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就労移行支援の収支差率を、厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)から整理しました。
令和6年度決算の全体の数字
| 指標 | 令和6年度(R6) | 令和5年度(R5) |
|---|---|---|
| 収支差率(表の平均) | 6.0% | 8.2% |
| 収支差率(中央値) | 4.5% | 6.0% |
| 調査事業所数 | 296 | — |
| 給与費率(人件費率) | 64.2% | — |
| 赤字割合(収支差率<0%) | 39.9% | — |
令和5年度と比べると、収支差率の平均は8.2%から6.0%と2.2ポイント低下、中央値も6.0%から4.5%へ下がっています。令和6年度の報酬改定が影響している可能性があります。
稼働率69.2%という構造的な低さ
就労移行支援の収支が不安定になりやすい最大の理由は、稼働率の低さです。
福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)では、就労移行支援の稼働率参考値は69.2%です。放課後等デイサービス(87.8%)・生活介護(84.2%)・グループホーム包括型(85.7%)と比べると、20ポイント近く低い水準です。
この低さには構造的な理由があります。就労移行支援は原則2年の利用期限があり、利用者が就職に成功すると退所します。定員が埋まった状態でも、退所者が出るたびに新規利用者で埋め直す必要があり、定員を常に維持するのが難しいサービスです。
また、就労実績(前年度の就職者数÷前々年度末の登録者数)が一定以上になると基本報酬が上がる仕組みがあります。就労実績が積まれるまでの立ち上げ期は低い区分の報酬で運営することになります。
経営主体別の格差が7サービスで最も大きい
以下の数字は当方が調査データから計算したものです(収支差 ÷ 収入)。
| 経営主体 | 収支差率(表の値) | 事業所数 |
|---|---|---|
| 社会福祉法人(社協を含む) | 11.7% | 76 |
| その他 | 15.5% | 52 |
| NPO法人 | 8.8% | 32 |
| 営利法人 | 2.6% | 136 |
経営主体ごとの格差が非常に大きく、「その他」(15.5%)・社会福祉法人(11.7%)が高い一方で、営利法人(2.6%)が大きく低い結果です。事業所数が最も多い営利法人(136事業所・46%)の収支差率が低い点が、全体の平均6.0%を引き下げています。
この格差には、補助金収入・事業規模・運営年数の違いが影響していると考えられますが、調査データからは原因を特定できません。営利法人は事業所数が多いため、就労移行支援全体の収支動向を左右する存在です。
区分別の中央値は原典に掲載されておらず、上記は表の値(金額加重の平均)です。
職種別月給(就労移行支援・全国平均)
就労移行支援の職種別月給(2026年4月分)の全国平均は次のとおりです。
| 職種 | 常勤月給(全国平均) | 非常勤月給(全国平均) |
|---|---|---|
| 施設長・管理者 | 329,602円 | — |
| サービス管理責任者 | 315,305円 | — |
| 就労支援員 | 264,368円 | 138,458円 |
| 職業指導員 | 239,860円 | 130,778円 |
| 生活支援員 | 239,213円 | 118,621円 |
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和7年4月分の給与)
就労移行支援の事業規模の特徴、定員14人・年収入2,878万円
調査事業所の平均を見ると、定員14人・年間収入2,878万円という規模感です(令和6年度決算)。定員1人あたりの年間収入は206万円(月17万円)になります。
同じ障害福祉でも生活介護(定員28人・年収7,939万円)と比べると、就労移行支援は規模が小さく、スタッフ数も平均5.64人です。定員の小ささは固定費の絶対額を抑えられる一方、1人欠員になったときの収入への影響が相対的に大きくなります。
損益分岐稼働率の考え方
就労移行支援で収益を管理するには、損益分岐稼働率(これ以上の稼働率で黒字になる水準)を把握することが重要です。
概算の例を示します。定員20人・就労実績区分III(標準的な水準)・人件費率64%の事業所で考えると:
- 稼働率80%:20人×0.8=16人が利用。収入はおよそ3,600万円程度(報酬単価・加算によって異なる)
- 損益分岐点:人件費2,304万円÷収入比率 = 損益分岐の稼働率は報酬単価次第
実際の損益分岐稼働率は報酬単価・加算・固定費の構成によって変わるため、自事業所の数字で試算するのが正確です。WAMの参考稼働率69.2%を出発点に、現在の稼働率との差を確認することが診断の第一歩になります。
稼働率の安定が収支改善の鍵になる
就労移行支援で経営診断を行う際、最も注目すべきは稼働率と損益分岐の稼働率の差です。現在の稼働率が損益分岐の稼働率を下回っている場合、「あと何人来てもらえれば黒字になるか」を数字で把握することが出発点になります。
稼働率が低い期間でも、就労実績を積み上げることで報酬区分が上がり、収入が増える可能性があります。実績区分と稼働率の両方を改善できるかどうかが、中長期の収支改善につながります。
就労移行支援の収支診断で確認すべき3つのポイント
就労移行支援の経営診断では、次の3点を優先的に確認することを推奨します。
- 就労実績区分の現在と見通し:基本報酬は就労実績の区分で決まるため、現在どの区分に該当するか、来年度は上がる可能性があるかを確認します
- 稼働率と定員の関係:定員20人の事業所で稼働率69%(14人)と80%(16人)では年間収入の差が大きくなります。定員を増やすより稼働率を上げるほうが固定費を増やさずに収入を増やせます
- 人件費率と職員の勤務形態:常勤・非常勤の比率が人件費率に直接影響します。利用者数が少ない時期は非常勤を増やすことでコストを調整できますが、支援の質との兼ね合いも必要です
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算・令和7年4月分給与)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標 2023年度決算分。経営主体別の収支差率は当方が原典データから計算したものです。各機関が作成したものではありません。

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