訪問介護の同一建物減算。同じマンション・施設の利用者に訪問すると、収入はどのくらい減るか。

同一建物(マンション・有料老人ホーム等)に居住する複数の利用者へ同日に訪問する場合、所定単位数から10%または15%が減算されます。身体介護30〜60分(387単位)なら、10%減算で348単位(3,480円)・15%減算で328単位(3,280円)です。月200回訪問で全員同一建物(10%減算)なら、月78,000円の収入が減ります(出典:令和6年厚生労働省告示第86号)。

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同一建物減算とは。「効率よく訪問できる分、収入が減る」仕組み

訪問介護では、同一のマンションや施設に住む複数の利用者へ同じ日に訪問する場合、基本報酬から一定割合が差し引かれます。これを「同一建物減算」と呼びます。

「同じ建物を連続して訪問すれば移動コストが下がる」という考えに基づいた制度設計です。効率が上がる分、収入を調整する仕組みになっています。

同一建物減算の3種類と減算率

同一建物減算には3種類あります(出典:令和6年厚生労働省告示第86号)。詳細な適用条件は告示・解釈通知でご確認ください。

減算の種類 減算率 概要
同一建物(少数) −10% 同一建物の複数の利用者に同一日に訪問する場合(20人以上等)
同一建物(多数) −15% 同一建物に同一日に訪問する人数が多い場合(50人以上等)
同一建物(敷地外) −12% 同一の建物の敷地外に事業所があり複数の利用者に訪問

※適用条件の詳細(人数の基準・建物の定義等)は厚生労働省の算定基準・解釈通知でご確認ください。人数の閾値や算定の細部については都道府県・市区町村に確認することをお勧めします。

身体介護30〜60分(387単位)の減算後の金額

最もよく使われる身体介護30〜60分(387単位・その他地域・10.00円)で減算後の単位数と金額を確認します。端数は1円未満を切り捨てます。

パターン 計算 単位数 金額(その他) 減収額
減算なし(通常) 387 387単位 3,870円 基準
10%減算 387×0.9=348.3 348単位 3,480円 −390円
15%減算 387×0.85=328.95 328単位 3,280円 −590円
12%減算 387×0.88=340.56 340単位 3,400円 −470円

月200回訪問で全員同一建物の場合の月収入への影響

月200回訪問し、全員が同一建物に居住するケースで試算します(身体介護30〜60分・その他地域)。

  • 10%減算(月200回): 390円 × 200回 = 78,000円/月の減収
  • 15%減算(月200回): 590円 × 200回 = 118,000円/月の減収
  • 12%減算(月200回): 470円 × 200回 = 94,000円/月の減収

年間に換算すると、10%減算で94万円近い収入差になります。同一建物への訪問が多い事業所にとっては無視できない金額です。

同一建物への集中は「収入減」と「移動コスト減」の両面がある

同一建物減算は収入が減る制度ですが、同じ建物の利用者を複数担当することで移動コスト(スタッフの移動時間・交通費)が大幅に下がります。

項目 分散した利用者 同一建物の利用者
1回あたりの収入(身体30〜60分) 3,870円(減算なし) 3,480円(10%減算)
スタッフの移動時間(目安) 往復30〜40分 同じフロアなら数分
1日の訪問可能件数(目安) 4〜5件 6〜8件以上

移動時間が減れば、同じスタッフが1日に対応できる利用者数が増えます。収入単価は下がっても、件数が増えれば全体の収入はむしろ増える場合があります。

マンションや施設に訪問が多い事業所が注意すべきこと

特定のマンションや有料老人ホームに訪問が集中している事業所は、次の点を確認してください。

  • 算定区分の正確な確認: 同一建物の人数の閾値や算定条件は解釈通知を確認し、請求誤りがないようにする
  • 収支計画への反映: 減算前提の収支計画を立てておくと、想定外の収入減を防げます
  • 施設との連携: 有料老人ホームや介護付き施設への外付けサービスは、施設との契約や取り決めが必要な場合があります。指定権者への確認も必要です

全国平均の収支差率9.6%(令和7年度介護事業経営概況調査)は分散した利用者も含めた平均です。同一建物集中型の事業所では、件数あたりの稼働効率とのバランスを収支計画に織り込んでください。

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参照した資料
令和6年厚生労働省告示第86号(指定居宅サービス等に要する費用の額の算定に関する基準)。同一建物減算の詳細要件は厚生労働省の算定基準・解釈通知でご確認ください。令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・訪問介護・全国平均)。数値は令和8年10月時点。試算はその他地域(10.00円)基準。単位数の端数は1円未満切り捨て。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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