訪問看護の指定申請。手順と必要書類、スケジュールの立て方。





訪問看護の指定申請。手順と必要書類、スケジュールの立て方。

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訪問看護ステーションを開業して介護保険・医療保険の報酬を請求するには、都道府県知事(政令市・中核市は市長)への指定申請が必要です。指定を受けるまでの間は報酬を請求できないため、開業希望日から逆算してスケジュールを組む必要があります。この記事では、訪問看護ステーションの指定申請の流れ・必要書類・よくある落とし穴を整理します。

指定は介護保険と医療保険の2本立て

訪問看護ステーションは「介護保険の指定」と「医療保険のみなし指定」の2本立てで運営します。

介護保険の指定(都道府県知事等への申請が必要)

要介護・要支援の認定を受けた利用者に訪問看護を提供して介護報酬を請求するには、事業所の所在地を管轄する都道府県知事(または政令市・中核市の長)への指定申請が必要です。指定を受けてから初めて介護報酬の請求ができます。

医療保険のみなし指定(原則として別途申請は不要)

介護保険の指定を受けた訪問看護ステーションは、健康保険法等に基づく医療保険の指定訪問看護機関として「みなし指定」を受けます。原則として医療保険の指定申請を別途行う必要はなく、介護保険の指定申請が完了すれば介護・医療の両方で訪問看護を提供できます(最新の取り扱いは申請窓口に確認してください)。

指定申請の前に整える3つの前提条件

指定申請書類を揃える前に、次の3つが揃っている必要があります。

1. 法人格の取得

訪問看護ステーションの指定を受けるためには法人格が必要です。個人事業主のままでは指定を受けられません。株式会社・合同会社・NPO法人・医療法人などが選ばれます。法人設立(登記完了)に要する期間を見込んで、早めに手続きを始めます。法人設立から指定申請書類の準備・提出・指定日まで、通常で3〜6か月程度かかることを念頭に置いてください。

また、法人の定款(または寄附行為)の「事業の目的」に「訪問看護事業」または「居宅サービス事業」等の記載が必要です。設立前に申請予定のサービスに対応した事業目的を定款に盛り込んでおきます。設立後に事業目的を追加する場合は定款変更(株主総会等の決議)が必要になります。

2. 事業所の確保

事業所として使用する物件を確保し、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(省令第37号)に定める設備基準を満たしている必要があります。主な設備基準は次のとおりです。

  • 事業の運営を行うための必要な広さを有する専用の区画(執務スペース)
  • 訪問看護に必要な設備・備品(訪問看護に使用する器具・衛生材料等)
  • 鍵のかかる書類保管庫(利用者の個人情報を管理するため)

物件の所在地・面積・間取りは申請書類の「平面図」作成にも関わります。物件の賃貸契約は申請書類の準備を始める前に完了しておきます。

3. 人員の確保

指定申請の時点で人員基準を満たしている必要があります。主な基準は次のとおりです(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準・第60条)。

  • 看護職員(保健師・看護師・准看護師):常勤換算2.5人以上(うち常勤1名以上)
  • 管理者:常勤専従の保健師または看護師(一定の条件のもと兼務可)

人員が揃っていない状態では申請が受理されないため、スタッフの採用は申請書類の提出より前に完了させます。準備期間の人件費(指定日前の給与)も開業費用に含まれるため、資金計画に反映しておく必要があります。

必要書類の一覧

指定申請に必要な書類は自治体によって異なります。以下は主なものを整理したものです(申請前に担当窓口のWebサイト・事前相談で最新の様式と一覧を入手してください)。

書類 内容とポイント
指定申請書 都道府県等の様式。サービスの種類・事業所名・所在地・申請者名等を記載
付表 人員体制(従業者の職種・常勤換算数・氏名)・設備等を詳細に記載する様式
運営規程 省令第37号の記載事項(事業の目的・運営方針・従業者数・利用料・サービス内容等)を盛り込んだ規程。担当窓口のひな形を参考に作成
平面図 事業所の間取り・各スペースの用途・面積を記した図面
資格証明書の写し 管理者・看護師・准看護師等の免許証(保健師免許証・看護師免許証等)の写し
経歴書 管理者・看護師等の職歴・資格取得年月日を記した書面
誓約書 指定の欠格要件に該当しないことを誓約する書面(都道府県等の様式)
役員名簿・組織図 法人の役員一覧と組織体制図
法人の登記事項証明書 設立登記後に法務局で取得(発行から3か月以内のものが多い)
定款または寄附行為 事業目的に「訪問看護」が含まれていることを確認

