貨物自動車運送事業の運行管理者は、営業所ごとに使用する事業用自動車が5両以上の場合に選任義務があります。4両以下の小規模な営業所は、地方運輸局長の認定を受けることで選任義務が免除される規定があります。ただし、運行管理者を置かなくていい事業者でも、それ以外の多くの安全義務(12テーマの指導・監督、乗務記録、アルコールチェック等)は引き続き適用されます。この記事では、運行管理者の選任要件と、置かない場合でも残る義務を整理します。
運行管理者の選任義務は何台から
輸送安全規則第20条第1項は、選任に必要な員数について次のように定めています。
「一般貨物自動車運送事業者等は、事業用自動車(被牽引自動車を除く。)の運行を管理する営業所ごとに、当該営業所が運行を管理する事業用自動車の数を国土交通省令で定める台数で除して得た数(1未満の端数は切り捨て。)以上の員数の運行管理者を選任しなければならない。」
この条文に基づく実務上の選任義務の目安は、「5両以上の営業所には1名以上の運行管理者の選任が必要」とされています。4両以下の小規模な営業所については、地方運輸局長の認定を受けることで選任義務が免除される例外規定があります(輸送安全規則第20条第1項ただし書)。この例外認定の申請は各地方運輸局窓口で対応しています。
なお、被牽引自動車(牽引車がなければ走れないトレーラー等)は台数の計算から除外されます。これは条文に「被牽引自動車を除く」と明記されているためで、単体で走行できない牽引される側の車両は両数に含めません。
両数の数え方でよくある誤解
「5両以上」の両数を数える際、次の点に注意が必要です。
- 使用していない(休車中の)車両も、事業用自動車として登録されている場合は原則として両数に含む
- 被牽引車(トレーラーヘッドなしでは走れない荷台部分)は含まない
- 複数の営業所がある場合は、営業所ごとに台数を計算する(全営業所合計ではない)
- 軽自動車(黒ナンバー)は一般貨物自動車運送事業の車両に含まれないため、別扱い
営業所が1つで事業用自動車が4両以下の事業者は、地方運輸局長への認定申請を行うことで運行管理者の選任を要しない扱いになります。認定を受けるには、所定の申請書類を管轄の運輸支局等に提出します。
なお、被牽引自動車(トレーラーのうち牽引車がなければ走れないもの)は台数の計算から除外されます。
5両未満でも、残る義務は多い
運行管理者の選任義務がないからといって、安全管理にかかる義務全体がなくなるわけではありません。5両未満の事業者でも、次の義務は変わらず適用されます。
| 義務の内容 | 根拠 |
|---|---|
| 12テーマの定期的な指導・監督(3ヶ月ごとまたは年1回以上・記録1年保存) | 輸送安全規則第10条・告示第1366号 別表第2 |
| 初任運転者への特別な指導(入社後に実施・記録1年保存) | 輸送安全規則第10条の2・告示第1366号 別表第1 |
| 適性診断(初任・定期・65歳到達以降・事故後) | 輸送安全規則第10条の3 |
| アルコール検知器による乗務前後の確認・記録(安全運転管理者選任義務がある場合) | 道路交通法施行規則第9条の10 |
| 飲酒状態での乗務禁止(事業者の義務) | 輸送安全規則第7条の3 |
| 乗務記録(日報)の作成・保存(一般貨物・運行ごとに作成・1年間) | 輸送安全規則第8条 |
| 運転者台帳の作成・保存 | 輸送安全規則第9条の4 |
特に指導・監督の記録(12テーマ)と乗務記録(日報)は、巡回指導で最も頻繁に確認される項目です。台数が少ないからといって対応を後回しにすると、指摘を受けやすくなります。
軽貨物(黒ナンバー)の個人事業主の場合
軽貨物運送事業(黒ナンバー)の場合、輸送安全規則の運行管理者の選任義務は直接は適用されませんが、令和7年4月1日施行の令和6年告示第1193号により、12テーマの指導・監督義務が軽貨物にも適用されています。
軽貨物の個人事業主(1人で運送業を営む場合)にも、次の義務があります。
- 12テーマの指導・監督(自分で自分に実施・記録を作成・1年保存)
- 飲酒状態での乗務禁止(輸送安全規則第7条の3・同等の規定による)
運行管理者の選任義務はありませんが、「記録を残す」義務はあります。
運行管理者を置かない場合、誰が安全管理の責任者になるか
運行管理者の選任義務がない事業者(4両以下)は、安全管理にかかる実務上の責任者が法令上明示されないことになります。この場合、事業者(代表者)または業務の実態に応じて事業所を管理する者が、運行管理の実務を担当することになります。
