運送業のアルコールチェック義務、令和4年から何が変わったか。

運送業のアルコールチェック義務、令和4年から何が変わったか。 運送業(ドライバー教育)

令和4年(2022年)4月から、白ナンバー・緑ナンバーを問わず、安全運転管理者を選任している事業者にアルコールチェック(酒気帯び確認)が義務化されました。さらに令和6年以降、検知器を使った確認へと段階的に義務が強化されています。この記事では、アルコールチェック義務の変遷と、運送事業者に当てはまる現在の要件を整理します。

アルコールチェック義務は段階的に強化された

令和4年以前は、道路交通法上のアルコールチェック義務は飲酒運転の禁止規定(第65条)のみで、事前確認の義務は法律で明示されていませんでした。令和4年4月の道路交通法施行規則改正を皮切りに、義務の段階が変わっていきます。

時期 義務の内容
令和4年4月1日〜 安全運転管理者による乗務前後の「目視等による」酒気帯び確認・記録の保存(1年間)が義務化(道路交通法施行規則)
令和6年1月1日〜 同確認が「アルコール検知器を用いた確認」に強化(道路交通法施行規則 第9条の10改正)

令和6年1月以降は、目視だけでは不十分で、アルコール検知器による確認が義務の要件になっています。

運送事業者には別の義務もある

貨物自動車運送事業者(緑ナンバー・黒ナンバー)の場合、道路交通法の安全運転管理者制度とは別に、輸送安全規則にも関連する規定があります。

輸送安全規則第7条の3では、アルコールの影響により安全な運転ができないおそれがある乗務員を乗務させてはならないと定めています。これは飲酒運転の禁止を事業者側からの義務として規定したものです。

つまり、運送事業者は次の2つの義務を重ねて負っています。

  • 道路交通法施行規則に基づく安全運転管理者による酒気帯び確認(検知器使用)と記録
  • 輸送安全規則に基づく乗務員の健康・飲酒状態の確認と乗務前の排除義務

一般的には、どちらの義務も満たす形として「乗務前後のアルコール検知器による確認と記録」を行います。

安全運転管理者の選任が義務かどうかを確認する

アルコールチェック義務の根拠となる道路交通法の「安全運転管理者」制度は、使用する自動車の台数によって選任義務の有無が変わります。

  • 乗車定員11人以上の自動車:1台以上で選任義務
  • それ以外の自動車(貨物車を含む):5台以上で選任義務(大型二輪は0.5台換算)

4台以下の小規模な運送事業者であっても、輸送安全規則第7条の3の義務(飲酒状態の乗務員を乗務させない)は適用されます。安全運転管理者の選任義務と、輸送安全規則の義務は独立した規定です。

アルコール検知器の用意と管理

令和6年1月以降は、アルコール検知器(呼気中のアルコール濃度を測定できる機器)を使った確認が義務になっています。検知器に関する主な要件は次のとおりです。

  • アルコールを検知し、その結果を音・色・数字等で確認できる機能を持つもの(道路交通法施行規則第9条の10)
  • 常時有効に保持すること(故障中の機器で確認したものは要件を満たさない)
  • 特定の機種の指定はないが、確認可能な機能を持つものであること

市販の呼気式アルコール検知器(ドライバー向けに販売されているもの)でも要件を満たすものがありますが、購入前に用途と機能を確認することをお勧めします。また、バッテリー切れ・センサーの劣化による誤作動を防ぐため、定期的な点検と消耗品の交換の記録を残しておくことも実務上の対策として有効です。

確認・記録として残すべき内容

アルコール確認の記録は、道路交通法施行規則の規定では1年間の保存が求められています。記録に最低限含めるべき項目は次のとおりです。

  • 確認した年月日・時刻
  • 運転者の氏名
  • 運転する自動車の自動車登録番号(または識別できる情報)
  • 確認の方法(検知器使用の有無・検知器の種類)
  • 酒気帯びの有無
  • 確認者(安全運転管理者等)の氏名

記録の様式は法令に定められていませんが、警察庁が公表している様式例を参考に作成する事業者が多くあります。都道府県警察や全日本トラック協会のウェブサイトにも参考様式が掲載されています。

ドライバー教育の12テーマとの関係

アルコールチェックは日常の運行管理上の義務であり、12テーマの定期指導(輸送安全規則第10条)とは別の根拠です。ただし、12テーマの中には「疾病が交通事故の要因となることについての知識(テーマ11)」が含まれており、アルコールや薬物の影響・依存リスクをドライバーが理解しておくことは、指導の内容としても関連します。

アルコールチェックの運用を徹底することと、ドライバー教育として飲酒運転のリスクを継続的に伝えること、この両方を合わせて行うことが、事故防止につながります。

軽貨物(黒ナンバー)の個人事業主の場合

軽貨物運送事業(黒ナンバー)の個人事業主が1人で運送業を行っている場合、安全運転管理者の選任義務は4台以下であれば生じません。ただし、輸送安全規則第7条の3の「飲酒状態で乗務させない」義務は、1台でも事業用自動車を使用する者に適用されます(安全運転管理者の選任台数要件とは独立した義務です)。

なお、複数の個人事業主を配下に持つ形で事業を組む場合や、業務委託で軽貨物ドライバーを数名管理する場合は、安全運転管理者の選任要件と輸送安全規則の適用範囲を改めて確認することをお勧めします。

運送業 法定研修キット(12テーマ)について

12テーマの定期指導については、研修資料・確認テスト・受講記録をブラウザで使える研修キットとして公開しています。テーマ11(疾病)の資料で、アルコールや薬物が交通事故の要因になるしくみを理解するための研修にも活用できます。

運送業 法定研修キット(12テーマ)はこちら テーマ1(心構え)は無料でお使いいただけます。

ドライバー教育の義務の全体像は「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。

出典:道路交通法施行規則 第9条の10(e-Gov法令検索)、貨物自動車運送事業輸送安全規則 第7条の3(e-Gov法令検索)、警察庁「安全運転管理者業務の拡充に係るQ&A」

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
運送業(ドライバー教育)
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました