短期入所の法人形態別収支差率、社会法人▲1.6%赤字・NPO12.9%の差の理由

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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)では、短期入所の収支差率を法人形態別に確認できます。短期入所は調査事業所337件のうち社会法人が247件(73%)を占め、その平均収支差率が▲1.6%(赤字)という点が特徴的です。

法人形態別の収支差率一覧

法人形態 事業所数 平均年収入 収支差率
NPO法人 26件 502万円 12.9%
その他 56件 1,179万円 10.4%
営利法人 8件 1,375万円 14.3%(n=8、参考値)
社会法人(他含む) 247件 836万円 ▲1.6%

社会法人は247件と最多ですが、平均収支差率が▲1.6%(赤字)です。NPO法人・その他は10%以上と高い収支差率です。営利法人はn=8と非常に少ないため、14.3%は参考値として見ておく必要があります。

社会法人の短期入所が赤字になりやすい理由

社会法人の短期入所が平均で赤字(▲1.6%)になっている背景には、構造的な要因があります。

  • グループホーム・生活介護等との併設が多い:社会法人が運営する短期入所は、既存の障害福祉施設に「ショートステイ室」として付帯設置されているケースが多い。この場合、法人全体の費用が按分されるため、短期入所単体の収支が悪化する
  • 利用率(稼働率)の変動が大きい:短期入所の利用者は急な依頼・キャンセルが多く、稼働率の管理が通所サービスより難しい。特に緊急ショートステイに対応している事業所では、空き定員が増えやすい
  • 夜間・休日対応の人件費:短期入所は365日・24時間対応が必要で、夜間支援員の人件費がかさむ。定員が少ない(調査事業所の平均定員7人)割に固定的な夜間コストが発生する

NPO法人・その他が高収支差率になる理由

NPO法人(12.9%)・その他(10.4%)の短期入所が高い収支差率を出せる理由には、次の特徴があります。

  • 規模が小さく費用が少ない:NPO法人の平均年収入は502万円と最小規模。定員が少ない分、夜間支援員の配置コストも少なく、収支差率が高くなりやすい
  • 本業の施設があり、短期入所を効率的に運営できる:「その他」には特定非営利活動法人以外の社団法人・財団法人等が含まれる。既存施設の一部を活用した低コスト運営が可能なケースがある

短期入所の職員構成と人件費の特徴

短期入所の調査事業所(平均)の職種別月給参考値は次のとおりです。

職種 常勤月給(参考)
施設長・管理者 405,367円
専門職(生活支援員・世話人等) 316,957円
生活支援員 272,580円

短期入所の人件費率は調査事業所全体で69.2%と7サービスの中でも高い水準です(就労移行支援の64.2%・放デイの64.4%より高い)。定員平均7人という小規模にもかかわらず、夜間・早朝・休日対応が必要なため、常勤職員の配置コストが相対的に高くなります。

施設長・管理者の月給が405,367円と最高水準なのも、24時間・365日対応の負担が背景にあります。小規模事業所では施設長・管理者が現場支援も兼務するケースが多く、高単価職員の実務比率が高くなりやすいです。

短期入所全体の収支差率が低い理由(サービス全体の課題)

短期入所は7サービスの中で収支差率の平均値(2.3%)が最低水準のサービスです(短期入所の記事別データ参照)。これは法人形態に関わらず、短期入所特有の構造的な問題があります。

最も大きな課題は「空き定員の収入ゼロ」です。短期入所は入居していない日の収入がゼロです(グループホームの空き居室と同じ構造)。しかし、スタッフは常時配置が必要です。定員7人の事業所が稼働率70%で運営した場合、毎日2.1室が空き状態であり、その分の収入が失われます。

短期入所の経営で確認すべき指標

  1. 稼働率(利用率):月次の稼働率を記録し、平均を確認する。緊急対応で空きを受け付けている事業所は、計画利用者の確保と緊急対応のバランスを取る
  2. 法人内の費用按分ルール:社会法人で短期入所の収支差率が低い場合は、法人管理費の按分方法を確認する。按分基準の見直しで、実態に即した収支把握ができる
  3. 加算の取得状況:緊急短期入所加算(緊急利用者の受け入れ)・個別支援加算等が収入増加に寄与する。要件を確認して未取得のものがあれば検討する

短期入所は社会法人が全体の73%を占めながら平均赤字というサービスです。全体の収支差率(中央値2.8%)に近い水準を維持するためには、稼働率の管理と加算の活用が欠かせません。

短期入所の赤字事業所の割合と対処法

令和6年度の短期入所の調査事業所337件のうち、赤字(収支差率がマイナス)の事業所は全体の約37.3%に上ります(調査結果から推計)。社会法人が平均赤字(▲1.6%)であることを考えると、多くの社会法人運営の短期入所が赤字状態にあります。

赤字の短期入所が取れる対処法として、次の2つが代表的です。

  • 他事業との一体的な管理費按分の見直し:GH・生活介護等と一体的に運営している場合、管理費・間接費の按分基準を見直すことで短期入所単独の収支が改善するケースがあります。実態に即した費用按分を行うことで、短期入所が「見かけ上の赤字」になっていないかを確認します
  • 緊急短期入所としての位置づけの明確化:採算性より地域貢献・機能補完として短期入所を運営している法人もあります。この場合は短期入所単独の採算より法人全体の使命・役割として位置づけ、他事業の黒字で補填することを経営判断として明示的に行うことが重要です

短期入所の収支差率を他事業と切り離して単独で評価する場合、法人全体の中での短期入所の位置づけ(採算重視か地域貢献重視か)を明確にしたうえで、経営診断を行うことが実態に合った判断につながります。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。法人形態別の詳細は同調査の事業所別集計にもとづきます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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