運行管理者の国家資格は選任義務がなくても任意で取得・選任することができます。小規模でも安全管理を体系的に整備したい事業者は、運行管理者資格の取得を検討する価値があります。国家試験は年2回(3月・8月)実施されています。
任意で運行管理者を選任した場合の取り扱い
義務がない(4両以下)場合でも、任意で運行管理者を選任している事業者がいます。この場合、選任した旨を運輸局に届け出るかどうかは義務の規定ではありませんが、選任した以上は選任した運行管理者が輸送安全規則に基づく業務を担うことになります。
なお、選任義務がある場合(5両以上)に運行管理者を選任しなかった場合は、輸送安全規則違反として行政処分(輸送安全規則違反)の対象になります。
巡回指導で確認される対象は台数によらない
適正化実施機関による巡回指導は、台数の大小を問わず一般貨物自動車運送事業者に対して行われます。確認項目には12テーマの指導記録・運転者台帳・乗務記録等が含まれており、「台数が少ないから確認されない」わけではありません。
巡回指導の確認項目は全部で47項目(5分野)あります。台数が少ない事業者が見落としやすいのは、運行管理者を置いていないからこそ「安全管理の義務を誰かがやらなければならない」という認識が薄くなる点です。
5両を超えることが見込まれる場合の準備
現在4両以下でも、今後5両以上に増える見込みがある場合は、運行管理者の選任と資格取得を先行して準備しておく必要があります。5両以上になった時点から選任義務が発生するため、その日から運行管理者が選任されていない状態は義務違反になります。
試験申し込みから合格・選任まで数ヶ月かかる場合があるため、増車のタイミングに合わせた準備が必要です。
運行管理者試験の概要
運行管理者の国家試験は、公益財団法人運行管理者試験センターが実施しています。試験区分は「貨物」と「旅客」に分かれており、一般貨物自動車運送事業の場合は「貨物」区分の合格が必要です。
- 試験回数:年2回(3月・8月)
- 合格率:例年30〜40%台前後(試験センターの発表による)
- 試験方法:CBT(パソコンによる試験)方式
- 受験資格:次の①②いずれかを満たすこと
①実務経験1年以上(事業用自動車の運行の管理に関する実務経験)②基礎講習修了後の申請(実務経験がない場合)
実務経験のない方が受験する場合は、国土交通大臣が認定する機関(全日本トラック協会等)の基礎講習(3日間)を受講してから試験申込ができます。基礎講習の日程は各都道府県トラック協会のウェブサイトで確認できます。
選任後の届出義務
運行管理者を選任した(または交代した)場合は、運輸局への届出が必要です。届出は選任した日から15日以内に、管轄の運輸支局等に所定の届出書を提出します。
届出の手続きを怠った場合、輸送安全規則違反として指摘の対象になります。運行管理者が退職等で欠員になった場合は速やかに補充・届出が必要です。
運行管理者を選任していない場合のリスク
5両以上の事業者が運行管理者を選任していない場合、次のリスクがあります。
- 輸送安全規則違反として巡回指導での重大指摘の対象になる
- 行政監査で確認された場合、車両停止等の行政処分の対象になる可能性がある
- 事故発生時に安全管理の不備として責任が問われやすくなる
運行管理者の選任は、事業許可の維持にかかわる基本的な義務です。増車などで台数が変わる際は、選任義務の有無を早めに確認することをお勧めします。
運送業 法定研修キット(12テーマ)について
12テーマの指導・監督は、運行管理者の有無にかかわらず全事業者に義務があります。研修資料・確認テスト・受講記録をブラウザで使える研修キットとして公開しています。小規模事業者が1人でまとめて実施する使い方にも対応した設計です。テーマ1(心構え)は無料でお使いいただけます。
巡回指導で確認される教育記録の準備については「巡回指導で確認されるドライバー教育の記録、何を準備するか。」も参照してください。
ドライバー教育の義務の全体像は「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。
出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第20条・第10条・第10条の2・第10条の3(e-Gov法令検索)、令和6年国土交通省告示第1193号(e-Gov法令検索)


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