消防設備士4類の試験では、P型受信機に接続する感知器回路の配線について「回路の合成抵抗は50Ω以下」という規定が繰り返し出題されます。この数値は消防法施行規則第24条第1号トで定められていますが、「なぜ50Ωなのか」「どう計算するのか」という理解まで求められる場面があります。
この記事では、50Ω以下という基準の意味、配線の太さと長さから抵抗値を求める計算の手順、そして送り配線・共通線7以下とのつながりまでを整理します。
回路合成抵抗50Ω以下とは何か
P型受信機では、各警戒区域から受信機までの間に感知器回路(電路)が配線されています。この電路には電気的な抵抗があります。消防法施行規則第24条第1号トは、その回路の合成抵抗が50Ω以下でなければならないと定めています。
「合成抵抗」とは、配線全体の往復分の抵抗を合計した値です。受信機から感知器まで往路と復路があるため、片道の配線抵抗の2倍が合成抵抗になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 消防法施行規則第24条第1号ト |
| 対象 | P型受信機の感知器回路(電路) |
| 基準値 | 回路の合成抵抗が50Ω以下 |
| 合成抵抗の意味 | 受信機から末端までの往復配線の抵抗を合計した値 |
なぜ50Ω以下でなければならないか
感知器が作動すると、感知器内部の接点が閉じて受信機との回路に電流が流れます。受信機はこの電流の変化を検出して火災信号を受け取る仕組みです。
配線の抵抗が大きすぎると、次の問題が起きます。
- 感知器が作動しても流れる電流が小さすぎて、受信機が火災信号と判断できない
- 回路の電流が不安定になり、断線の検出に影響が出る
- 複数の感知器が並んでいる回路全体の動作が不安定になる
50Ωという上限値は、受信機が確実に火災信号を検出できる電気的な条件から設定されています。この数値を超えると設備の機能が保証されないため、設置基準として法令で定められています。
配線の抵抗を計算する方法
電線の抵抗値は、次の式で求められます。
抵抗(Ω)= 抵抗率(Ω・mm²/m)× 長さ(m)÷ 断面積(mm²)
銅線の抵抗率は約0.0172Ω・mm²/mです(20℃の場合)。試験問題では抵抗率が与えられることが多いので、この式の構造を理解しておくことが重要です。
断面積と長さによる抵抗の変化
配線の抵抗は、断面積が大きいほど小さく、長さが長いほど大きくなります。
| 条件の変化 | 抵抗への影響 |
|---|---|
| 断面積が2倍になる | 抵抗は1/2になる |
| 断面積が1/2になる | 抵抗は2倍になる |
| 長さが2倍になる | 抵抗は2倍になる |
| 長さが1/2になる | 抵抗は1/2になる |
往復分を必ず含める
回路の合成抵抗を求めるときは、片道の配線長さではなく往復の合計長さで計算します。受信機から感知器まで100mの配線であれば、往復で200mとして計算します。
試験問題でよくある誤りは、片道の長さだけで計算してしまうことです。「配線長さ×2」を忘れないようにします。
50Ω以下を確認する具体的な計算手順
次の手順で回路の合成抵抗を確認します。
手順1:配線の片道の長さを確認する
受信機から警戒区域の末端(終端器・発信機など)までの配線の片道の長さを求めます。系統図や平面図から読み取ります。
手順2:往復の長さを計算する
片道の長さ×2が往復の長さです。
手順3:断面積を確認する
使用する電線の断面積(mm²)を確認します。自動火災報知設備の配線は一般的に0.9mm²または1.25mm²が使われますが、問題文で指定された値を使います。
手順4:抵抗値を計算する
抵抗(Ω)= 抵抗率(Ω・mm²/m)× 往復長さ(m)÷ 断面積(mm²)
手順5:50Ω以下かどうか判定する
計算結果が50Ω以下であれば基準を満たしています。50Ωを超える場合は、断面積の大きい電線に変更するか、配線経路を見直す必要があります。
計算例
配線の片道の長さ1,000m・断面積1.25mm²・抵抗率0.0172Ω・mm²/mのとき、回路の合成抵抗を求める例です。
往復の長さ:1,000m × 2 = 2,000m
合成抵抗:0.0172 × 2,000 ÷ 1.25 = 27.52Ω
判定:27.52Ω ≤ 50Ω → 基準を満たしている
同じ条件で断面積を0.9mm²に変えると:
