短期入所の収支差率、令和5年度の6.8%から2.8%に急落した理由

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障害福祉サービスの短期入所(ショートステイ)の収支差率を、厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)から整理しました。

令和6年度決算の全体の数字

指標 令和6年度(R6) 令和5年度(R5)
収支差率(表の平均) 2.3% 5.4%
収支差率(中央値) 2.8% 6.8%
調査事業所数 337 —
給与費率(人件費率) 69.2% —
赤字割合(収支差率<0%) 41.8% —

令和5年度から令和6年度にかけて、中央値は6.8%から2.8%へ4ポイント低下しています。7サービスの中で最も大きな落ち幅です。令和6年4月の報酬改定が収益に影響した可能性がありますが、この調査データだけでは原因を特定できません。

赤字41.8%は7サービスの中で最も高い

収支差率がマイナスの事業所の割合は41.8%で、調査対象の7サービスの中で最も高い数字です。10事業所のうち4事業所以上が赤字という状況です。

短期入所は夜間の対応が必要なため、夜勤手当を含む人件費が相対的に高くなります。給与費率69.2%は7サービスの中で最も高い水準(生活介護69.1%と並ぶ)です。収支差率の水準(中央値2.8%)と人件費率の高さ(69.2%)の組み合わせは、コスト構造として厳しい状況を示しています。

経営主体別では社会福祉法人が赤字

以下の数字は当方が調査データから計算したものです(収支差 ÷ 収入)。

経営主体 収支差率(表の値) 事業所数
社会福祉法人(社協を含む) -1.6% 247
NPO法人 12.9% 26
医療法人 14.3% 8
その他 10.4% 56

注目すべきは社会福祉法人(247事業所・全体の73%)の収支差率が-1.6%と赤字であることです。短期入所の運営の大部分を占める社会福祉法人が赤字という結果は、他のサービスとは大きく異なります。

一方、NPO法人(12.9%)・医療法人(14.3%)・その他(10.4%)は黒字が高い水準です。ただしNPO法人は26事業所・医療法人は8事業所と少ない件数のため、個別事業所の影響を強く受ける点に注意が必要です。

区分別の中央値は原典に掲載されておらず、上記は表の値(金額加重の平均)です。

短期入所に「営利法人」の分類がない理由

他のサービスの調査結果には「営利法人」の区分がありますが、短期入所の調査には含まれていません。これは、短期入所を運営する事業者に営利法人が少ない(または調査対象に含まれていない)ためと考えられますが、原典には明示の説明がありません。

職種別月給(短期入所・全国平均)

短期入所の職種別月給(2026年4月分)の全国平均は次のとおりです。

職種 常勤月給(全国平均) 非常勤月給(全国平均)
施設長・管理者 405,367円 —
看護職員 316,957円 134,300円
生活支援員 272,580円 125,516円

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和7年4月分の給与)

短期入所の事業規模の特徴、定員7床・年収880万円

調査事業所の平均を見ると、定員7床・年間収入880万円という小規模な事業です(令和6年度決算)。定員1床あたりの年間収入は126万円(月10.5万円)です。

他のサービスと比べると生活介護(定員28人・年収7,939万円)・就労移行支援(定員14人・年収2,878万円)のどちらより規模が小さく、「サブ事業」として位置づけられることが多いことが数字にも表れています。

短期入所が7床という小さい定員になるのは、グループホームや障害者支援施設の空き居室を活用して行うケースが多いためです。専用に施設を建設するより、既存の居住系施設に付設するかたちで運営されています。

短期入所単独での経営は難しい構造

短期入所は、グループホームや障害者支援施設などの居住系サービスが空きのある居室を活用して行うケースが多く、短期入所単独での収益確保が難しい構造があります。

収支差率が2.3%(平均)という状況で、夜間の人員配置コストを賄いながら黒字を維持するためには、稼働率の管理(空き日数をどれだけ減らせるか)が重要な課題になります。

短期入所の経営診断で確認すべき2つのポイント

短期入所の経営診断では、特に次の2点に注目することを推奨します。

  1. 空き日数の管理:定員7床の事業所で1日の空きが1床増えると、年間の収入はその分減ります。定期的な空き状況の把握と、相談支援事業所・レスパイト先をひとつでも増やす工夫が、稼働率の安定につながります
  2. 本体施設との費用按分:グループホームや障害者支援施設に付設した短期入所の場合、夜間支援員の人件費・水道光熱費・食費などのコストをどう按分するかが収支に影響します。本体サービスに寄せすぎると短期入所が赤字に見える一方、適切に按分することで実態に近い収支把握ができます

社会福祉法人が73%を占めながら赤字になっている背景

短期入所全体の事業所数337のうち247(73%)が社会福祉法人で、その収支差率は-1.6%と赤字です。他のサービスでは社会福祉法人が赤字になることはほとんどないため、短期入所の特殊性を示しています。

考えられる理由のひとつは、社会福祉法人が運営する大規模な入所施設(定員100人超の障害者支援施設など)に付設されたサービスとして短期入所を行っているケースです。この場合、施設全体の収支では黒字でも、短期入所の部分だけを切り出すと、夜勤対応のコスト配賦によって赤字に見える可能性があります。

一方、NPO法人(12.9%)・医療法人(14.3%)が高い収支差率を示すのは、特定の事業所が高い収益を上げているためと考えられますが、件数が少ない(NPO26件・医療法人8件)ため、個別事業所の影響を強く受けています。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算・令和7年4月分給与)。経営主体別の収支差率は当方が原典データから計算したものです。厚生労働省が作成したものではありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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