自動火災報知設備の配線には、「送り配線」という方式が義務づけられています。なぜ他の配線方式ではいけないのか、終端器は何のために設けるのか。この2点を理解すると、系統図の問題と製図の問題を同じ軸で解けるようになります。
この記事では、送り配線の意味・義務となっている理由・終端器の役割・回路抵抗の規定・試験での出題パターンの5つを整理します。根拠条文は消防法施行規則第24条第1号(以下、規則第24条)です。
送り配線とは何か
送り配線とは、1本の回路が受信機から始まり、感知器・発信機を経由して末端まで直列につながる配線方式です。英語では「loop wiring」と呼ばれることもありますが、試験では「送り配線」という表現が使われます。
回路のイメージはこうです。受信機を起点として、感知器A→感知器B→感知器C→末端(終端器または発信機)という順番で配線が1本の線のようにつながります。受信機に戻るわけではなく、末端で終わります。
これに対して、スター配線(放射配線)は受信機から各感知器に個別に配線を引く方式です。並列配線は複数の感知器を並列に接続する方式です。送り配線はこれらとは異なる直列接続の形をとります。
送り配線が義務とされている理由
送り配線が義務とされている理由は、断線を検出できるためです。これが他の配線方式との決定的な違いです。
自動火災報知設備は、感知器が作動したときに信号を受信機に伝えるだけでなく、配線が正常に維持されているかどうかを常時監視する必要があります。火災が発生したときに配線が断線していては、信号が届かず設備が機能しません。
送り配線では、回路全体に常時微小な電流が流れています。末端に終端器(一定の抵抗値を持つ部品)を接続することで、受信機は回路の電流値を常時監視できます。配線のどこかで断線が起きると、電流値が変化するため受信機が「断線」として検出し、警報を出すことができます。
スター配線や並列配線では、一部の配線が断線しても回路全体の電流値が大きく変化しないため、断線を検出することが難しくなります。このため、規則第24条第1号イは「送り配線とし、末端に発信機、押しボタン、又は終端器を設けること」と定めています。
終端器の役割と設置場所
終端器は、回路の末端に設置する部品で、一定の抵抗値(固有の抵抗値)を持っています。回路に終端器を設けることで、受信機は回路全体の抵抗値を測定し、断線・地絡(ショート)を検出できます。
断線検出の仕組み
正常時:受信機→感知器→(中略)→終端器 の回路で、一定の電流値が流れる。
断線時:電流がゼロになるか極端に低下する→受信機が断線を検出して表示する。
地絡時:電流が過剰に流れる→受信機が地絡(ショート)を検出して表示する。
このように、終端器があることで受信機が「正常な回路の状態」を基準として監視できるようになります。
終端器の設置場所
規則第24条第1号イでは、末端に設けるものとして「発信機、押しボタン、又は終端器」の3種類が挙げられています。実際の設備では次のように使い分けられます。
| 末端に設けるもの | 使われる場面 |
|---|---|
| 終端器 | 発信機を置かない末端の感知器回路 |
| 発信機 | 回路末端が発信機の位置と一致する場合 |
| 押しボタン | 一部の小規模設備や特定の回路末端 |
試験の系統図では、末端に何を設けるかを問う問題が出ます。「終端器」または「発信機」と答えられるように、3種類の選択肢を覚えておくことが重要です。
P型回路の抵抗規定との関係
規則第24条第1号トでは、「P型1級受信機に接続される回路の配線抵抗は50Ω以下とすること」と定めています(2線式の場合の往復抵抗の合計)。
この50Ωという数値は、回路の電流値の監視に影響します。配線抵抗が大きすぎると、終端器を含めた回路全体の抵抗が変化し、受信機が正常状態と断線状態を正確に区別しにくくなります。このため、配線の長さや太さによって抵抗値が変わることを踏まえ、規則は50Ω以下という上限を設けています。
回路抵抗の計算の考え方