0.0172 × 2,000 ÷ 0.9 = 38.2Ω → こちらも50Ω以下で基準を満たす
このように、電線の太さと配線の長さの組み合わせによって合成抵抗は変わります。
試験で出題される計算パターン
基礎的知識(電気)の科目と構造・機能(規格)の科目の両方で、回路抵抗に関する問題が出ます。主なパターンは次の4種類です。
パターン1:合成抵抗の計算
「配線の長さと断面積・抵抗率が与えられたとき、合成抵抗を求めよ」という計算問題。往復分を忘れず計算します。
パターン2:50Ω以下を満たす最大長さ
「断面積と抵抗率が与えられたとき、合成抵抗が50Ω以下になる配線の最大長さを求めよ」という問題。50Ω÷(抵抗率÷断面積)÷2で片道の最大長さを求めます。
パターン3:正誤判断
「次の記述のうち正しいものを選べ」の形式で「回路の合成抵抗は50Ω以下でなければならない」「回路の合成抵抗は配線の往復を含む」などの記述が選択肢に入ります。
パターン4:根拠条文の確認
「50Ω以下の根拠となる条文は何か」という問いに対して施行規則第24条第1号トを答えます。条番号は正確に覚えておく必要があります。
オームの法則との関係
回路抵抗の計算にはオームの法則(電圧=電流×抵抗)が土台になっています。試験では直接「オームの法則を使って電流を求めよ」という問題もあります。
感知器回路の電圧が24V・合成抵抗が30Ωの場合、回路に流れる電流は:
電流=電圧÷抵抗=24÷30=0.8A
合成抵抗が50Ωのとき:電流=24÷50=0.48A
合成抵抗が大きいほど電流は小さくなります。受信機が火災信号を確実に検出するためには、電流が一定水準以上流れる必要があり、そのための上限値が50Ωです。
回路抵抗・送り配線・共通線7以下の3規定のつながり
消防法施行規則第24条第1号には、P型受信機の電路に関する3つの主要な規定があります。
| 規定 | 条番号 | 内容 |
|---|---|---|
| 送り配線の義務 | 第24条第1号イ | 末端に発信機・押しボタン・終端器を設ける送り配線とすること |
| 共通線の警戒区域数 | 第24条第1号ヘ | 1本の共通線に接続できる警戒区域は7以下 |
| 回路合成抵抗 | 第24条第1号ト | 回路の合成抵抗は50Ω以下 |
この3つは独立した規定ですが、互いに関連しています。
送り配線は断線を検出するための配線方式です。断線が起きると受信機側で終端器の抵抗値の変化として検知できます。この仕組みが正確に機能するためには、回路抵抗が適切な範囲に収まっている必要があります。
共通線7以下の規定は、1本の共通線に多数の警戒区域を集中させることで配線が長くなり合成抵抗が大きくなりすぎる問題を防ぐ面もあります。
3つの規定は「P型回路の設計基準の束」として試験でも一体的に出題されます。それぞれの条番号(イ・ヘ・ト)を組みと覚えておくと確認しやすいです。
試験勉強でつまずきやすいポイント
往復を忘れる
最も多い計算ミスです。「配線の長さ」と書かれていたら、問題文が片道の長さを指しているか往復を含むかを確認します。「受信機から感知器まで○m」と書かれていれば片道なので×2します。
断面積と直径を混同する
断面積(mm²)と導線の直径(mm)は別の値です。直径から断面積を求める場合は「断面積=(直径/2)²×π」で計算します。問題文で断面積として与えられているか直径として与えられているかを確認します。
抵抗率の単位に注意する
問題文で与えられる抵抗率の単位はΩ・mm²/mやΩ・m²/mなどのパターンがあります。単位を確認してから計算に使います。
まとめ
P型受信機の回路合成抵抗50Ω以下の規定は、消防法施行規則第24条第1号トに定められています。この基準は、感知器が作動したときに受信機が確実に電流の変化を検出できる電気的な条件から設定されています。
計算では「抵抗率×往復の長さ÷断面積」という式を使います。往復分を計算に含めること、断面積と直径を混同しないこと、抵抗率の単位を確認することが計算問題のポイントです。
送り配線(第1号イ)・共通線7以下(第1号ヘ)・回路合成抵抗50Ω(第1号ト)の3規定は条番号とセットで覚えておくと、筆記の法令問題と製図問題の両方に対応できます。
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