分が高い場合(1級地:単価11.40円など)は収入増加額がさらに大きくなります(地域区分と単価の違い)。

自法人に看護師がいない場合の算定方法

自法人の職員に看護師がいなくても、訪問看護事業所との委託契約を結ぶことで算定できます。委託契約には、24時間の連絡体制・訪問頻度・対応できる医療処置の範囲を明記します。Ⅰイを算定する場合は週1回以上の訪問を契約内容に含める必要があります。

委託費用(訪問看護費)は人件費に含まれるため、加算額と委託費用の差引きで実際の収益増加分を確認します。

算定を始める前に必要な準備

  • 看護師または訪問看護事業所との委託契約の締結
  • 各利用者のケアプラン(計画書)への医療連携の記載
  • 市区町村への体制加算の届出(算定開始前に届出が必要)
  • 訪問・連絡対応の記録(実地指導でチェックされる)

届出なしに算定すると過誤請求になるため、算定開始前に市区町村の介護保険担当窓口に届出の様式と提出先を確認します。

看取り介護加算との関係

看取り介護加算(死亡日:1,280単位・死亡前4〜30日:680単位/日等)を算定する場合、医療連携体制が整っていることが実務上の前提となります。終末期の医療対応(嘱託医との連携・看護師の往診手配等)を速やかに行うために、医療連携体制加算ⅠイまたはⅠロの体制を先に整えておくことが望ましいです。

収支全体での位置づけ

全国平均の収支差率は3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)です。医療連携体制加算Ⅰイを取得すると、1ユニット9人で年間約187万円の収入増になります。収支への影響は認知症GHは儲かるのか、損益分岐の考え方は損益分岐点の稼働率をあわせて確認してください。

医療連携体制加算の算定要件の詳細比較

区分 単位数 要件のポイント
Ⅰイ 57単位/日 看護師が24時間連絡体制・月1回以上の訪問・定期的な健康管理
Ⅰロ 47単位/日 看護師が24時間連絡体制・定期的な健康管理(訪問なし)
Ⅰハ 37単位/日 看護師または准看護師が月1回以上訪問・定期的な健康管理

いずれも「利用者に対する健康管理や療養上の指導が必要な場合に医師や看護師が対応できる体制を整備していること」が共通要件です(令和6年厚生労働省告示第128号)。外部の訪問看護事業所との委託契約で満たすことも可能です。

委託契約と自己雇用の費用対効果の比較

看護師を自法人で雇用するか、訪問看護事業所と委託契約するかは収益計画に直結します。自己雇用の場合、常勤看護師の月人件費は30〜40万円程度(社会保険料含む)、訪問看護事業所への委託費は月5〜15万円程度が目安です。1ユニット9人でⅠイ(57単位)を取得した場合の月間加算収入は約156,000円(57×10.00×9×30.4)。委託費が月10万円以内に収まれば黒字化できます。

看護師との連絡体制の整備方法

24時間の連絡体制を確保するには、①自法人に看護師を雇用してオンコール対応させる、②訪問看護事業所と委託契約(24時間対応の事業所が条件)を結ぶ、のいずれかが一般的です。連絡体制が確認できる書類(委託契約書・勤務体制表等)を整備することが実地指導の確認ポイントです。緊急時の連絡先と対応手順を事業所内に掲示しておくことも推奨されます。

令和6年度改定での変更点

令和6年度改定で医療連携体制加算は再編され、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅰハの3区分に整理されました(改定前はⅠ=39単位・Ⅱ=49単位・Ⅲ=59単位)。単位数は全体的に引き上げられ、医療ニーズへの対応強化が図られました。改定前にⅡを算定していた事業所は、令和6年4月以降の体制に応じてⅠイ〜Ⅰハへの移行が必要です。

看取り介護加算との組み合わせ効果

医療連携体制加算ⅠイまたはⅠロを取得している事業所は、看取り介護加算も算定しやすい体制が整っています。24時間の看護師連絡体制があることで、看取り期の急変時に医師・看護師が迅速に対応できます。2つの加算を組み合わせると月間の追加収入は20〜25万円程度になり、収益の安定化に寄与します。

出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(令和6年厚生労働省告示第128号)
  • 令和7年介護事業経営実態調査(厚生労働省)

関連記事:収入は要介護度と単位数でどう決まるか/夜間支援体制加算

加算を取得するための具体的な準備手順

医療連携体制加算を算定するには、サービス開始前に以下の準備が必要です。

  1. 看護師または訪問看護事業所との契約:区分ごとに定められた体制(24時間連絡・訪問頻度)を契約書に明記します。訪問看護事業所と委託契約を結ぶ場合は、事業所の指定を受けていることを確認します。
  2. 体制加算の届出:算定開始前に市区町村の介護保険担当窓口へ届出を提出します。届出なしに算定すると過誤請求になります。
  3. ケアプランへの記載:各利用者の計画書(ケアプラン)に医療連携の内容(対応者・頻度等)を記載します。
  4. 記録の整備:看護師の訪問記録・連絡対応の記録を月ごとに保管します。実地指導でこれらの記録が確認されます。

算定できない主なケース

  • 届出を提出していない状態で算定した場合
  • 看護師が訪問頻度の要件(Ⅰイ:週1回以上・Ⅰハ:月2回以上)を実際に満たしていない場合
  • 利用者のケアプランに医療連携の記載がない場合

開業時の収支計画に組み込む方法

医療連携体制加算は安定した収益の上乗せになります。1ユニット9人でⅠイを取得した場合、年間約187万円の収入増です。開業時の収支計画に算定を前提として組み込む場合は、委託費用(訪問看護費)とのネットで採算を確認します。収支全体の試算は認知症GH収支シミュレーターをご活用ください。

加算の算定状況と収支への寄与

医療連携体制加算は、認知症GHの利用者の多くが高齢・医療依存度が高い傾向があるため、取得している事業所が多い加算です。夜間支援体制加算(Ⅰ=50単位/日)と合わせて取得すると、基本報酬に対して合計107単位/日(Ⅰイ57+夜間Ⅰ50)の上乗せになります。

1ユニット9人・その他地域で全員が対象の場合の月収入への影響(稼働率100%):

加算の組み合わせ 月額上乗せ(単価10.00円)
医療連携Ⅰイ(57単位)のみ 約156,024円/月
夜間支援Ⅰ(50単位)のみ 約136,800円/月
両方取得(107単位) 約292,824円/月

加算を複数取得することで収支差率の改善が見込めます。収支全体への影響は損益分岐点の稼働率で試算できます。

加算取得の判断基準

医療連携体制加算を取得するかどうかは、委託費用(訪問看護費用等)との差引きで判断します。Ⅰハ(37単位/日)であれば月2回の看護師訪問で算定でき、訪問1回あたりの委託費用が5万円以下であれば収支はプラスになります。取得を検討する際は、地域の訪問看護事業所に見積もりを依頼して試算します。夜間支援体制加算との組み合わせや比較については夜間支援体制加算の記事をあわせてご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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