12テーマのドライバー教育、年間計画の組み方。

12テーマのドライバー教育、年間計画の組み方。 運送業(ドライバー教育)

貨物自動車運送事業の指導・監督は、12テーマを3ヶ月ごとに実施することが原則です。ただし全テーマを年1回以上実施すれば、3ヶ月ごとの頻度要件を緩和できる規定があります(輸送安全規則第10条)。この記事では、12テーマを1年間にどう振り分けるかの考え方と、実際の年間計画の組み方を説明します。

3ヶ月ごとの原則と、緩和できる条件

輸送安全規則第10条は「少なくとも3ヶ月ごと」に指導・監督を行うことを義務づけています。ただし、同条は「告示で定める事項を適切に実施している場合」に例外を認めており、12テーマを年1回以上実施していれば、3ヶ月に1回の頻度要件を厳密に守らなくてよいとする取り扱いがあります(解釈指針または運用通達による取り扱いで、法令に明示の条文はありません。詳細は運輸局またはトラック協会に確認することをお勧めします)。

実務上は「年間で12テーマすべてを実施する」ことを基準として計画を立てる事業者が多くあります。巡回指導でも、1年分の記録に12テーマが揃っているかどうかが確認ポイントになります。

12テーマを1年間に振り分ける考え方

12テーマを年4回(3ヶ月ごと)の研修機会に均等に配分する場合、1回あたり3テーマを扱うことになります。ただし、テーマの性質によって実施のしやすさに差があります。

テーマを性質で分類する

  • 座学で扱いやすいテーマ:心構え・基本的事項・疾病・心理的影響・安全装置・危険予知
  • 実際の作業と結びつけやすいテーマ:積載方法・過積載・危険物・経路選択・構造上の特性
  • 適性診断と組み合わせやすいテーマ:運転適性

実際の作業や季節に合わせてテーマを配置すると、研修の内容がドライバーにとって身近なものになります。

月別の年間計画の例(12テーマを4回に分けて実施)

以下は、12テーマを4月・7月・10月・1月の4回に分けて実施する年間計画の例です。実際の運行状況や繁忙期に合わせて調整してください。

実施時期 扱うテーマ テーマ番号
第1回(4月)
新年度・新人採用期
一般的な心構え
事業用自動車の運行の安全を確保するための基本的事項
疾病が交通事故の要因となることについての知識
1・2・11
第2回(7月)
夏・梅雨明けの繁忙期前
事業用自動車の構造上の特性
貨物の正しい積載方法
過積載の危険性
3・4・5
第3回(10月)
秋・物流繁忙期前
危険物を運搬する場合に注意すべき事項
適切な経路の選択および道路・交通の状況に応じた安全な運転方法
危険の予知および回避
6・7・8
第4回(1月)
冬・年始
運転者の運転適性に応じた安全運転
交通事故が運転者に与える心理的影響
安全性向上のための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
9・10・12

4月を新年度の位置づけにして「心構え」から始める構成は、新規採用のドライバーがいる事業者にとって初任教育と組み合わせやすいという利点があります。また、7月の積載・過積載は夏の路面状況や配送量増加と結びつけて説明しやすく、10月の危険物・経路は秋の繁忙期対策として位置づけることができます。

月1回・毎月実施する場合の振り分け

月1回の研修を実施している事業者や、ドライバーが多く1日では全員に研修できない場合には、月1テーマずつ12ヶ月で完結させる方法も有効です。

月 テーマ
1月 一般的な心構え
2月 事業用自動車の運行の安全を確保するための基本的事項
3月 事業用自動車の構造上の特性
4月 貨物の正しい積載方法
5月 過積載の危険性
6月 危険物を運搬する場合に注意すべき事項
7月 適切な経路の選択および道路・交通の状況に応じた安全な運転方法
8月 危険の予知および回避
9月 運転者の運転適性に応じた安全運転
10月 交通事故が運転者に与える心理的影響
11月 疾病が交通事故の要因となることについての知識
12月 安全性向上のための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

毎月実施するメリットは、研修が習慣化しやすいことと、途中で欠席したドライバーが翌月以降に穴埋めしやすいことです。ただし、毎回記録を作成する手間が増えるため、記録の様式を標準化しておく必要があります。

年間計画を文書化しておくことの意義

年間計画を事前に作成して文書化しておくと、次のような効果があります。

  • 運行管理者が替わっても計画が引き継ぎやすい
  • 巡回指導で「今年の計画を見せてほしい」と言われたときに提示できる
  • 12テーマの抜けを年末になって初めて気づく、という状況を防げる
  • ドライバーに「いつ・何の研修があるか」を事前に伝えやすく、参加率が上がりやすい

計画書の様式に法令上の決まりはありませんが、実施年度・実施テーマ・実施時期・実施者(予定)を一覧で示した1枚のシートが実務では使いやすい形式です。

ドライバーが少ない・1人事業者の場合

ドライバーが1人(自分1人、または代表者と家族のみ)の場合でも、定期指導の義務は変わりません。1人で研修を受け、自分で記録をつくるという形になりますが、内容・記録・保存の要件は同じです。

この場合、「誰に指導するか」よりも「どう記録を作るか」に注意が集中しやすくなります。テーマを一つ学習・確認したら、日付・テーマ名・確認した内容・自署を記録に残す習慣をつけることが対策になります。

記録の不備が起きやすいタイミング

年間計画が整っていても、記録が実際に作られない・残らないケースが生じやすい場面があります。

  • 繁忙期に研修を後回しにして、記録なしのまま年末を迎える
  • ドライバーの欠勤・交代があり、特定の人の記録が抜ける
  • 運行管理者の退職・交代があり、記録の引き継ぎが不十分になる
  • 記録は作ったが保管場所が統一されておらず、後から出てこない

これらを防ぐためには、計画を立てることと同時に、「研修実施後その日のうちに記録を作成する」というルールを運用上の原則にすることが有効です。

運送業 法定研修キット(12テーマ)について

12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録をブラウザで使える研修キットとして公開しています。テーマごとに研修資料・確認テストと受講記録が一体になっており、実施したその場で記録まで完結します。年間計画に沿って1テーマずつ順番に進めるという使い方に対応した設計です。

運送業 法定研修キット(12テーマ)はこちら テーマ1(心構え)は無料でお使いいただけます。

記録の保存要件・よくある不備については「運送業のドライバー教育、記録はどこまで残せばいいか。」を参照してください。

ドライバー教育の義務の全体像は「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。

出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第10条(e-Gov法令検索)、国土交通省告示第1366号 別表第2

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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