配線抵抗は「抵抗率×長さ÷断面積」で計算できます。試験では具体的な計算よりも「P型1級は50Ω以下」という数値そのものを問われることが多いです。ただし、甲4の製図問題で配線の太さを選ぶ問題が出ることもあるため、抵抗と配線太さの関係は理解しておく価値があります。
| 規定の内容 | 根拠条文 | 数値 |
|---|---|---|
| P型1級の回路抵抗上限 | 規則第24条第1号ト | 50Ω以下 |
| 末端に設けるもの | 規則第24条第1号イ | 発信機・押しボタン・終端器のいずれか |
| 共通線の接続回路数 | 規則第24条第1号ヘ | 7以下 |
系統図での送り配線の描き方
甲4の製図問題(系統図)では、送り配線の形を正しく描く必要があります。基本的な描き方は次のとおりです。
- 受信機から各警戒区域に回路を1本ずつ引く
- 各回路は感知器を直列に経由する形で末端まで引く
- 末端には終端器または発信機を設ける
- 発信機は別途、地区音響装置と配線を接続する
系統図で「スター配線にしてしまう」「末端に終端器を忘れる」という2点が製図の典型的なミスです。末端に何かを設けるという意識を持って描くことが重要です。
発信機と終端器を使い分ける判断
平面図に発信機の設置位置が示されている場合、その位置が回路の末端に当たるかどうかで判断します。発信機が回路の途中に設置されている場合は、末端に別途終端器を設けます。発信機が末端にある場合は、発信機がそのまま末端器の役割を兼ねます。
試験での出題パターン
送り配線と終端器に関しては、筆記(構造・機能・電気科目)と実技(製図)の両方で出題されます。出題パターンを整理します。
筆記問題のパターン
| 出題の形 | 押さえるポイント |
|---|---|
| 「送り配線とはどういう配線か」(正誤問題) | 直列接続・末端で終わる・断線検出が目的 |
| 「回路の末端に設けるものはどれか」 | 発信機・押しボタン・終端器の3種(スプリンクラーヘッドは誤答例) |
| 「P型1級の配線抵抗の上限はいくらか」 | 50Ω以下(規則第24条第1号ト) |
| 「送り配線でなければならない理由はどれか」 | 断線検出のため・スター配線では断線が検出できない |
製図問題のパターン
- 系統図を完成させる問題:送り配線の形で引き、末端に終端器または発信機を設ける
- 誤りを指摘する問題:末端器がない・並列配線になっている・共通線が7超
- 回路数を答える問題:警戒区域の数と系統図の回路数が一致しているか確認
送り配線を整理するときの覚え方
「なぜ送り配線か」という問いに対して、「断線を検出できるから」と即答できるようにしておくことが最も重要です。この理由が頭に入っていると、終端器の役割も自然に覚えられます。
覚えるべき3点を整理すると次のとおりです。
- 送り配線=直列接続・受信機から末端へ一本道
- 末端には終端器・発信機・押しボタンのいずれかを設ける(規則第24条第1号イ)
- P型1級の回路抵抗は50Ω以下(規則第24条第1号ト)
この3点は、筆記の構造・機能科目と製図の両方で直接使える知識です。系統図を描くときも「末端に終端器があるか」を最後に確認する習慣をつけると、製図での失点を防ぎやすくなります。
まとめ
送り配線は、断線検出を目的とした直列接続の配線方式です。末端に終端器・発信機・押しボタンのいずれかを設けることで、受信機が回路全体を常時監視できます。P型1級では回路抵抗50Ω以下という数値制限もあります。
製図で系統図を描く際は、「送り配線で引く・末端に終端器または発信機を設ける・共通線は7以下」の3点を確認することが採点上のミスを減らすポイントです。
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※ 本記事の法令の記述は消防法施行規則第24条第1号の規定に基づいています。改正等がある場合は消防試験研究センターの公式情報をご確認ください。本記事は民間運営であり、消防試験研究センターとは無関係です。


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