自治体によっては損害賠償保険の加入証明・賃貸借契約書の写し等が追加で必要になります。必ず申請先の担当窓口から最新の申請書類一覧を入手してください。

指定申請から指定日までのスケジュール

指定日(事業開始・報酬請求が可能になる日)は多くの自治体で「毎月1日」です。申請書の受付期限は指定希望日の1〜2か月前が一般的ですが、自治体によって異なります(週1回受付・月1回受付など)。担当窓口のWebサイトや事前相談で確認してください。

開業希望日から逆算するスケジュールの例

時期(指定日を0か月とした逆算) 作業
-6〜-4か月前 法人設立手続き開始・物件の候補探し・採用活動開始
-4〜-3か月前 法人設立完了・物件契約・採用確定・担当窓口へ事前相談の予約
-3〜-2か月前 事前相談・申請書類の作成開始・登記事項証明書の取得
-2〜-1.5か月前 申請書類の提出(受付期限内に)
-1.5か月〜指定日 審査・書類の不備修正・指定通知の受領
指定日(月の1日) 事業開始・報酬請求可能

このスケジュールはあくまで目安です。法人設立・物件確保・採用に予想以上の時間がかかることもあるため、余裕を持って準備を進めてください。

指定申請のよくある落とし穴

1. 書類の様式は自治体ごとに異なる

指定申請書・付表・運営規程・誓約書等の様式は都道府県ごと(政令市・中核市は独自様式のことも)に異なります。他の自治体の様式をそのまま流用すると受理されません。必ず申請先から最新の様式を入手してください。

2. 書類の不備で審査期間が延びる

提出後に書類の不備・記載漏れが発覚すると、修正のやり取りで審査期間が延び、希望の指定日に間に合わないことがあります。事前相談を活用して書類の不備を事前につぶすことが重要です。

3. 指定日と事業開始日のずれ

「指定を受けた」イコール「すぐ収益が入る」ではありません。介護保険の報酬は利用翌月に請求・翌々月に入金、医療保険も同様に翌々月入金が一般的です。指定日以降も収入が入るまでに最低2〜3か月かかるため、その間の運転資金を手元に用意しておく必要があります。

4. 準備期間の人件費を資金計画に入れ忘れる

看護師を採用してから指定日まで(1〜2か月程度)は訪問看護の収入がゼロの状態で給与だけが出続けます。この準備期間の人件費は開業費用の大きな部分を占めます。収支シミュレーターの「開設準備期間」を入力すると、この期間の費用を含めた資金の谷を確認できます。

指定後の主な届け出

指定を受けた後も、事業所の状況が変わった場合は届け出が必要です。主なものを把握しておきましょう。

  • 変更届:事業所名・所在地・管理者・従業者数などが変更になった場合(変更から10日以内が一般的)
  • 廃止・休止届:事業を廃止・休止する場合(1か月前までが一般的)
  • 加算の体制届:緊急時訪問看護加算・24時間対応体制加算などを新たに算定する場合は、前月末までに体制届の提出が必要
  • 処遇改善加算等の計画書・実績報告:処遇改善加算等を算定する場合、毎年の計画書・実績報告の提出が義務付けられている

事前相談を早めに活用する

多くの都道府県・政令市は、指定申請の前に「事前相談」(個別相談)の機会を設けています。事前相談では担当者に申請書類の内容・書き方・受付スケジュールを直接確認できます。予約が必要な場合が多く、混雑している時期は数週間先まで埋まっていることもあります。申請の2〜3か月前を目安に予約を入れてください。

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まとめ

訪問看護ステーションの指定申請には、①法人格、②設備基準を満たした事業所、③人員基準を満たしたスタッフの3つの前提条件が必要です。申請書類は指定申請書・付表・運営規程・資格証の写し・法人登記事項証明書等、種類が多く、書類の様式は自治体ごとに異なります。申請から指定日まで1〜2か月かかるため、開業希望日から逆算して法人設立・採用・物件確保のスケジュールを組みます。指定日以降も収入が入るまでに2〜3か月かかるため、運転資金の準備も必要です。事前相談を早めに活用し、書類の不備を事前につぶすことが、希望の指定日に開業するための最大のポイントです。


出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)・介護保険法(平成9年法律第123号)・健康保険法(大正11年法律第70号)。作成:2026年11月。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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