生活介護の法人形態別収支差率、社会法人6.1%・NPO8.7%の傾向

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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)では、生活介護の収支差率を法人形態別に確認できます。生活介護は他のサービスと比べて法人形態による収支差率の差が小さく、安定した収益構造を持つサービスです。

法人形態別の収支差率一覧

法人形態 事業所数 平均年収入 収支差率
NPO法人 47件 3,750万円 8.7%
その他 33件 7,667万円 7.1%
社会法人(他含む) 241件 9,721万円 6.1%
営利法人 47件 3,181万円 5.7%

調査368事業所の中で社会法人(社会福祉法人等を含む)が241件(65%)と圧倒的多数を占めています。収支差率は6〜9%の範囲に収まっており、法人形態による差は最大2.9ポイントと小さい水準です。

生活介護で法人形態による収支差率の差が小さい理由

放課後等デイサービス(社会法人▲2.0%・営利12.6%で14.6ポイント差)や就労移行支援(社会法人11.7%・営利2.6%で9.1ポイント差)と比べ、生活介護は法人形態による差が小さい水準です。その理由として次の要因が考えられます。

  • 社会法人の事業所数が多く、平均に安定感がある:241件(65%)が社会法人のため、全体平均を引き上げる特定法人の影響が少ない
  • 利用者が区分4〜6の重度者中心で、基本報酬単価が高い:生活介護は障害支援区分の高い利用者が多く、基本報酬が他サービスより高い水準。法人形態に関わらず収入の下限が高い
  • 定員が大きく、規模の経済が効きやすい:調査事業所の平均定員は28人と7サービスの中で最大。大規模事業所では固定費が分散されやすく、法人形態による人件費構造の差が収支差率に与える影響が相対的に小さい

NPO法人の生活介護が8.7%と高い理由

NPO法人の47事業所の平均年収入は3,750万円と社会法人(9,721万円)の約4割の規模ですが、収支差率は8.7%と最高水準です。

NPO法人が運営する生活介護では、小規模事業所が多く、家賃・減価償却費等の固定費が低い傾向があります。また、利用者数が少ない分、個別の支援を手厚く行いやすく、加算収入の単価が高くなるケースがあります。

社会法人の収支差率6.1%の背景

社会法人(241件)の平均年収入は9,721万円と最大規模ですが、収支差率は6.1%です。大規模事業所では、法人全体の管理費の按分・職員の給与水準の高さ・役員報酬等が費用として計上されるため、収支差率が高くならないケースがあります。

同じ社会法人でも、法人全体の財務と生活介護事業所単独の収支は異なります。生活介護の事業所単体の経営診断を行う場合は、法人内の費用按分の基準を確認することが重要です。

社会法人の生活介護と他サービスの比較

社会法人の収支差率を他のサービスと比べると、生活介護6.1%は中程度の水準です。放デイ(▲2.0%)・短期入所(▲1.6%)で社会法人が赤字になりやすいのと対照的に、生活介護では社会法人も6%以上の収支差率を出せています。

この違いは、生活介護の基本報酬水準の高さにあります。障害支援区分6の利用者への基本報酬は他サービスより高く、社会法人が配置する常勤職員のコストを上回る収入を確保しやすい構造です。社会法人が安定的に運営できているサービスという点で、生活介護は他サービスより恵まれた報酬体系にあります。

生活介護の法人形態別の利用者構成の違い

法人形態によって生活介護の収支差率に差がついている背景には、利用者の障害支援区分の構成の違いも影響していると考えられます。

社会法人の平均年収入は9,721万円と最大規模ですが、平均定員は公表されていません(全体平均28人)。大規模な社会法人の生活介護施設では、区分4〜6の利用者が混在するケースが多く、区分が高い利用者の支援に必要なコスト(専門職の配置等)も高くなる傾向があります。

一方、小規模のNPO法人(平均年収入3,750万円)では、利用者の区分構成が偏っている場合(区分4〜5が多い等)は、支援コストが抑えられる可能性があります。

利用者の障害支援区分は加算収入と支援コストの両方に影響するため、自事業所の区分構成を把握したうえで、加算収入と人件費のバランスを確認することが重要です。

生活介護で収支差率を左右する共通要因

法人形態を問わず、生活介護の収支差率に最も大きく影響するのは次の3点です。

  1. 利用者の障害支援区分の構成:区分6の利用者が多いほど基本報酬単価が高く、収入が増える。区分の高い利用者の受け入れ体制(職員配置・加算要件)が整っているかが収益性に直結する
  2. 稼働率(WAM参考値84.2%):稼働率が全国参考値を下回っている場合、収支差率の改善より前に稼働率の改善が優先課題になる
  3. 加算の取得状況:重度障害者支援加算・医療連携体制加算・強度行動障害支援者養成研修修了者配置加算等が収入増加に寄与する

生活介護は7サービスの中で赤字割合が最低(25.3%)のサービスですが、法人形態を問わず、稼働率と加算の取得状況が収支差率の水準を決定する要因です。

生活介護で稼働率(WAM参考値84.2%)を維持しながら加算収入を積み上げることが、法人形態に関わらず収支差率を6〜9%の水準に維持するための基本です。自事業所の収支差率を全国参考値(中央値7.9%)と比較して大きく下回っている場合は、まず稼働率の確認から始め、稼働率が問題ない場合は加算の取得状況を確認します。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。法人形態別の詳細は同調査の事業所別集計にもとづきます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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